日本共産党と民主党

日本共産党

毎日新聞に山口二郎さんの記事が掲載されていた。
「言いたい」4 という題の連載記事で、「日本共産党へ 万年野党でいいのか」という見出しが付いている。
この記事を読んだ知人の方から、記事への意見を聞かせていただきたいというメールが届いたので、意見を書いてみようと思う。(今日はですます調で書いてみます)
記事の冒頭で山口さんはこう書いています。
「『たしかな野党』という共産党の自己規定が間違っていると思います。未来永劫、与党になるつもりはないのかと聞きたい。常に野党でチェックとブレーキばかりではつまらないでしょう」
日本共産党は、85年の歴史の中で、絶えず政治の変革を求めてきました。それは、資本主義社会の民主的な変革から社会主義へという路線です。この路線を実現するために、日本共産党は、一致した要求にもとづいて共同する組織を作り実現をめざします。この路線は、戦前からずっと貫いてきたものです。
日本共産党が、時の政権党から敵視されてきたのは、本気で政治に変革を求めてきたからです。自民党が、日本共産党を根本的に立場の違う政党としてみているのは、政治的社会的変革を根本的に求めているからに他ならないと思います。
「たしかな野党」という「スローガン」を掲げている一つの理由は、衆議院9人、参議院9人という小さな議席しかもっていない現状の中で、政権交代とか政権選択とかをスローガンに掲げても現実味がないからでしょう。もう一つの理由は、自公政権に真正面から対峙する本気の野党が求められているからです。「たしかな野党」という言葉には、不確かな野党が伸びても政治は変わらないという思いがこめられています。
山口さんは、愛知県の知事選挙を例に挙げて、「共産党が勝てる見込みのない候補をわざわざ立てて非自民の票を散らした」と言い、「あくまで独自路線にこだわって与党を利するのか、野党としてまとまって安倍自民党と対決していくのか」という対決点を提示しています。
日本共産党は、独自路線にこだわって、民主党と共闘しなかったということではありません。
日本共産党は、85年の歴史の中で、一貫してよりましな政治の実現をめざし、政策で一致するなら共同戦線を作る努力をし、統一候補を擁立して選挙を戦ってきました。地方自治体では、こういう流れをたくさん作ってきたし、与党にもなってきました。70年代には、社会党と共同候補を立て選挙を戦い、最高時は、国民の4割以上が革新自治体のもとで生活していました。
最近では、70年代のような明確な政策協定が結べない場合でも、推薦や支持を決めたことがあります。長野県知事選挙で田中知事が誕生した2期目からは、勝手連的に田中知事を応援し選挙を戦いました。
これが、日本共産党の基本的なスタンスです。
では、なぜ民主党との間では、こういう共闘が実現しないのでしょうか。
これには明確な理由があります。民主党は、小泉内閣時代、小泉さんと構造改革を競い合い、福祉の分野でも労働法制の分野でも自公の与党といっしょに構造改革路線を推進しました。また、地方自治体では、自民党とまったく同じ歩調をとり、日本共産党以外すべて与党という立場に立って政治を実行してきました。愛知もこういう状況にありました。
しかも、愛知知事選挙に際して日本共産党は、与党のスタンスに立っていた民主党に政策協議を申し入れました。これを最終的に拒否したのは民主党でした。
ことの顛末は、日本共産党の「赤旗」(2007年2月8日、「いま語ろう 日本共産党 民主との協力どう考える」)で簡潔に紹介されています。関係部分を引用してみます。

こうしたなか、共産党と「革新県政の会」は、石田氏の市長時代の教育行政の実績などを踏まえ、「共同」の努力を行うという立場を表明し、協議を呼びかけました。石田氏も協議に応じる立場から日程まで確定していました。
ところが、民主党と「連合愛知」は石田氏に「協議にも応じるな」と迫り、石田氏も「私を支援してくれる人たちが議論した一つの結論」として、これに従ったのです。
地元紙も「革新県政(の会)と協議せず 石田陣営、共闘問題で結論」(「中日」〇六年十一月二十七日付)と書いたように、だれが「協力」を拒否したかは明白です。
民主党は国政でも憲法改悪と日米同盟の強化、大企業中心の「構造改革」と庶民増税路線など、基本路線で自民党と同じ方向で競い合っているのが現実です。ですから、自民・公明連合か民主党か、どちらが「よりまし」とはいえません。
自民党政治を変えるために、いま大事なことは目先の数合わせではなく、政治の中身そのものを変えていくことです。政治を変えるたしかな政策をかかげた候補者が、ただちに当選できなかったとしても、その政策と活動は必ず政治を動かす力になっていきます。


和歌山県の自民党と民主党は、自民党が2つに分裂しただけという状況でした。とくに紀北地方の岸本たけしさんは、自民党の衆議院議員だった実父の岸本みつぞうさんの遺志を継いで自民党公認を求めましたが、公認もれになって民主党に籍を置くにいたりました。選挙の母体になった後援会も、お父さんの後援会を受け継いだもので、実態は自民党そのものでした。
自民党と民主党に違いはないというのは、具体的にはこういうことも含んでいたということです。県会議員になった岸本たけしさんは、民主党から離れ自民党に限りなく接近しています。
山口さんは、「新自由主義反対と戦争はしないという2点でまとまれば十分です」と言っています。問題なのは、はたしてこの合意が形成できるのかどうかです。
民主党は、新自由主義=構造改革推進という点で、自民党と同じスタンスに立ち、憲法9条改正という点でも自民党と同じ立場に立っている政党です。こうなったのにも理由があります。それは、民主党が財界から政治献金を受け取り、財界が求める要求に応えるようになったからです。消費税を増税する政策を民主党がもっているのも、財界の要求との関係があるからです。
驚くのは、憲法改正に対するスタンスです。憲法9条改正賛成で一致している日本会議という組織に、自民党議員と民主党議員が同じように入っています。この事実は、まだあまり知られていません。
具体的な事実を把握すれば、「新自由主義反対と戦争はしないという2点」で民主党と日本共産党が一致しないのは見えてくるはずです。
地方自治体では、選挙の時だけ野党で選挙が終われば与党という形が数多く見られました。こういう状況の下で、日本共産党は独自候補を立てたということです。
政党にとって、最も大切なのは、一致点での共同だと思います。一致点がないのに反自民や非自民というだけで共同してしまうと、選挙後の活動に責任が持てなくなります。
政党にとってより根本的に大事なのは、選挙に勝つことなのではなく、国民のための政治を実現することです。国民のための政治を実現するために、選挙に勝つことが大事だということであって、逆ではないということです。
山口さんは、「共産党は比例代表で大いに頑張ってください。小選挙区制や知事選みたいに一つの椅子を争う場合は、よりましな方を勝たす政治的な判断こそ必要です」と言っています。
もし、山口さんの言うとおりのスタンスを取って日本共産党が国政選挙を戦ったら、国会の中には、新自由主義からの政策転換を求め、憲法9条を守ろうとする政党が存在しなくなるでしょう。
これに目をつむって選挙協力をして議員を誕生させても、根本的な問題で要求が一致していないので、具体的な国会運営で、政策的な対応をめぐって混乱が生じるのは避けられません。これではまともな闘いを組織できなくなります。選挙に勝つことだけを念頭に置いて協力すると、結局は国民の信頼を裏切ってしまうということです。
民主党が、憲法擁護・新自由主義反対の立場に立ち、共同できる条件を持つ党になれば、日本共産党との共同も実現します。この党が、そう言う方向に変わるためには、ものすごく大きな国民的運動が必要ではないでしょうか。
「新自由主義と対米従属の政治を転換していくうえで共産党も重要な役割を果たすべきだと思っています」──この山口さんの期待に応えるためにも、日本共産党は、この政治的な原則を捨てるわけにはいかないということです。
ゆずれない一点は、国民の苦難を取り除きたいという思いと深く結びついています。ここに日本共産党の存在意義があります。
長くなってしまいました。山口二郎さんの意見は、日本共産党そのものに対する意見です。それに対し、ぼくが書いたのは、あくまでもぼくの私見です。文章上の責任はすべて東芝弘明にあります。


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Posted by 東芝 弘明