調べれば新しい世界が見えてくる

出来事

一般質問の資料作成のために情報を収集している。今回は、和歌山県庁に電話を入れた。資料で読んでいただけではアクセスできなかった情報にいきなり出会った。県庁の空き家対策を推進している男性職員は、電話口でこう言った。
「特定空家を指定して、法にもとづいて事務を行うということが市町村ではなかなか進んでいないです」
「特定空家の指定は、私権を制限します」
「固定資産税が6倍になるということですか」
「そうです。そういうこともあります。指定したら、どうしてうちだけなのか。他はそうなっていないのに、ということで不服審査請求とかが起こる可能性があります」
「そういうことが起きないようにしようと思えば、特定空家を一度に指定する必要もありますが、それをするためには職員体制とかが問題になります」
「特定空家を指定し、住宅を除去せよというのであれば、撤去のための補助制度を確立するなど、きちんとメニューを整備するとかしてよ、などという意見が出る可能性があるので、特定空家を指定せずに事務を進めている例が多いです」

こんな話がいきなり出てきた。
かつらぎ町で担当課とやり取りをして、特定空家の指定が全くないことない対して、どうしてこの事務が進んでいないのか、質問しながら意見を聞き、町の事務がすごく遅れているのではないか、と迫っていた。
担当課長は、特措法(「空家対策等の推進に関する特別措置法」)に基づく事務が全く皆無であり、町が策定した「空家対策計画」が明らかにしている計画が、ほとんど進んでいない状況にあったので、ぼくの質問に対して極めて歯切れの悪いやり取りになった。
しかし、県に1本電話を入れただけで、全く違った世界が見えてきた。県の話でいえば、かつらぎ町の事務が周回遅れのようにものすごく遅れている訳ではないことが見えてきた。
文書だけで準備をする怖さが見えてきた。月曜日になったら、もう一度課長に電話を入れて、和歌山県全体の事務のアウトラインを伝えようと思い直した。

物事には連関と連鎖がある。人間は、その姿を一度に全面的に把握できない。それだけに広く深く認識するためには、さまざまな角度から情報を手に入れる必要がある。新たな情報に出会うたびに、目の前に立ち現れてくる姿は、その様相を大きく変える。

現実の今日の出来事と『万引き家族』が描いた世界とが繋がった。
Amazon Primeで『万引き家族』を見た。血の繫がりのない、一見すれば家族に見える夫婦(これも本物の夫婦ではない)と祖母、夫婦のと子どもたち3人の生活が描かれた作品だった。偽物の家族がどのように生活していたかを描き、お父さんと子どもが万引きなどをして暮らしていた様子を描き、万引きが発覚し、少年がお店から逃げて、ケガをして捕まり、そのことによって家族が一気に崩壊する状況を淡々と描いていた。家族の外面を描くことによって、余計な説明をしないので、より一層いろいろなことを考えさせてくれる映画になっていた。
事件が発覚して家族が崩壊するなかで、家族のみんながマスコミの餌食となったが、偽物の家族がどう生活をしていたか、何によってみんなが繋がっていたのかをほとんど明らかにできない姿があぶり出されていた。勝手な主観的な思い込みによって、事件の真実に迫れないのは、関わった警察、児童相談所の職員も同じだった。

ぼくは、『万引き家族』を見ながら、型にはめ込んで物事を理解しようとする「世間」の怖さを考えていた。このことと今回の調査が自分の中で繋がった。


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出来事

Posted by 東芝 弘明