娘と妻は2人で朝寝坊 2005年7月1日(金)

出来事

新聞配達から戻ったのが7時20分だった。
なんだかいつもと雰囲気が違った。
「お早う」
「寝過ごしてしもた」
「何時に起きたん」
「さっき」
7時25分に家を出ないと8時前に学校に着けない。
「車で送るしかないな」
「そうなんよ。そうしたって」
これが朝のわが家の会話だった。
娘を車に乗せて家を出発したのは、7時50分だった。車でなら5分の距離だ。
「おとうさん、学校の門の所まで送って」
娘はそういいながら後部座席と前列シートの間に隠れるように潜り込んだ。
「何してるんや」
「車に乗せてもらってるって言われるのいややもん」
「隠れてるんか」
「そうや」
24号線との交差点まで来た。この交差点の角にはポリボックスがある。今日は安全確認のために警察官が交差点に立っていた。信号待ちは結構長い。
なにげなく正門の近くを見ていると、女の先生らしき姿が見えた。
「S先生かな。S先生みたいや」
そこで信号が青になったので車を走らせた。
やはりS先生だった。
先生の前を少し通り過ぎて車を左に寄せて止めた。
「着いたで、降りり」
「いやー」
後ろから声がした。
仕方がないので外に出て後ろのドアを開ける。
娘は目をこすりながら出てきた。なかなか芸達者だ。
「おはようございます」
「どうしたの。しんどいの?」
「いいえ、お母さんと2人で寝坊してしまったみたいで」
「うん、そういうこともあるわね」
先生は優しく声をかけてくれた。
「明日ね。土曜日だからゆっくり寝てね」
よかったね。優しい先生で。
今日はこんな感じで1日が始まった。
事務所に行ってから、九度山の母子寮のことで、和歌山県の子育て推進課に電話を入れた。
交付金の内示がおりた資料が手に入ったので担当者に確認したかったのだ。
交付金総額は、わずか1億2000万円台だという。結局、この話からすると4億3000万円近くが自治体負担となる。4億3000万円の内、どれだけ起債が認められるのかは来年の3月にならないと分からないという。
自治体の負担割合が決まっているので、起債を含めたかつらぎ町の負担額は、約9000万円になる。現在3400万円程度負担金を出しているが、追加負担が出てくる。
最初の話とは全然違う。本設計がおこなわれていない段階の話なので、実際の設計と建築費用がいくらかかるのか、まだ不確定な要素がある。まだ高くなる可能性さえある。
財政的な見通しもないまま、各自治体の負担額も明らかにしないまま、建設をおこなうことだけがずっと以前に決まっている。
まさにこの事業は、「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」だ。
お昼12時から告別式に出て、夜7時から別のお通夜に行った。告別式で会った議員と夜も会った。お互いに苦笑が漏れる。
夕方4時30分過ぎに役場に日曜版を配りに行った。職員に昨日からひもでつるす名札が配布されたようだ。ブルーの色鮮やかな平たいバンド状のひもの先にクリップ式の名札が付いている。名刺より2周りぐらい大きな名札だ。かつらぎ町のマークと肩書きが印字されており、氏名が大書きされている。全職員分を外注せず、すべてパソコンからプリンターに印字して作ったようだ。外注すれば60万円かかるという話があったようだが、これで経費は、うんと抑えられているようだった。
「犬の鎖みたいやで」
半ば本気、半ば冗談を言った年配の方は、「しかし、高野口町に行ったとき分かってもらいやすくて良かった」と付け加えていた。
「いいだしっぺの町会議員も名札つけてもらわんとな」
こんな話も飛び出した。
鮮やかな青いひもが、白いシャツに合わせるとかなりのインパクトをもって目に飛び込んでくる。見本用に黒いひもの名札を持っている女性職員がいた。こちらのひもの色の方が落ち着いて見える。
青い色を決めたのは、おそらく総務課だろう。青がいい。こういう判断だったに違いない。
名札が新鮮なだけに、この話題は職場に新鮮な笑いを生み出していた。
こまめにあわただしく動かなければならない住民課の職員は、ひもを取り外して胸のポケットにクリップでとめていた。
「プラプラして使いにくいので」
女性職員も笑っていた。
ボーナスはごそっと減ったようだ。ショックを受けた次の日、この笑いで少しは元気になれだだろうか──「そんなことない」という声が聞こえそうだ。


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出来事

Posted by 東芝 弘明