まわりの人々を信頼するということ

雑感

一つの問題に対して、いろいろな方の意見を聞いた。人によって意見がかなり違うということが今まで以上に良く分かった。ということは、会議で意見をきちんと交換しないと合意に達することはないということだろう。一つの事実に対して、人の反応の仕方は微妙に違っているので、どうしても見ている角度が変わってくる。このことを充分知った上で会議を運営する必要がある。

会議の中で主催者が自分の意見を貫き通そうとすると、次第に会議は壊れてしまう。主催者が意見を貫く会議というのは、意見を聞くふりをしているだけだ。それは単なる伝達会議でしかない。主催者が、「あなた方は、私の意見に従ってもらいます」という結論を持っているのに、「みなさんのご意見をお聞かせください」というポーズを取っているだけだ。こんな会議を重ねると会議参加者は次第に元気をなくす。そこまでひどくなくても、主催者の許容範囲だけを認めるという会議も、ほとんど意味がない。
結論を押しつけるような会議を重ねると、参加者の本音と建て前が分離し、物事を決めても進まなくなる。主催者は、「会議ではああ言っていたが、あの人は本当はこういうことを考えているのではないか」と考えはじめる。そうなってくると会議はキツネとタヌキの化かし合いだ。本音と建て前が分離する原因は、主催者が結論を押しつけるところにある。結論を押しつける主催者は、会議参加者を信頼していない。それは参加者も同じ。参加者は、自分の意志を押しつけてくる主催者を信頼しない。

意見が大きく食い違っても、話し合いを重ねれば意見は一致する。そのためにはお互いに信頼していることが重要になる。相手を手厳しく攻撃するような場合、その会議で合意を形成することは難しい。例えばAさんがBさんを攻撃する場合、AさんはBさんよりも優位に立って、支配したいということなので、Aさんは合意を形成しようという姿勢をはじめから持っていないことになる。こういう場合は、議論を冷静な状況に戻す必要があるので、仕切り直しが必要になったり、AさんとBさんの議論を全体の議論に広げる必要がある。自分の意見に対して、異論が出てもそれを冷静に聞いて、自分の考え方を改めたり考え直したり、一つのテーマについて、一緒に考えているときは合意が形成しやすい。
会議主催者には会議への提案権はあるが、提案した議題は会議にゆだめるということを考えるべきだと思う。提案した内容が否定されたり、違ったものになってもかまわないという姿勢で主催者は会議に臨む必要がある。主催者は、会議の内容について十分考えて提案すべきだが、結論は会議参加者の意見によって決める。そのために会議を開くという考え方が重要になる。ここに民主的な会議の本質がある。主催者はオーケストラの指揮者のような存在でなければならない。会議参加者のもてる力を発揮してもらって見事な演奏を成し遂げる。ここに会議の理想がある。

組織の長は孤独だという言い方がされたり、相談に乗ってもらえる人はいないのではないか、と言われたりするが、それは一体何だろう。組織の長が信頼できるはずの集団の中で孤独を感じるというのは、仲間を信頼していないからに他ならないのではないか。それは、まわりの人々が自分と同じように十分に考えていないので、自分一人がしゃかりきになって必死で考えて、やるべきことを貫こうとしていると思っているから、孤独になるのではないだろうか。
経営者は孤独だというのは、経営方針を少数で決定して、命令によって組織を動かそうとするからではないか。経営方針を上で作ってそれを徹底するというようなやり方を採用している経営者が孤独になるのは、いわば必然だ。民主的な運営を何よりも大切にしているさまざまな組織が、組織の長は孤独だと言っているのであれば、それは、自分たちの組織が民主的でないことを告白しているのに等しい。
もちろん、組織の長になってみなければ味わえないようなことはあるだろう。しかし、そのことをもって、孤独になる必要はない。組織の長にカリスマ性は要らないと思っている。自分についてきてほしいとか、従えとかいうような考え方で組織を動かすというのは、独裁者の考え方だ。組織の長の姿勢によって動く組織というのは、その背中に民主主義の破壊というものが張り付いていると思えてならない。
組織の長がたえず試されているのは、間違いない。誰よりも最初に物事の本質を見極めて問題を提起し、運動を組織する責任が組織の長にはあるだろう。しかし、この仕事を一人でする必要はどこにもないし、一人ですべきでもない。最初に提起する問題も少人数にはなるが、集団で検討する。そうすればいい。提起するときに考えきれない問題は、その少数の相談相手にゆだねてもいい。その中で十分な考え方が出てこない場合は、まだそのものごとの本質が見えていないということだろう。

今日はこんなことを考える機会があった。


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雑感

Posted by 東芝 弘明