一枚のビラから始まった物語

雑感

23年前に和歌山県岩出市に引っ越ししたAさんは、共産党のビラを岩出駅で1人で配布することが多かった。議員の増田浩二さんと一緒に配布することもあったが、1人の時も多かったのだという。

「おはようございます。日本共産党です」
彼女は、きちんとこの言葉を発してビラを配る。受け取ってくれる人もくれない人もいる。電車は上りと下り。朝の時間帯は30分に1便ほど。上りは奈良県の王子・五条方面、下りは和歌山駅。岩出駅に向かって右側にある広場がタクシーがお客さんを乗せる待機場所になっている。春夏秋冬、彼女はタクシーの運転手の窓をノックしたりして「共産党のビラです。お読みください」と声をかけて手渡していた。中には嫌そうな感じで受け取る運転手もいた。

彼女は何歳で職場を退職したのだろうか。先輩の職員に日本共産党員がいて、この人たちの影響を受けて党に入ってる。同僚の人々に信頼され、周りの人々の心にクッキリとした印象を残している人だった。僕は、自分の選挙のときに彼女の案内で同じ職場だった人たちに会いに行ったことがある。玄関で会った人はみんな一様に深々と頭を下げた。世話好きで心配りのゆきとどいた人だったので外交に回っていた他の職場の人にも、彼女は同僚の人たちと同じような印象を持たれていた。そういう人々に会うたびに、ぼくは、Aさんの優しさを感じていた。

彼女は年齢が高くなるにつれて、長い距離を歩くことができなくなり、移動手段としてタクシーを利用するようになった。タクシーの運転手の中にBさんがいた。このBさんも彼女が駅で共産党のビラを受け取っていた1人だった。いつしか彼女はBさんを指名するようになった。
あるとき、Bさんはタクシーに乗った彼女に1枚のチラシを手渡した。そのチラシは、橋本市の共産党の市議会議員の地域ニュースだった。
「市議の高本さんは熱心に頑張っている。こんな人は他にいない」
Bさんはそう語った。ビラ配りで顔見知りになったBさんは橋本市在住の人で、彼女との出会いをきっかけにして、いつの間にか日本共産党を支持してくれるようになっていた。

日本共産党を支持してくれる人は、日本共産党との出会いがある。それは小さな出会いであることも多い。たった1枚のビラから始まった出会いもある。その小さなドラマが人生に関わる出会いになることもある。
一枚のビラがつないだ小さな出会い。それが人生にもつながることがある。
Aさんは、指名できないときには他のタクシー運転手の車に乗る。みんな今の政治に怒っていると彼女は語る。
「楽しい話を聞かせてもらって良かった」
政治の話をする彼女がタクシーに乗るのを待ってくれている運転手が何人もいるようだ。


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雑感

Posted by 東芝 弘明