サカイキャニングの見学 2005年9月16日(金)

出来事

産業建設常任委員会で、梨の木トンネルとサカイキャニング(元サカイ飲料)の工場視察をおこなった。
梨の木トンネルの延長は1070メートル。そのうち掘削は400メートルほどおこなわれていた。水もほとんどでないで作業は順調に進んでいる。トンネルは、発破を岩の中に装填し爆発させながら掘られていく。順調に作業が進めば、平成20年10月頃には供用開始になる運びだ。
このトンネルが抜けたら新城まで15分程度で行けるようになる。子どもの頃、新城から笠田まで、自由自在に車が通れる道はなかった。牛こかし峠という道はあったが、引いていた牛がこけるほどの急な道で、ひもをくねくねと積み重ねるように曲がりくねった、舗装もされていない道だった。この峠を越えるのには骨が折れた。
徒歩の場合、南海高野線の紀伊細川という駅まで歩く必要があった。道のりは新城の東の端から4キロ、新城の自宅からは6キロあった。紀伊細川から橋本駅まで1時間、当時国鉄は1時間に1本の割合で走っていたので、列車の連絡が悪い場合、小1時間待って国鉄に乗り30分、これでようやく笠田の駅に着いた。新城から笠田の街までたっぷり半日かかったということだ。このことを考えると夢のような時間短縮である。
「便利になったのはいいけれど、人間は自然を破壊し、人間が生きていく根本的な存立条件を掘り崩しているのかも知れない」
こんな話をしながらトンネル内を歩いていた。
午後、1時過ぎにかつらぎ町の西渋田にあるサカイキャニング「高野山麓かつらぎ工場」へ視察に行った。
社長と専務の2人の阪井さんが案内をして下さったが、お2人とも気さくな方だった。
工場は、空気が加圧された環境で、窓が一切ない造りになっていた。頭髪飛散防止のキャップ、不織布でできた白い白衣、手の洗浄、消毒液での殺菌、エアカーテンによる滅菌、これではじめて工場内への立ち入りが許される。また工場内への立ち入りは、磁気カードをかざしOKが出ないとドアが開かない仕組みになっていた。
工場の床は、顔が映るほどツルツルのうす緑色をしていた。ホコリが一切ないような造りだ。見学時に製造されていたのは、緑茶のペットボトル(2リットル)だった。1分間に90本ほどお茶が充填され、キャップが自動で装着される。お茶のブレンドは全てコンピューターで管理され、無人の機械でおこなわれていた。人は一切お茶には触れない。人が製造工程で製品をさわることはほとんどない。
どんどんお茶が充填され、列をなしてベルトコンベヤーに乗り流れていく様は、さながら小人の国の兵隊さんが隊列を組んで行進しているように見えた。この整然と並んだ隊列は、順番を待つように、1本ずつベルトコンベヤーに乗って流れていく。その先にはラベルを装着する円形の、まさにメリーゴーランドのような動きをしている装置がある。このメリーゴーランドにスムーズにペットボトルが乗ると、ペットボトルが下に降り、次に持ち上がったときに筒状になったラベルをかぶる。
メリーゴーランドが終わると、またまっすぐなラインに戻り、熱のトンネルをくぐり抜ける。この熱でラベルが固着させられる。ここで失敗した製品は、ラインから押し倒され、はじかれる。だが見ていても不良品はほとんどでない。
完成されたペットボトルは、6個ずつ段ボールがかぶせられ、底と上蓋が閉じられていく。最後は、この団ボールがキューブ状に4段に積み重ねられ、トラックに積み込める状態でパレットに載せられる。
この製造過程の機械室に配属されている職員はわずか数人しかいない。不良品の発見も全てコンピューターでおこなわれるので、人間の仕事は、適温でお茶が充填されたかどうかの検査やはじき出された不良品の回収、製品の全般的な管理などである。
お茶を作る際の水は純水(H20:エイチツーオー)だそうだ。無人化に近い工場で、衛生管理が徹底的におこなわれている。最新鋭の機械、最新鋭のシステムが導入されている工場である。
井戸は、地下35メートルまで掘られ、くみ上げられているが、紀ノ川の伏流水ではなく、山から流れてきたわき水で、大雨が降っても濁ったことがないという。
高野山麓の豊富できれいな水がこの工場を支えているということである。
この夏は、8月に入ってから日中が暑いのによりはあんまり気温が上がらないという現象だったらしく、大手メーカーは生産調整に入ったといっていた。
気象条件が販売に決定的な影響を与えるということである。
微妙な変化が市場に巨大な変化を生み出す。そういう点では極めてデリケートな感じがする。
工場のものすごい緻密さと、市場の不安定さ。
思いはその方向にも走る。


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Posted by 東芝 弘明