きれの悪い裁断機

雑感

裁断機で紙をきろうとして、全体重と持てるだけの力を入れレバーを下ろした。右胸の筋肉に激痛が走った。筋肉がひっくり返ったように引きつった。
事務所の裁断機は、刃が古くなっていて、少ない紙を切ろうとすると、深い溝だけできて、紙がきれないことが多い。今日のように雨が降ると湿度が高くなって一層きれが悪くなる。
しかし、きれが悪いのは、裁断機の刃だけではない。52歳の肉体もきれが悪い。
B4の紙を縦にして横に4分割し帯を作る。うまくいかなかったので、深く刻まれた溝に沿ってハサミを入れた。綺麗にスパッと切れない。

このきれの悪さは、民主党のようだった。切り口はギザギザのボロボロ。最高の頂点と奈落を見た政党の例は、過去の社会党に似ている。
日本の政治を動かしているのは、アメリカと財界。これが日本共産党の認識だ。もちろん、政治には独自の力学も力もある。100%財界の思惑が貫かれるわけではない。官僚機構にも一定の役割はあるけれど、この機構がすべての力をもっている訳ではない。江戸時代と比較すれば、本質が見えてくる。江戸時代の徳川幕府は、支配勢力が直接国の統治を行っていた。しかし、生産力の発展によって、次第にこの統治機構の力が弱くなった。台頭してきたのは、地方の藩の勢力だったが、そこは経済的に強いところだった。農民から年貢を取りそれを最大の財源としていた江戸幕府の体制の中で商品経済が大きく発展し、江戸幕府の基盤を根底から揺さぶり始めていた。

明治維新をへて新政府が行ったのは国による産業の発展だった。逆にいえば、産業の発展が新体制を求めていた。武士階級に替わって台頭したのは、旧財閥系の資本家だった。官僚機構が日本を完全に支配しているという論理では、巨大な力を持っている産業界の果たしている役割を説明できない。日本経済の実権を握っているのは、財界に結集している勢力だ。社会は経済の力によって動いている。江戸時代の幕藩体制は、江戸時代においては、最大の経済力をもった勢力だった。しかし、現在の官僚機構は、日本経済の中で最大の経済的な勢力ではない。日本の中で最大の経済力を持っているのは、財界であることは間違いない。この勢力が、経済的要求を土台として、政治に大きな力を発揮し、政治機構である政府と官僚機構に絶大な力を発揮している。具体的な姿を見たいのであれば、原発村のことを考えればいい。ここに現れている仕組みは、日本の統治のひとつの典型になっている。原発村の中における官僚の役割は部分的だ。

官僚機構が日本を統治する実権を握っていないのに、あたかも江戸時代のように最大の権力を握った勢力であるかのようにとらえ、この機構をつくり変えれば、日本は変わるというのが民主党や大阪維新の会の橋下さんの論理だ。最大の勢力に改革の矛先を向けず容認するので、本当の支配勢力は痛くも痒くもない。むしろ、これらの勢力が推進を望む要求を掲げて政治を進めるので、財界は安心して劇場型政治を見守ることができる。

アメリカは、世界最大の経済力を持った国であり、大統領による統治の形態は、ブレーンに大企業の出身者を大量に抱えるという形なので、巨大企業による直接統治という色合いが濃い。日本との違いは鮮明だ。日本におけるアメリカの支配は軍事、外交、経済、政治に及んでいる。原発の導入の歴史もアメリカの圧力から出発したので、この点でも、原発は、日本の政治の縮図、典型になっている。

日本共産党は、アメリカや財界と真正面から向き合って、国民主権の確立を求めている。アメリカと財界を壊すようなことは考えていない。アメリカには、基地を撤去していただいて、日米安保を廃棄し友好条約を締結する。対等平等な日米関係を確立すれば新しい展望が開けてくる。財界に対しては、経済に民主的なルールを確立して、財界の横暴を規制し、農林水産業や中小企業や零細企業、商工の発展をめざす。このことを通じて日本の豊かな発展を生み出して、大企業にも儲けていただくという展望をもっている。
財界とアメリカという2大勢力に立ち向かって日本の仕組みを変えない限り、日本社会の発展はない。この過程の中で、ゆがんだ官僚機構を改革する課題にもとりくむ。官僚機構の改革は、こういう位置にある。
橋下さんが率いる維新の会は、できたての政党なのに、うちの事務所の裁断機のように、きれが悪い。刃をたてるべきなのは、アメリカと財界だ。立ち向かわないと事は始まらない。改革すべき相手をまちがえるのでは、坂本龍馬が悲しむのではないだろうか。


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雑感

Posted by 東芝 弘明