宇宙の始まりと唯物論

雑感

唯物論と弁証法を理解しなおすために、YouTubeのお世話になって宇宙の始まりについて講義や映像を見た。宇宙の中には、原子など銀河や恒星や惑星等々を形成している物質はわずか4%、それ以外の23%は、ダークマター(暗黒物質)と呼ばれる未知の物質、73%がダークエネルギーと呼ばれる未知のエネルギーで満ちているといわれている。宇宙の誕生の初期の状態では、原子はまだ誕生しておらず、素粒子が自由に飛び交うような状態だったといわれている。

時間と空間、物質もエネルギーも存在しない「無」の状態の中でゆらぎが生じ宇宙が誕生したという説もある。ここでいう「無」というものは、素粒子や原子の世界から見た状態なのだろう。時間も空間も物質(素粒子や原子からなる物質、つまり宇宙の4%)の存在の仕方や運動の仕方に関わっている。時間も空間もないという状態は、素粒子や原子のない状態のことを指すと思われる。時間と空間、物質もエネルギーもない状態にゆらぎが生じ、何も無いところから爆発的に宇宙が誕生したという説は、ダークマターやダークエネルギーの解明によって、新しい答えが出てくるのかも知れない。ダークマターとダークエネルギーの存在を認めざるを得ないのであれば、物質もエネルギーもない状態から、ゆらぎによって宇宙が誕生したという説明は、近い将来、変わっていく可能性がある(これはぼくの見方です)。

ゆらぎによって生じた宇宙は、クォークや電子、光子が飛び交う世界であり、その世界は瞬時に光子と電子と陽子と中性子が自由に飛び交う状態に変化した。その時はまだ原子は誕生していなかった。原初の宇宙は、非常に高温の高プラズマ状態であり、ここから急速にヘリウムと水素が誕生した。この間の変化は、わずか3分間だったと国立天文台のホームページは、記述している。
ビッグバンは、ヘリウムや水素から次第に他の原子を生み出し、やがて鉄が生成されたことによって、重力によって引き寄せられていた物質が自分の重力によって押しつぶされ、バランスが崩れたことによって、ニュートリノが発生して飛び出し、これによって質量のバランスが崩れて起こったという(これは小柴さんの説明を記憶によってまとめたもの)。鉄がビッグバンによって宇宙に散ったことによって、人間の体の中にも鉄が入っていると説明されている。

ここから先を国立天文台のホームページからから引用しておこう。
「宇宙は誕生直後、とてつもない大量のエネルギーによって加熱され、超高温・超高密度の火の玉となりました。ビッグバンの始まりです。その中で、光(光子)を含む、大量の素粒子が生まれます。素粒子にはふたつの種類がありました。ひとつが「粒子」で、もうひとつが粒子と反応すると光を出して消滅してしまう「反粒子」です。何らかの理由で、粒子よりも反粒子の方が10億個に1個ほど少なかったために、宇宙のごく初期に反粒子はすべて消滅し、わずかに残った粒子が、現在の宇宙の物質のもととなったのです」
ビッグバンは、インフレーションという現象を引きおこした。
「ビッグバンのすさまじい高温は、その直前まで宇宙に満ちていたエネルギーが熱に変化したものでした。宇宙は誕生直後からビッグバン直前までの10の34乗分の1秒(※)の間に、「インフレーション」と呼ばれる、数十桁も大きくなるような猛烈な加速膨張を起こしたのです。現在の宇宙膨張を加速させているダークエネルギーと同じ、しかしその100桁以上もの驚異的な大きさをもった「真空のエネルギー」が、生まれたばかりの宇宙空間を倍々に膨張させていったのではないかと考えられています。そしてこのインフレーションとともに、この宇宙には、時間が流れ、空間が広がり始めたのです」

国立天文台は、※の説明として、10の34乗分の1秒というのは、1秒の1000兆分の1の1000兆分の1の1万分の1にあたり、この膨張の割合は、ウイルスが一瞬にして銀河団以上の大きさになるほどの、想像を絶するものだったと書き添えている。

国立天文台のホームページは、次のように文章を結んでいる。
「宇宙の始まりについて、ある説では、宇宙は「無」から生まれたとしています。「無」とは、物質も空間も、時間さえもない状態。しかしそこでは、ごく小さ な宇宙が生まれては消えており、そのひとつが何らかの原因で消えずに成長したのが、私たちの宇宙だというのです。また生まれたての宇宙では、時間や空間 の次元の数も、いまとは違っていた可能性があります。ある説によれば、宇宙は最初は11次元で、やがて余分な次元が小さくなり、空間の3次元と時間の1次 元だけが残ったのだといいます。宇宙の始まりは、まだ多くの謎につつまれています。それを解き明かしていくのは、いまこれを読んでいるあなたかもしれません」

私たちが、不変だと習ってきた原子にも誕生の歴史があり、最初は原子さえ存在しなかった宇宙があったということだ。全ての物質は生成・発展によって誕生したというのは、まさに弁証法的な状態だったということだ。自然科学者は、弁証法と唯物論の立場に立つならば、宇宙の原初を極めて柔軟に捉えることができるし、これから先の研究の導きの糸になると思われる。

YouTubeの映像を見ていると、量子力学とアインシュタインの相対性理論は、突きつめていくと矛盾しており、説明がつかないらしい。これを統一するために提唱されているのが、超ひも理論(大統一理論)だという。映像による説明では、我々が住んでいる次元は、時間と3次元で構成された4次元ということになっているが、超ひも理論では、非常に小さい次元が3次元の中に巻き込まれており、11次元あるということになっている。この大統一理論は、素粒子の存在形態を説明する理論なので、当然のことながら宇宙の始まりを解き明かすことと結びついていく。

宇宙の存在の仕方を解明するときに、やはり有効なのは、唯物論と弁証法だろう。ある人は、唯物論は物質の存在の仕方と運動を柔軟に把握する弁証法と結びついてこそ、機械論を脱して柔軟に物質を把握できるという意味のことを書いていた。弁証法にも同じことがいえる。極めて柔軟な思考を求める弁証法は、唯物論という土台をしっかり握るものでないと、たえず観念論に陥る危険性をもっている。弁証法と唯物論は、不可分に結びついてこそ、その真価を発揮する。
宇宙の始まりも、素粒子の世界も、人類の目には見えない世界の物質をあつかうことになる。数式で宇宙の謎を解明する理論物理学の世界は、数式との格闘にもなるので、ともすれば物質の存在から乖離する危険性をもっている。天文学は、たえず物質から離れた学説を生み出しつつも、天体観測や素粒子の測定という観測実験によって、物質から乖離した理論を否定・修正しつつ発展してきたように見える。また、同時に一定の観測を土台にして考察された数式が、新たなモデルを生み出し、それが観測結果によって確認されるということも繰り返されてきた。ここには、広い意味での実践と理論との相関関係がある。
現在の最新の天文学は、ダークマターという物質の存在をつかみつつあるように、唯物論の有効性を雄弁に物語っている。

今日は、レーニンの哲学における物質概念も再読した。レーニンによると、哲学における物質という概念は、「人間の意識の外に独立してある客観的実在」と定義されている。この定義は、今日も非常に有効な概念になっている。天文学では、ダークマターという存在を認めなければならなくなっているが、はっきりしているのは、このダークマターは、素粒子や原子からは成り立っていない物質である(もしくは、なのかも知れない)。ダークマターとダークエネルギーが素粒子や原子から成り立っていないとすれば、これらの「物質」を現時点では、レーニンのいう「人間の意識の外に独立してある客観的実在」として把握せざるをえない。これらの物質とエネルギーの性質が解明されたら、ダークマターとダークエネルギーは、おそらくは名称を変更して具体的な名前がつけられると思われる。


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雑感

Posted by 東芝 弘明