司馬さんと考える大日本帝国

雑感

『「坂の上の雲」日本近代史』(原田敬一著)という本を読み始めている。司馬遼太郎の『坂の上の雲』という小説が、司馬史観という言葉とともにもてはやされ、日本の明治時代をリアルに描いているかのように言われている中で、この本が書かれている。
面白いのは、原田敬一氏という人が司馬遼太郎という作家に対して、深い愛着をもって書かれているところにある。原田氏は、仏教大学歴史学部教授なので、歴史学の研究を踏まえて書いている。優しい視点で司馬史観の問題点を明示し、最近の歴史学が何を明らかにしたのかを書いているので、司馬史観に触れながら、歴史学的な見方を学べるものになっている。

まだ読み始めてページ数が浅いので、全体を見通したこと書けないが、江戸時代にすでに日本社会の中に国民主権的な考え方が芽生え、運動が起こり始めていたことや、英雄が歴史を動かしたという、英雄史観的な歴史観の狭さを教えてくれるものになっている。
現在に生きる人間は、現在という社会がごく一部の英雄的な人物によって動くようなものではなくて、社会のいろいろな勢力がぶつかり合い、せめぎ合ったり協力し合ったりして、動いていくことを感じているに違いない。現在に生きる人間は、安倍政権が歴史を動かしているとも感じないだろう。政権を担っている勢力や安倍総理が体現している右翼的な潮流、それを支える国民的な支持や、国民の中に存在する右翼的な傾向、それに対し憲法を守れという形で立ち上がっている人々や政党、各団体などが見えているはずだ。これらの勢力の対立によって歴史が定まっていく。
国会で安定多数を占めている勢力が、歴史に対し決定権を持っているようには見えない。ということも確かなことだろう。

それが歴史だと感じているのに、一昔前になると、英雄が登場し歴史を動かしたかのように語られる。江戸時代から明治時代への変化は、やはり経済的な諸力の変化が根底にあって、江戸時代の中に次の時代である明治時代が用意されていた。版籍奉還から廃藩置県へ、国会の開設と明治憲法の制定へという歴史的な流れは、狭い英雄史観によっては描けない。

この本からは、そういうことが具体的に学べる予感がしている。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

雑感

Posted by 東芝 弘明