和田誠さんの『快盗ルビイ』

映画

怪盗ルビイ

WOWOWに「私を映画に連れてって」という企画があり、その一つとして、和田誠さんが監督した『快盗ルビイ』が放映された。1988年の作品だった。加藤留美、この子が快盗ルビイだ。分かりやすい名前だ。お話しは、ルビイがマンションの3階に引っ越ししてきたところから始まる。2階に済む真田広之扮する林徹君(小泉今日子も真田広之も若い)と出会って、ルビイに徹が巻き込まれて「快盗」のお仕事を手伝う羽目になる。

徹がルビイの部屋に招かれて、ビールを飲んで、星を眺めて始まる会話。
「スタイリストは世を欺く仮の姿。あなたにだけホントのことを教えてあげるね」
「犯罪者よ」
驚いた徹は、飲んでいたビールをこぼしてしまう。
「犯罪者?」
「そっ」
「犯罪者ってあの、悪いことをする」
「いいことする犯罪者っていないでしょ」
「犯罪っていうと殺人?」
「人殺しなんて最低よ」
「なんの犯罪?」
「そうね、さしあたって泥棒ね」
「泥棒、なんか盗んだことあるの?」
「まだない」
「なんだ、ジョークか」
「ジョークじゃない。これから泥棒になるの」
「どうして?」
「もっといいアパートに住みたい。外国にも行きたい」
「お金のため?」
「そう、でもそれだけじゃないわ。よくわかんないけれど、サムシングがあるとおもうの。協力して」
くるりと振り向いて、ルビイが徹に顔を近づける。
「協力?」
「私と組むの」
目がキラキラ輝いている。
「ダメだよ。ぼくは犯罪者向きじゃないよ」
「あらそうかしら」

この会話によって、徹はルビイのにわか快盗のお手伝いをするようになる。
小泉今日子が分するルビイがかわいい。何人かの人がレビューで書いているようにオードリー・ヘップバーンのコメディを思い出させてくれる。
2人の計画はことごとく失敗する。収支決算が小さな赤字だというのも面白い。ルビイと徹君は、いつも大まじめなのに、見ている観客はすごくおかしい。本人たちは真剣なのに、その真剣さが笑いになっている。ルビイのセリフがしゃれてて気持ちがいい。見終わって、映画って楽しいねという気持ちが残り、何年もするとこの気持ちだけが印象に残るという不思議な作品に仕上がっている。小泉今日子さんをこんなに可愛く撮った映画として、永遠に残してほしい。

和田誠さんは、超有名なイラストレーター。映画通でよく知られ、三谷幸喜さんの新聞エッセイの挿絵や阿川佐和子さんの挿絵、『サワコの朝』のテレビ番組の絵などを担当している。単純な細い線で書かれた似顔絵は、すごく人物の特徴を捉えている。和田さんが書いた本に『お楽しみはこれからだ』というシリーズがある。挿絵とともに映画のエピソードが書かれている。
20代の頃、この本を読んで、映画を見て、この本をさらに読んで、ということを続けていた時期がある。ビデオで古い映画を追いかける手引きが『お楽しみはこれからだ』という本だった。

「合い言葉をいえ」
映画の中でルビイがドア越しにいうセリフ。
という記憶があったのに、今回見直した映画には、このシーンがなかった。映画はミュージカルの要素もあって、小泉今日子と真田広之が歌うシーンがある。これもまた、ぼくの記憶だが、歌に合わせて真田広之扮する全く運動音痴のはずの林徹君が、超かっこよくバク宙やバク転を披露するシーンがあった。でもこのシーンが今回見た映画にはなかった。
記憶間違いなのだろうか。
「合い言葉をいえ」は、強烈な思い出で、というか、そのセリフしか覚えてなかったので、映画は初めて見るような感じで、つまり、過去に見て楽しんだ記憶があったのに新鮮だった。唯一覚えていたこのセリフがなかったのには心底驚いた。自分の記憶を自分で勝手に塗り変えていたのか、それとも放映の都合でカットされていたのか。

ないということは、おそらくぼくの記憶間違い。だろうなあ。Amazonでは、『快盗ルビイ』は一応ヒットするけれど、出品者から1万円で買う必要がある。レビューを読むと画質が超悪いという曰く付きの1品。星の数が少ないのは、色がにじんだ映像に原因があるというものだった。WOWOW情報によれば、『快盗ルビイ』は現在絶版中だという。WOWOWの放映では、綺麗な映像だったのでデジタルリマスター版の出版を待ちたい。

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Posted by 東芝 弘明