国民に本当の主権を

雑感

老人医療費の無料化制度の変遷を少し調べてみた。
老人医療費の完全無料化の制度は、1973年から1983年までの10年間しか続かなかったが、低額による定額負担の時代は2002年まで続いた。2002年実施の定率負担は1割だったが、最初は、外来患者については月額の上限を3000円に限定していた。入院は上限37,200円/月、低所得者24,600円/月だった。
制度の改悪を加速させたのは、小泉内閣による構造改革だった。
2003年には、70歳未満のお年寄りについても3割負担が導入された。70歳以上の方の医療費は、所得の高い人は3割負担となっているが、多くの方は1割負担となっている。ただし、2013年4月1日からは1割負担を2割に引き上げようとしている。負担増のスピードが加速している。

和歌山県の老人医療費の無料化制度は、70歳から無料化が始まる国の制度に上乗せして67歳から無料化制度を実施していた。しかし、国の制度の変更の中で無料化制度を維持できなくなった。
老人医療における国民への負担増は、お年寄りの負担だけではおさまらない。結局は現役世代の肩に重くのしかかる。お年寄りの負担の重みは、現役世代の苦しみでもある。医療費の負担はものすごく重くなっている。
でも国民から医療費の負担の重さが、苦しみとしてストレートには伝わってこない。どうしてなんだろう。話をしていると、相談事の中では医療費の負担の重さが出てくる。個室に入院して、月に払った医療費が30万円だったという話を聞いたこともある。このうちどれだけ高額医療費で戻って来るのだろうか。
今日の相談事では、酸素ボンベの費用負担の重さや橋本市の2か所の病院に行く費用と医療費の重さについて話が出てきた。80年代から今日まで時間をかけて負担を増大させてきた政府のやり方は、国民の首を真綿でじわりじわりと締めつけるものだった。

医療費の負担と介護保険の負担だけでも国民の負担はものすごく増えた。確実にこれらの負担は、国民の生活を破壊しつつある。子育て真っ最中の世代の負担も重い。とくに大学進学となるとものすごくお金がいる。大学の負担の重さに多くの人々は苦しみながら堪え忍んでいる。その頃にお年寄りの健康問題が重なってくるケースも多い。
みんな、涼しそうな顔をしながら、その顔の下には、同じような苦しみを隠している。相談に乗るたびにそう思う。かつらぎ町の住民の所得は低い。負担が重い上に所得が低いので問題が極めて深刻になる。

でも、困っている人の怒りの矛先が、なかなか政治の中心問題に向かない。目の前の深刻さを痛感しながらも、政治の壁が大きいので変わるとは思えないという感じがある。
公務員攻撃に溜飲を下げる人はものすごく増えている。しかし、公務員に対する怒りは、本当に問題のど真ん中を射抜いているのだろうか。思いっきり的が外れているのではないだろうか。
公務員の給料を引き下げたり、公務員の人数を減らしても、医療費や介護保険の負担の重さは変わらない。国民を直接苦しめている国の制度問題と、都道府県、市町村の公務員の存在とは直接はリンクしていない。
大きなボタンの掛け違いをしているのではないだろうか。
国鉄の民営化のときに、国鉄職員が徹底的に攻撃された。郵政民営化のときには郵便局員が攻撃の的になった。国鉄が民営化され、郵便局が民営化され、実現したのはローカル線の廃止や安全軽視の電車運行だったし、郵便局のサービスの低下だった。
公務員を攻撃して、実現してきたものを冷静に見る必要があるのではないだろうか。
怒りの矛先を公務員に向けても、実現するのはサービスの低下だというのは事実だろう。この事実は重いし、今考えるべきものだとも思う。怒りの矛先は、国民生活を破壊してきた政治とこのような政治を要求してきた勢力にこそ向けられるべきではないだろうか。

原発問題では、国民はことの真実を見抜きつつある。しかし、税金や社会保障の問題では、まだまだ「神話」がある。にせ物の「神話」はこの分野ではまだ崩壊していない。
日本共産党は、日本社会の根本問題は巨大な企業とアメリカによる政治と経済の支配にあると考えている。
この根本問題にメスを入れて、国民主権の政治を実行すれば展望は開ける。
二つの勢力による異常な状態を改善していけば、豊かな展望は開けてくる。
最後に日本共産党が展望している緊急改革の一部を載せておこう。この改革のキーワードは、民主主義と国民主権だ。
自由をわれらに。財政に民主主義を。国民に本当の主権を。中小企業を経済の主役に。日本社会に民主主義を。この提言には、こういう思いが込められている。

「社会保障を良くする『第1段階』として、小泉内閣以来の『構造改革』路線で、大きく崩された社会保障を再生させる『社会保障再生計画』を作成し、その実行にただちに着手し、2010年代末までに達成します。
 医療費の窓口負担を『子どもは無料、現役世代は2割、高齢者は1割』に引き下げる、毎年の年金額を自動的に削減する制度(マクロ経済スライド)を廃止し、年金額が減らない信頼できる制度にする、特別養護老人ホームや保育所の待機者をゼロにするなど、この間の『構造改革』路線で崩された社会保障を立て直していきます。
 その財源は、大型開発や軍事費をはじめ税金のムダづかいの一掃と、富裕層・大企業優遇の不公平税制を見直すとともに、新たに『富裕税』『為替投機課税』『環境税』などを導入することでまかないます。」


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雑感

Posted by 東芝 弘明