第51回和歌山県学校給食研究協議大会

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第51回和歌山県学校給食研究協議大会がかつらぎ町総合文化会館で開催されたので、参加した。
この会議への参加は事前申し込みが必要だった。
あいさつに立ったかつらぎ町長は、冒頭、かつらぎ町では大谷小学校以外の学校で学校給食が実施されていないことに触れ、お詫びしたいといいながら話を始めた。教育長もこの話を受けて学校給食実施に触れて、財政等の問題もあるので、いい給食を実施できるかどうか、検討しているという話をおこなった。
提案発表は、橋本市立信太小学校の谷口校長先生、高野山小学校の林教諭、大谷小学校打田副主査栄養士の3人だった。
3人の発表は、いづれも、プロジェクターによるプレゼンテーションだった。時代はこういうものになっている。今までの発表以上に教師の方々の準備の苦労は増しているだろうと感じた。
冊子への原稿書き、プレゼンテーションの作成、プレゼンテーション用の「語り」の作成という3つの作業をおこなう必要がある。3人とも持ち時間内に話を行っていたので、時間内に終了できるようにプレゼンテーションをまとめる苦労は、かなり大きいだろう。
信太小学校の提案は、食育推進への取り組みが始まった様子が描かれ、子どもたちによる田植えや稲の収穫、その稲(餅米)を使った餅つきなどで子どもたちの生き生きした姿が紹介されていた。農家の多い地域の特質を生かして、生産者の人との交流という点でも生きた取り組みになっているという感じが伝わってきた。
食育の意識的な取り組みの中で注目したのは高野山小学校の取り組みだった。食育というのは、まさに千手観音像のようにたくさんの手をもっており、その手は、各教科──算数、国語、理科、社会、体育などにつながっていく。高野山小学校は、各教科との連携を図りながら計画にもとづいて食育を推進している姿が提案の中から伝わってきた。
高野山は、年間の平均気温が10.4度しかなく、雪と雨が多いという状況の中で、なかなか農産物も育ちにくいという特徴がある。このような条件の中で、高野山の子どもたちは、直接体験が不足して体力という点でも課題を抱えているという現状がある。提案では、この現状を把握して、食育と体力向上を目標にした取り組みが行われていた。条件が悪い中でも、学校菜園が日当たりのよい運動場に作られ、野菜などの栽培が理科などの授業とも連携して行われていた。食育は、各教科との連携の中で縦糸のように貫かれているという姿が浮き彫りになって、努力してきた姿がリアルに伝わってきた。
しかし同時に、忙しい学校事務の中で、このような食育推進の取り組みを進めることの負荷の大きさを思わざるをえなかった。研究発表にための取り組みにならざるをえない側面がある中で、研究発表にあたらない平常時に同じような取り組みができるかどうか。ということも心配される。
プレゼンテーションにまとめ上げるというのは、どうも見せるための研究になりがちで、本来の学校の実際の姿を映しているのかどうか。かなり無理をしているのではないか。という思いがつきまとう。
学校に豊かな自由裁量があって、教師や栄養士の方々が自発的に色々な取り組みをおこなえるというのが理想だが、こういう理想の姿を教育委員会は保障していない。
パーフェクトチャイルドという言葉があるけれど、教育委員会は、パーフェクトの学校を全方向に求めている。その上、それらの成果を評価させ、数値化を求めているので、きしみや悲鳴さえ聞こえかねない現実がある。
安心して話を聞けたのは、大谷小学校の取り組みだった。この学校はかつらぎ町でただ1つ学校給食を自校方式で実施している学校であり、常時県職員である栄養士が配置されている。全校生徒が一堂に集まって給食を食べることのできるランチルームがあり、86人の児童をもつ学校の運営は、異年齢の縦割りが全ての基本になっている。ランチルームのある学校の良さと縦割り編制がうまくマッチしていて、毎日、昼食時には縦割りの班が機能する仕組みが自然な形で存在している。
大谷小学校は、平成18年度から県の事業である紀北農芸高校との交流(「県立高等学校(農業関係学科等)における農産物供給事業」)に取り組んできた。4年目に入っている取り組みは、紀北農芸高校の生徒が作った野菜の供給から始まって、次第に広がり、農芸高校の生徒と大谷小学校の児童の交流、高校生による大谷小学校の学校菜園を作る指導などへと発展している。
子どもたちは、お兄さんやお姉さんに教えてもらって作った野菜を学校給食に使ってもらい、「トウモロコシはぼくたちが作りました」とか「サツマイモは私たちが作りました」とかが給食を食べる前に報告され、作った人と食べた人の交流が、自然な形で積み重ねられていることは、新鮮な驚きだった。
小学校における野菜作りは、給食委員会の取り組みだったが、学校に調理員や栄養士の先生が常時いることが、自然な取り組みの基礎になっている。収穫した野菜を活用した学校給食も非常に自然な形で行われるので、交流を図るという点では、まさに理想的な形が自然に生まれるような土壌がある。無理なく自然に行われている姿に目頭が熱くなった。
信太小学校もエンドウ豆、サツマイモなどを作り、しかも高野口にあるきのかわ支援学校の子どもたちとの交流の中で苗を植えたり収穫したりしている姿が報告されていた。学校給食センターとの連携も図られて、エンドウやサツマイモを使った給食が出されてくるという取り組みになっていた。
連絡調整はどうしたのだろうか。
実際の給食センターとの連携は、かなりの苦労が伴うことが想像される。受ける側の給食センターの苦労も聞いてみたい話だった。
昼食休憩に入って、展示会場に足を向けると、そこは、給食関係の各メーカーの紹介と試食、給食関係の食品の見本市だった。ぼくはさまざまな質問を投げかけながらメーカーの方々と対話し、一巡することには、両手にさまざまな試食品を手に持つことになった。ゼリーやヨーグルトだけでもかなりの数に上ったし、唐揚げは、まさに家族の2食分ぐらいの試食品をもらうこととなった。
この見本市は、実に楽しいものだったが、センターによる学校給食は、やっぱり冷凍食品の行列なんだなということを改めて実感させられた。
一番、違和感を感じたのは、午後、行われた県の教育委員会の栄養士の方による講評だった。ものすごい上から目線だと感じた。教育指導主事の方々は、さまざまな教育実践について、協議大会という集団の中で上から評価をおこなうということが許される地位にあるのだろう。
内容は、ともかくこういう講評という形式は改めるべきなのではないだろうか。と思ってしまった。
助言的な発言という程度に改めた方が、会場からの拍手も増えるのではないだろうか。
しかし、今日の給食研究協議大会は、新鮮だった。提案していただいた3人の方々には、ご苦労さまをいいたい。


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Posted by 東芝 弘明