27年目の夏

雑感

今から27年前、日航ジャンボが御巣鷹山に墜落した。この事故について、当時ぼくは克明に赤旗の記事を読んでいた。25歳だった。
27年前の出来事は、風化していない。あの事故のことははっきり覚えている。
なのに、肝心の航空会社と日本政府は、日航機の事故以来、重大な事故は起こっていないと言って、規制緩和を大胆にすすめている。
今日の「赤旗」の主張を全文引用しておきたい。

日本航空のジャンボ機が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落した大惨事(1985年)から12日でちょうど27年です。単独機としては航空史上最悪の520人の命を奪った悲劇を繰り返さないため、「絶対安全の確立」という鉄則を深く心に刻む必要があります。

 ところが、いま政府は航空機の安全にかかわる規制緩和を大規模にすすめています。「航空会社の低コスト化支援」が目的です。企業利益のため「空の安全」への責任を放棄することは許されません。

「コスト減」優先の発想

 国土交通省は7月末、航空安全の規制「見直し」についての有識者会議報告書を公表しました。16の航空会社などが要求していた129項目のほとんどを受け入れ、実施工程を明記したものです。

 民主党政権の掲げる「日本再生戦略」の一環として、格安航空会社(LCC)の参入などを拡大する狙いです。運航の安全問題に直結する項目が列挙されています。

 その一つが、乗客が機内にいる間も給油を可能にする規制緩和です。着陸から離陸までの時間を短縮し飛行機の稼働率を上げたいLCCの要望を受け入れたものです。燃えやすい航空燃料は引火した場合、大事故につながるため搭乗中給油は原則禁止だったのです。「効率化」のために安全を置き去りにすることは無謀すぎます。

 60歳以上のパイロット2人乗務の容認も、育成コスト削減などの発想からです。経験を積んだパイロットの役割は重要ですが、過酷な勤務であるため、これまで健康上の不測の事態に備え若いパイロットと組み合わせてきた経過を無視したものです。

 副操縦士への昇格試験を、実際の飛行機に乗るのでなくシミュレーター(模擬操縦装置)で可能にする「見直し」には、現場から「感覚の違いが大きい」と不安の声が上がっています。「実地試験にかかる燃料費コスト削減」という動機は安全を“経済効率”に置き換える危険な考えです。

 国交省は「日本では日航事故後、定期路線で乗客死亡事故はない」と“安全性”を強調しますが、「安全神話」につながるおごりです。規制緩和のもと航空分野で安全にかかわるトラブルは後をたちません。スカイマークは今年6件の安全上の問題を起こし厳重注意を受けました。業界全体で年間800件程度のトラブルがあることを直視しなければなりません。

 公共交通における規制緩和と新規参入促進による過当競争は、労働者の健康まで脅かす無理な運行を強います。それが乗客を危険にさらす重大な結果をもたらすことは、高速ツアーバス事故の続発からも明らかです。「空の安全」に逆行する規制緩和に突き進むことはただちにやめるべきです。

大企業優先から転換を

 日航が事故後きびしく問われた利潤第一主義に走っていることは、無反省のきわみです。2010年の経営破たん後、パイロット・客室乗務員の不当解雇などをすすめ、社内に意欲低下を広げ安全上のトラブルをもたらしています。「再建」を主導する民主党政権の責任は重大です。不当解雇を撤回させ、安全無視の経営姿勢を是正する指導をすべきです。

 大惨事を繰り返さないため、安全を二の次にする大企業優先政治からの転換こそが求められます。

空の事故は、大惨事を引き起こす。安全の軽視は命の軽視に他ならない。
遺族も、パイロットも客室乗務員も、安全重視は変わらないのに、どうして会社と日本政府は、規制緩和という名の下で安全に関わる基準を下げるのだろうか。

主張が指摘している「利潤第一主義」。このことを深く考える必要がある。
人間の命よりも儲けの方が大事。この考え方は、普通に生きている人には理解できない。しかし、経済活動の中心に座っている大企業にとって、会社が利潤を追求し儲けを上げることは至上命題になっている。
「資本の価値増殖過程」──利潤の追求はこういう名前で呼ばれる。安売りの航空チケットを販売して、飛行機を飛ばすのは、1チケット当たりの利益が小さくなっても、さまざまな経費を削減して、確実に儲けを上げる仕組みを作り、他の航空会社との競争に勝って利潤を獲得することに目的がある。何を削るのか。賃金カットと過密労働、若手パイロットの育成費、点検整備の費用及び時間などなど。
これを実現するためには、法的な規制を緩和する必要がある。16の航空会社が要求した129項目のほとんどを受け入れたというのだから恐ろしい。

忘れてはならないのは、電車やバスなど大量輸送機関による事故は繰り返し起こっており、その根底にはコスト削減による利潤追求と安全警視があったということだ。日航機の事故以来の教訓をいとも簡単に投げ捨てたのは、航空会社と日本政府だ。このことを8月12日に記録しておくことの意味は大きいと思う。
原発事故の処理でも、福島県民がないがしろにされているように、空の安全も同じ論理でないがしろにされる。

日本共産党は、日本の大企業・財界に対し、ものすごいスピードで規制緩和を行ってきた政治を改めて、日本社会にヨーロッパ並の民主的な経済ルールを確立すべきだと主張している。日本の経済に民主的なルールを確立することが、日本経済を立て直す力になる。それは、経済における国民主権を実現する道につながる。中小企業の再建と育成のためには、大企業と中小企業の取引を対等平等の関係にすることが必要だ。
大企業の経済的な利益のために、第一次産業である農林水産業は犠牲になってきた。これを改めて、農林水産業の再建と育成が問われている。この分野でも大企業によるTPPの推進など、国を滅ぼしかねない動きを止めて、農林水産業の育成をすすめなければならない。
規制緩和ではなく、大企業に対する民主的規制こそが、日本経済を立て直す道になる。それは、働く人々の雇用と命を守ることにつながるとともに、安全まで軽視して恥じない巨大な企業のあり方を変える力になる。

日本経済にルールが確立すれば、財界・大企業が暴利をむさぼることに歯止めがかかる。民主的な規制を通じて、中小企業に利益が生まれ、働く人々に雇用と賃金の引き上げが実現する。派遣労働などの不安定雇用も解消できる。この変化は、日本国内の経済に内需主導型の経済循環を生み出す。国家にも税収増が実現する。そうすれば、社会保障を国民の全体で支える条件も生まれる。福祉と医療の分野の充実は、巨大な雇用の場も生み出す。
規制緩和ではなく、大企業に対する民主的規制を。これが暴走する大企業を国民の手でコントロールする道だ。

25歳の時、あの事故のことを考えながら何度も夕方の空を見ていた。520人の方々の命を奪った過ちは、今拡大再生産されつつある。民主的な規制を求める運動は、原発ゼロの運動と深くつながっている。国民の運動で原発から自然エネルギーへの転換を実現することは、民主的規制の一つの形になる。国民の力で暴走する資本の論理を止めなければならない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明