政治を読み解く経済の利害関係

未分類

この10年間で格差と貧困が拡大し、国民の暮らしは苦しくなった。
一般論では、こういうことだ。
しかし。
訪問していると、貧困が渦を巻いていると感じる。経済的な苦しみが、生活をじりじり追い詰めていく。1000円がどれほど貴重なものなのか。数百円で人間はどれだけ生きられるのか。
貯金を使い果たして、生活している人の思いを政治家は、本当に知っているのだろうか。
菅直人さんが総理大臣になって、消費税を10%に引き上げると言った。その一方で大企業については、15%も税金を引き下げると言い、日本共産党が、大企業減税の穴埋めのために消費税を増税すると指摘すると、その指摘はあたらないと言った。
果たしてそうだろうか。
まずは、実効税率について見ていこう。

■法人税(国税)・・・30%
■法人事業税(地方税)・・・9.6%
■法人住民税(地方税)・・・法人税率×17.3%
上に示した税率は”表面税率”であり、課税所得に課税される実際の税率です。
3つの数字を単純に加算すると、44.79%となります。
 しかし、事業税は支払いをする日を含む事業年度において損金算入されるため、結果として節税効果が生じます。このことを考慮して算出した理論上の税負担率を実効税率といいます。
 算出式は、以下のようになります。

よって、実効税率は40.87%となります。
ただし地方税である住民税と事業税については、実際には標準税率ではなく、制限税率かそれに近い税率を課税している自治体がほとんどです。たとえば、東京23区の場合、住民税率は20.7%、事業税率は10.08%ですので、実効税率は42.05%になります。
また、年間所得800万円以下の部分については、低い税率が適用されますので、実効税率も低くなります。(法人税節税対策委員会のサイトより引用)

実効税率は40%だという政府の説明は上記のような数字に根拠がある。この税率は高いのだという。しかし、大企業は開発減税やさまざまな優遇税制によって実際の税負担は平均で30%程度だという。
それは一体どういうことなのか。
赤旗の記事を引用してみよう。

優遇税制で大まけ──平均3割
 試算は大企業に対する優遇税制が一段と強まった2003年度から09年度の7年間を対象にしています。経常利益の上位100社(単体)で負担率は平均33・7%でした。
 財界は法人税の実効税率を25%に引き下げるよう政府に要求していますが、日本経団連の会長企業、住友化学が払っている法人課税の負担率はわずか16・6%でした。前会長の企業、キヤノンは34・6%です。
 自動車メーカーでは最大手のトヨタ自動車が30・1%、本田技研工業は24・5%でした。電機ではパナソニックが17・6%、ソニーが12・9%。鳩山由紀夫前首相が大量の株式を保有していたブリヂストンは21・3%でした。
 大企業は研究開発減税で大幅な恩恵を受けるほか、海外進出を進めている多国籍企業には外国税額控除などの優遇措置があり、40%の税率は骨抜きにされています。
 法人実効税率は国税である法人税に地方税である法人住民税、法人事業税を加えた税率です。この試算では、景気変動の影響を除くため各社の決算データから7年間の税引前当期純利益と法人3税の合計額で実際の負担率を計算しました。銀行・証券・保険業と純粋持ち株会社は除きました。

このグラフは驚きだ。
大企業への減税を進め、実効税率を15%下げて25%程度にすると9兆円もの税収不足が生じる。消費税を10%に引き上げると国に入る税収は11兆円程度になる。10%に消費税を増税してもあらたな財源は2兆円しかないことになる。これでは福祉や教育は豊かにならない。
むしろ、国民生活が破壊されて、税収がさらに落ち込むことが予想される。
国民生活が破壊されると、購買力が失われ、企業が販売している商品が売れなくなる。日本の経済を引っ張っているのは消費力であり、それは経済活動の6割を占めている。
歴史は雄弁だ。
橋本内閣の時に消費税を3%から5%に引き上げた結果、日本は深刻な消費不況に陥った。
この10年間で国民の所得は、平均で15万円ほど少なくなっているという指摘がある。格差と貧困が広がっている現在、消費税を5%から10%に引き上げたら、国民生活は破壊され、日本経済は破壊される。
なぜ、この至極当然の当たり前な姿が国民の前に明らかにならないのか。
政治と経済の世界は、誤魔化しの論争が延々と続いていく世界のように見える。
今日は、なぜそうなるのかを考えて行こう。
事実は、そんなに難しくない。見方が変われば180度話が違ってくるというのではない。
問題なのは、政治も経済も利害関係の綱引きが行われている世界であり、利害を守るために数字やグラフが活用され、議論が交わされているということに尽きる。
同じテーマを論じているのに、話が180度違ってくるのは、政治や経済を動かしている勢力の利害を守るために数字を活用しているからに他ならない。
日本共産党は、国民の利益を守るために働く人々の視点からものを考えている。この視点は、日本社会の中で80%以上の人々の共通の利益の上に立つものの見方である。国民こそ主人公=働く人々の物の見方考え方ということになる。
この視点には、未来がある。多数の視点であり、タブーを恐れない視点である。
働く人々は、生産手段をもっていない。自分の労働力を売ることによって生計を維持している。この立場が、真実を真っ直ぐ見抜ける立場につながっている。働いて、健康で文化的な生活を営むことを目的としている人々は、素直に事実を把握できる位置に立っている。
自分の幸福が、多くの人々の幸福の追求と一致する。
一握りの人間集団である巨大な企業が、自分たちの利益を擁護するために数字を駆使して、自己の利益を追求するので、法人に対する実効税率40%は高い、負担はヨーロッパ以上などということになる。
大企業の経営が安定すれば、雇用が増え、景気は良くなるという見方も同じ。
この10年間、大企業はバブル経済の時の2倍の儲けをあげ、内部留保を増大させてきた。しかし、雇用は増えず、増えたのは派遣労働などの不安定雇用だった。
この事実でさえ、まともに取り扱われない。
一握りの企業は、膨大な資金を活用し、政府に働きかけ大企業よりの政策を実現してもらうよう不断に努力している。そのためには、新聞もテレビも企業の影響を受けるようにしなければならない。民間の新聞もテレビなどのマスコミは、広告収入に依存している。広告代を支払っているのは、大手の企業に他ならない。
新聞とテレビ自身が巨大な企業であり、財界の要求を実現する側に立っていると言ってもいい。
この10年間で日本の資本の動きは様変わりした。
大企業は、儲けをあげると株主への配当を増やし、不況になると働く者の人員を削減する。小泉さんの改革によって、派遣労働者が増大した。大企業は、派遣労働者を、まさに生産の調整弁として活用し、不況になれば、バッサリと首を切った。人件費は、企業のさじ加減で自由に操れるようになり、国民の側には、低賃金と不安定な雇用形態が蔓延した。
政治は財界のお金によって買収されてきた。金権腐敗がなくならないのは、日本の政治の病原が極めて深いことを物語っている。
民主党が、なぜ、わずか9か月で自民党流の政治にかじを切り、消費税増税を掲げるに至ったのか。
一体どの勢力のいうことを聞いて、方針を決めるようになったのか。
政治を経済的な利害の対立としてみれば、政治の本質が見えてくる。
経済的な利害の対立が、政治的な利害の対立になって現れてくる。
このことを見抜いていくと、物事の本質が見えてくる。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

未分類

Posted by 東芝 弘明