自治体に多面的な視点を

雑感

町長の答弁の中に「TPPについては情報が少なくて」という発言があった。この発言の是非を問いたい訳ではない。
ただ、ここに現れている一般的な傾向について書いてみたい。
たとえば、今回のTPP問題。
この問題については、国論を2分する問題になってきたので、Amazonで検索するだけでものすごくたくさんの本で溢れている。もちろん賛成と反対に分かれている。表題だけ見ていると反対論の方が多い。この中から見極めることが必要になってくるが、自分の興味と関心に合うような形でTPPについて検討していくと、TPPとは何かが当然のごとく見えてくる。
誤魔化しの理論には、理論的な破綻がある。読んでいけばその破綻の芽は見えてくる。

多くの自治体職員は、官製の側の解説のテキストだけで物事を判断していることが多い。新しい制度が具体的に施行されると国や県のルートを通じて、事務の遂行の仕方や考え方がレクチャーとともに降りてくる。仕事として遂行しなければならないからそれは当然のことである。
しかし、国会で可決した法律は、具体的な力関係の中で決定したものであり、当然そこには、綱引きの結果が色濃く反映することになる。とくに最近の国会の動きを見ると、議員提案による議案の修正が当たり前のように行われているので、法体系が矛盾をはらむようなことも増えている。改革が叫ばれ、矢継ぎ早に制度の改革がかなりのスピードを持って実行されてきた。出来上がった法律が本当に現実と合致しているのか、という点でさえ大きな矛盾に満ちている。社会保障関係の法改正は、まさに矛盾と混乱に彩られていると言ってもいいほどだ。
法律の制度は、国会という利害が対立している場で、人間が作っているので、出来上がったものについても当然批判がある。それなのに、そういう法律や制度を是という視点からだけで見て、解説本やマニュアルだけで、批判的な検討をしないと、ものの見方、考え方が非常に薄っぺらになる。
一つの制度ができると、専門家による研究本もかなり出てくる。現場で働く人に実践や批判の本も出される。自治体職員は、こういうものを視野に入れて、自分の頭で判断する必要がある。こういう視点でものを見れるかどうかが、その自治体の発展のカギを握っている。

東京の三鷹市に行ってそのことを改めて強く感じて帰ってきた。三鷹市は、都心に近い自治体で子育て支援という点では、他の自治体にない独自の施策を数多く持っている。国の審議会にも入り、問題提起を行い、ときには国の制度に三鷹市の方法を反映させるというようなことも実現していた。こういうことができるためには、国などの制度に対して、批判的な目線がなければならない。

情報化時代は、リテラシー力が必要だが、物事を多面的、複眼的に見られる可能性がある。行政内部の情報だけではなく、自分たちが行っている事務や事業について、専門家や現場での努力などを広く深く学ぶようにすべきだと思う。

「TPPについては情報が少なくて」
と言った町長は、長く行政マンとして仕事をしてきた人だ。こういう視点に留まっていたのでは、賢い自治体にはならない。
いかがだろうか。


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雑感

Posted by 東芝 弘明