「社会の真実の見つけかた」

雑感

堤未果さんの「社会の真実の見つけかた」を読んでいる。日本の近未来を描いているとしか思えないような、アメリカの現実が描かれている。
アメリカは、おそらく、「悲しいことに」近い将来、超大国の座を明け渡すことになる。そういうことを予感させるような内容だ。
第2章は、アメリカの教育について克明に書かれている。
アメリカは、ブッシュ(父)の時代から新自由主義的な教育改革が行われた。この改革の流れの中で、ブッシュ(息子)大統領の時代の2002年「落ちこぼれゼロ法」が成立、施行されている。
この法律の内容は、以下のような内容をもつ。
全国統一学力テストがおこなう。目標とする水準に達しない学校は不可とされ、学力テストの点数によって予算に格差が付けられる。学力テストの成績に責任は教師にあり、成績の悪い生徒は転校、教員については、再研修と減給、解雇がおこなわれる。3年連続で適切な向上が図れない場合は、生徒は強制的に別の学校に移され、4年連続となると連邦政府からの補助金全額カットされ、廃校ないし民営化される。

このような教育改革は、橋下「維新の会」が大阪で掲げている教育改革に極めてよく似ている。統一テストで学校ごとの成績を明らかにし、学校を自由に選択できるようにして、最下位の学校は廃校にする。教員については首もあり得る。
なんだか一卵性双生児を見ているような気分になる。

違うのは、日本ではまだ実現していないが、アメリカでは現実になっているということだ。
どうして、堤未果さんのようなレポートが盛んに日本で紹介されないのだろう。日本でアメリカと同じような教育改革が行われたら、日本の教育はアメリカと同じ道をたどると。

アメリカで問題が発覚したのは、教師によるカンニング指導だった。統一テストの成績が、教員のボーナスに決定的な影響を与えるとともに、学校の予算に決定的な影響が出るので、教員の不正が全米に蔓延した。ボーナスに教員がどうして血眼になったのか。それは教員の給料が年平均で360万円程度しかなかったからだ。アメリカでは、教員に対する徹底的な攻撃によって、教員の給料はベビーシッター以下の時給になっているという。

オバマ大統領が誕生したとき、大統領は、強欲の資本主義を真正面から批判した。ぼくは、この批判は、教育改革の是正に向かうだろうと勝手に思っていた。しかし、実際に進行したのは、新自由主義的な改革の加速だった。オバマ大統領は、このシステムの上に、学校教育に「予算獲得レース」を持ち込んだ。全国統一学力テストの結果に応じて、州ごとに競争させて賞金を振り分けた。各州がこの賞金獲得レースに参加した理由は、財政赤字だったという。
成績の悪い学校をどんどん廃校にし民営化するということが行われた結果、チャータースクールという民間の学校に切り替えられていった。これらの学校には、民間の投資会社が資金と大量に投資するようになった。連邦政府は、投資に優遇措置をとることによって教育を投資ビジネスの対象にした。

アメリカでは、このような教育改革の中で、学力低下がより一層進んでいる。教員の離職率は非常に高い。2人に1人が5年以内に離職する。全国統一学力テストは、国語と数学だけで行われているが、この2教科の成績によってすべてが決定されるので、この2つに関係のない教科の時間が徹底的に削られた。学校の事業は、テストによる成績向上のために行われるように変わり、テスト対策に終始するようになった。

日本の教育にこういうものを持ち込もうとしているのはなぜなんだろうか。
競争こそがすべてという改革に「熱病」のようにうなされているのだろうか。

和歌山県でも、すでに教員に成果主義賃金が持ち込まれている。アメリカ流の改革はすでに始まっている。全国統一の学力テストを廃止し、競争を排除して、学びあい深め合うような教育を充実させないと、子どもたちがより一層競争の中に投げ込まれ、その結果として教育の荒廃と学力の低下が生まれてしまう。
人間を育てる教育、人格の完成を目指す教育と競争教育は相いれないことを多面的に明らかにする必要がある。

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Posted by 東芝 弘明