議会広報委員会の最終編集会議

かつらぎ町議会

10月末までクールビズということになっているので、長袖のワイシャツを着ただけで役場に行った。朝から雨が降っていた。少し肌寒かった。
広報委員会の最終編集日だった。9時15分になると編集会議が始まった。
「風邪ひかんようにな」
横に座っているN議員が声をかけてくれた。窓の外に降る雨はさらに強くなっていた。この雨のせいで気温が低いのかも知れない。
「議会だよりかつらぎ」は、一番外側の表紙と裏表紙がカラーで、中のページが2色になっている。
本日の会議は、発行と同じ色合いの版下に手を入れながら編集するというものだ。
前回修正した記事が直っているかどうかをチェックする。事務局のアイさんからは標記の細かなチェックが入る。
「議会だよりかつらぎ」では「基づく」を漢字で表す。ひらがなの「もとづく」は全部漢字に統一する。「つくる」は「作る」だったり「造る」や「創る」であったりする。「○名」は使わない。すべて「○人」に直す。
こういうことが編集作業では大事になってくる。

文章の校正は、どこまで行ってもキリがない。しかし、このキリがないことにどっぷりとはまり込んで、文章を少しでもよくしたいと考えることが大事だと思っている。人が書いた文章は、その人の書いたものを尊重するので、校正といっても着地点はある。
ところが、自分が書いた文章には着地点がない。この着地点がないところに文章の面白さがある。
多くの人は、自分の書いた文章が気に入らない。読み返すと破り捨てたくなることもある。終わりのない校正がはじまる。
井伏鱒二さんは、87歳の時、「山椒魚」という作品の終部を500字ぐらいバッサリ削っている。発表した年が1923年、改作して発表し直したのが1929年。ここから計算しても56年経っている。このとき、作家の手を離れた作品、評価も一定定まっている作品に手を入れたことに対してさまざまな批判が出た。
批判の先頭に野坂昭如さんがいた。発表して世に問うた作品に対して、原作者だといえども手を入れるべきではないという意見がだった。もっともだと思う。しかし、これを基本としながらも、少なくない作家が、版を重ねるときや文庫にするときに手を入れている。井伏さんの場合、この作品で問いかけたテーマに納得していなかったようだ。
そういえばマルクスは、資本論の版を重ねるたびにかなり手を入れた人だった。資本論には版ごとに差異がある。すごいのは、英語版、ドイツ語版、フランス語版など言葉の違う資本論を作るたびに訳に徹底的にこだわり手を入れたことだ。
ことの善し悪しについては色々ある。改稿についての是非は脇に置いて、井伏さんの心情はよく分かる。こういう気持ちがあるからこそ、文章が上手になると思われる。書いた文章に対して、満足してしまったり、自分の文章をいいと思う人は、文章がうまくならないと思う。たえず満足しないところに、文章上達の極意がある。

編集作業の間にお茶が出てコーヒーが出た。見出しについても議論になった。意見は主張するが、合議制なので多くの場合は多数の意見に従う。もちろん納得できない場合もある。今日は2回ほどみんなの意見に従った。でもみんなで作り上げるというところに編集作業のいいところがある。

午前中に終わったので、総合文化会館の2階にあるSeason Cafe(「しーずんかふぇ」ってひらがなにしないとお年寄りは苦手かも)にランチを食べに行った。入り口のところに「250円でデザートが付けられます」という張り紙があった。心が傾いた。
「デザートを付けてください」
「わかりました」
750円でコーヒー付きのランチにデザートを付けてみた。
テーブルに座って、『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』という新書版(マーティン・ファクラー著)を読んだ。著者はニューヨーク・タイムズの東京支局長だ。読み進めていくと日本の記者クラブの問題点が克明に書かれている。ファクラーさんは、自分の取材姿勢を明らかにしつつ、具体的な取材状況を書き、日本の記者クラブにおける活動とそこから生まれてきた記事を対峙しているので、問題点がより一層明らかになる。
日本の新聞社は、足を運んで現場に行って記事を書かなくなりつつある。10年前は、毎日かつらぎ町にも新聞記者が入ってきた。しかしこういう姿は全くなくなった。発表記事しか書かないという姿勢は、物事を検証しないことへとつながっていく。権力のウソを暴く、事実をつかんで真実を伝える、こういう姿勢がなくなってくると、結局は批判精神が消滅する。
国民はメディアリテラシーをもつべきだというが、権力の批判者、監視人である新聞記者が、リテラシーを失ったら、真実は国民に伝わらない。
ホットな事件でいえば、iPS細胞を使って治療をした森口氏の例が典型だろう。事実なのかどうかを確認する姿勢を持っていれば、ウソは最初の段階で見抜けたと思われる。読売新聞などは、森口氏の記事を過去に6本も書いている。

「ごちそうさまでした」
1時過ぎに本を閉じて、レジでお金を支払った。イケメンの旦那さんの渋い笑顔に見送られた。
下に降りると雨が止んでいた。

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Posted by 東芝 弘明