『縮小ニッポンの衝撃』

雑感

NHKスペシャル『縮小ニッポンの衝撃』を見た。夕張市のことが紹介されていた。11万人あった人口が9000人台にまで縮小した市だ。このまま行けば、東京都も人口減少に転じるということも紹介されていた。
地方自治体の維持が困難になり、地域住民の自治組織が立ち上げられ、コミュニティバスの運行や水道の検針などを住民組織で担う努力が紹介されていたが、それも担い手の死亡などによって、住人による自治組織が困難に直面しつつあることも紹介された。

NHKスペシャル『縮小ニッポンの衝撃』の第1回目だった。なぜこのような人口減少の傾向に拍車がかかったのかという視点はなかった。ぜひともこの視点をもってほしい。今後の番組に期待したい。この視点に迫っていくと、当然のことながら国の政策に矛先が向いていく。市町村の努力だけを追いかけるのには違和感がある。市町村の努力だけでは、いかにして規模を縮小していくのかという選択肢しか出てこない。その選択肢も、お金がない中で行き詰まりに直面する。
夕張では、唯一残っている高校に対して、ふるさと納税で集めた寄附金を充てて高校に予算を付けたという話が紹介された。10分の1以下に縮小した市が、数多くの老朽化した公共施設を抱えてもがき苦しんでいる姿が伝わってくる。保育所の雨漏りや耐震化を進めたいがお金がない。高校生を励ましたいがお金がない。いったいどちらを選択すればいいのかというぎりぎりのところにジレンマがあるようだ。

市町村にできることは限られている。国は人口減少に向かって選択と集中を求めているが、人口が減少してきたら、いわば必然的に選択と集中は避けられないだろう。市町村は、なかなか直面している事態に危機感をもって取り組まない。かつらぎ町もそうだ。事実を直視すれば、必死に取り組まなければならない課題に直面しているのに、必死さが感じられない。毎年80数人の新たな転入を政策的に生み出して行かなければならないのに、その数値目標は、計算の結果そうなったという見方だ。これをどうやって実現するのかという姿勢はまだない。しかし、深刻な行き詰まりが露わになっている自治体は、必死に事態に対応しようとしている。だが、そういう自治体の思いに答えてくれるような国の施策はほとんどない。

問題はどこにあるのだろう。
国の施策は、いまだに成長・発展のモデルのまま、自治体に対する施策を組み立てている。ここに根本的にかみ合わない問題がある。
国は、人口に基本をおいて、地方自治体の設計を行って来たし、この考え方は変わっていない。最も基本的な考え方に基準財政需要額がある。これは、人口規模に基礎をおいて、その自治体にはどれだけの財源が必要なのかを計算するものだ。基準財政需要額ー基準財政収入額(地方税などの収入)=地方交付税ということになるが、基本は人口に比例する形で自治体の必要経費を決めるところにある。この考えで行けば、人口減少に伴う自治体の縮小に対する費用は、基本的には出てこない。5年ごとの国勢調査のたびに人口が減少していれば、財源が削られる。過疎地域に指定されれば、過疎債の発行が認められる。過疎債は、ソフト事業に対しても活用できるようになってきているが、基本的には借金であること、全体の仕組みが成長・発展のための制度設計のもとでの借金の活用というものなので、この制度も人口減少で崩壊しかかっている自治体を救えるものになっていない。
人口減少によって発生しているさまざまな事態を解決するために、人口縮小問題を克服するために交付税を手厚く配分すること、解体しなければならない公共施設の解体費やコンパクトな地域を再構築するための費用を出すことも必要になる。

しかし、これらの対策は、人口減少で苦しんでいる自治体に対し、小さくなるための対処療法でしかない。番組でも地方の人口流入によって、日本の発展のエンジンとなって来た東京都自身が人口減少に転じる未来を描いていた。田舎の崩壊が東京の縮小を準備しているということだった。
OECD加盟国で唯一、サラリーマンの所得が減少を続け格差と貧困がものすごい勢いで増大している日本。日本崩壊のシナリオは、安倍政権の中心政策から生まれているのではないか。「大企業栄えて民滅ぶ」。番組の今後では、この問題にぜひとも切り込んでほしい。


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雑感NHK

Posted by 東芝 弘明