未知の領域と議員の活動

雑感

政党が、企業などと違うのは、政党を宣伝するスピーカーが企業以上にたくさんあることだ。日本共産党は、党の議員に自分の言葉で政治を語り、SNSも大いに活用しようと呼びかけている。多くの議員は、この呼びかけに応えて情報発信を積極的に展開している。政党の中では多い方だと思われる。
ところで、地方議員の情報発信の中には、未開拓の領域に自分の努力で足を踏み入れ、物事の本質を見極め、先に進んでいる場合がある。努力の結果、踏み込んだ内容がオリジナリティに溢れていることもある。

一例を挙げよう。
議会の個人情報保護条例に対する対応は、検討していくと未知の領域だった。党中央の論文で言えば、議会と自治体の2021年12月号と2022年8月号の記事ぐらいだった。2つの記事の中でより役立ったのは、2021年12月の方だった。しかし、この記事には議会の個人情報保護条例に対する対応の仕方は、このテーマがまだ具体的な日程には上っていなかったので一言も触れていなかった。

かつらぎ町議会では、議会改革の中で事務局にも蓄積があるので、議会の個人情報保護条例は、議員間で協議し、議員が責任を持って当局と同じように議会に議案を提出すべきだという姿勢で条例案を提示してきた。これを受け止めて検討することになり、担当は議会運営委員会ということになった。議会運営員会の委員長はぼくだったので、この条例案の提案という案件がぼくの肩に掛かってきた。

個人情報保護条例で自分の前に立てたテーマは、①条例の外観と本質をきちんと見極める②基本的人権を守るという原点を貫く修正案をつくる③議会運営委員会として条例案について責任を持って対応できるようにするというものだった。条例案の読み合わせ、Q&Aの学習、現行の町の個人情報保護条例と国の個人情報保護法との違いの確認。それに基づく条例案の見極めを行い、最終段階でぼくによる修正案と原案との比較、どちらを選択するかの協議を行った。今回の委員会における検討は、所管事務調査だったので、議員間による協議というかたちですすめた。全国町村議町会から提示された原案は、議案ではないことを確認し、原案と原案に対する修正案についても議案の採択という形ではなくA案とB案のどちらを選択するのかという協議を行った。
この結果、原案が採用されたが、同時に委員長のぼくがどうして原案には賛成しないで、修正案を出したのかきちんとメンバーの中で確認してもらうことができた。

個人情報保護条例の検討に入るときは、基本的人権を擁護しながら修正案という形にまとめることができるのかどうか、見通しは立たなかった。自分でも最初は国の個人情報保護法が何を規定しているのか理解できていなかったが、認識を一歩一歩進める中で、条例案の本質を捉え、そういうことなら具体的に条文を付け加えれば、基本的人権を擁護できるところまで歩んでいけるという確信をもった。

この結論は、ぼくによるオリジナルなものだ。党中央の情報だけではたどり着けていない。日本共産党の議員は、多かれ少なかれ、自分の責任で未知の領域に分け入って、新たな地点に到達している。
「地方議会には応用の方が多いですよ」
全国の地方議員研修会で不破哲三さんが語ったことは、本当だったし、未知の領域に挑んでいかなければ、地方議員としての責任は果たせないということでもある。

こういう仕事をしているので、議員による情報の発信も、議員によって食い違いが生じてくる。必然的に多様性が生まれる。全国的な課題を帯びてくる問題や、国政の問題でも調べていけば、党内にも意見の違いやニュアンスの違いは当然生じてくる。難しいのは、政治の現場でその都度判断が求められるという点だ。議案審議の中で判断せざるを得ないことが膨大に存在する。

議員も当然人間なので判断の誤りや党の議員の中での意見の食い違い、他の自治体間の党議員との態度の違いも生じてくる。同一議会の中での議員間の意思の統一の課題もある。議員による情報発信は、当然、こういう複雑な問題を抱えざるを得ない。それはどの政党も同じだろう。

企業なら、スピーカーを少なくして、これが企業の方針だということを徹底すれば、発信する情報を統一できる。しかし、日本共産党の場合は、地方議員だけでも2月10日現在、2500人いる。さらに数十万人の党員が自分で情報を発信している。これらの人々がスピーカーになって情報発信すると多様性に満ちたものになることは明らかだ。

企業と政党の情報発信の仕方に違いがあるとすれば、それは宣伝するスピーカーの数の違いだろう。こういう時代状況の中で、情報の発信の仕方をどうすべきなのかということが問われている。
ぼくのブログで書いていることは、基本的には、自分の個人的な見解であって、日本共産党をすべて代表しているものではないと書いている。組織と個人。組織人であっても「これは個人的な見解ですよ」という領域はあるだろう。公式な見解にこだわっているとブログなんて書けないし、そんなブログには面白みもない。
上記に書いた個人情報保護条例に対する修正案は、未知の領域だけに、考え方を鮮明にし、さらになぜそうなったのかを明らかにしても、共産党内でそれが本当に妥当なのか、正しいのか、判断できる状況には、今のところない。おそらく組織にお墨付きを与えてもらおうとしても、「現時点ではまだよく分かりません」ということになるだろう。
この分野の第一人者は誰なのか。それは、未知の領域に足を踏み入れた議員しかいないというケースだってある。

議会の基本条例の修正案を考え始めている。この分野も日本共産党には、現時点では公式な見解はない。この分野で奮闘している地方議員は手探り状態で活動している。自分で条例の書き方を学び、どう条例案を改正すれば良くなるのか。それは、議員の努力に掛かっている。現時点でできるのは、同じように努力している議員間で交流を図ることだろう。個人的にも集団的にも、自由な意見交換と交流が必要になっている。

国政に絡むテーマでも調べていくと未知の領域は多い。たとえば、自分が党員であって農業や福祉の専門家であれば、現場から具体的にテーマを設定し追究していくと、日本共産党の政策との食い違いや日本共産党の政策の不十分さ、まだ明らかにされていない未体験ゾーンに入っていくことが多いだろう。そのときに日本共産党の政策を公然と批判しながら情報発信をするのではなく、自分の専門分野の研究として、新たな対応方向をアピールすればいい。組織の方針や政策を名指しで批判して、論理を展開する必要などはない。どの組織だって、文字によって名指しで批判されたら具合が悪いだろう。
自分が到達した新たな境地を具体的に切り開くためには、個人的な見解を具体的に社会に明らかにして、賛同を得る努力をしないと未知の領域は開かれない。この未知には自由がある。新たな分野の開拓の運動は、最初は少数者から始まる。そういうことを自覚し、認識した上で論を展開すればいい。組織に対し喧嘩を売る必要はどこにもない。大事なのは、現実を変えることにある。

もちろん、党の組織方針の変更を求めたいときは、党内の内部ルールなので組織に対して変更を求めることになる。そのときには、どんな組織でも組織内のルールを守るのは当然だろう。その組織が反社会的なルールをもっているときは、組織の外からの批判もあり得るし、法律に違反していれば、外部からの介入や検察からの介入もあり得る。企業が法的な不正を働いたら捜査の手が入るのは当然だろう。そういうことではないのに組織の外から組織内の方針を批判するのは、明らかにルールに反することになる。


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雑感

Posted by 東芝 弘明