一般質問は原稿を離れて

議員の活動,かつらぎ町議会

ポスター用の写真

一般質問の直前になると、少し緊張してくる。この感覚はどこから来るのだろう。
人前に出ると顔が真っ赤になるほど、緊張する人間だった。
日本共産党の仕事をし始めて、人前で話をするようになっても、こういう傾向はあまり変わらなかった。
それが、いつの頃からか、ほとんど赤面しなくなり、緊張もしなくなるようになった。

しかし、今日は、緊張するという感覚が、蘇ってくるのを感じた。
「次に11番、東芝君」
議長が指名する。
議長が名前を読み上げた瞬間、一言一句原稿を書くのは、赤面症のなごりだと言うことに気がついた。
毎回、一言一句原稿を書く。原稿用紙にして20数枚。
昨夜、一般質問の原稿を書き上げて時計を見ると12時少し前だった。
一番前の質問席に歩いて行き、ゆっくり質問原稿を目の前に置き、質問用の資料を右側に並べた。左側には、かなりの量の資料を積み上げる。使わなくても資料を質問席に持っていくのは、少しでも安心したいからだ。
いつもよりも低い声で質問を始める。腹から声を出そうとしたのは、池上彰さんの本を読んだからだ。

まずは、原稿を読み上げながら質問に入る。質問の組み立ては頭の中に入っている。
「イエス」
という答えが返ってくるように質問を組み立てている。
質問は順調に滑り出した。
1つ目の質問は、長期総合計画をどう具体化するかという質問だった。町長とのやり取りも課長とのやり取りも、原稿に予定していたとおりだった。

2つ目の質問は、社会福祉士を福祉の窓口に配置することを求める質問だった。
総務課長に確認を迫った。
「前任の町長が検討するという答弁をしていたのに、どうして今まで社会福祉士は配置されなかったのか」
「社会福祉主事は配置されていません」
総務課長は、社会福祉主事という言葉を使った答弁をおこなった。
耳を疑った。「社会福祉主事?」
「社会福祉主事と社会福祉士の違いは何か」
「どちらも相談活動を行うという点では同じです」
少し切れてしまった。社会福祉士と社会福祉主事の違いがまともに理解されていない。
社会福祉主事は国家資格ではない。任用資格というもので、自治体で任用されるときにその資格をもっているかどうかで判断されることになる。大学で3科目を履修したら取得できる資格であり、もしくは、職員になって県が行っている研修に参加すれば取得できるものだ。市の福祉事務所には、社会福祉主事が必要だが、福祉事務所のない町村では、「社会福祉主事をおくことができる」となっていて、置かなくてもいいことになっている。
かつらぎ町には、社会福祉主事さえ福祉の職場に配置されていない。

「おいおい、いきなり変化球になるのか」
そういう思いが頭をよぎった。
総務課長の答弁にたいする切り返しによって、質問は原稿を離れた。そうなるともう原稿には戻れない。
質問は生き物なので、答弁が想定を超えると、原稿の流れが変わる。

「社会福祉主事は、相談業務については訓練を受けていません。それに対し、社会福祉士は、4年生大学では180時間の実習を受け、国家試験に通る必要があります。平成25年3月の国家試験の合格者は8058人、合格率は18.8%でした。和歌山県内で合格したのは53人です。社会福祉主事と社会福祉士とは全く違います」
ぼくはこう発言した。
社会福祉主事は、名称独占の国家資格だ。ソーシャルワークの仕事は、誰でもできるけれど、社会福祉士という肩書きを明らかにして、仕事をすることが許されているのは、社会福祉士だけだ。この資格は、誇り高い資格になっている。
この話は、質問原稿では、かなり後の方に出てくる予定だった。
あとは、現実の質問の流れに沿って、質問を組み立てる。質問原稿は、資料に変身した。
質問原稿から離れた方が臨場感が出てくる。波に乗る感じだ。
質問時間は60分、時間配分は頭の中に入っていた。
質問は、カーブを描きながら原稿に立ち返るという感じになった。原稿にはないリアルな事例が自分の口から飛び出した。準備の過程で心に残っていることが、質問の場で出てくる。

3問目の質問に入ると、残時間はあと5分程度だった。3問目は磁気ループの導入を求める質問だ。
こちらの質問の着地点は単純で具体的だった。
橋本市の磁気ループの写真、導入事例、課長による橋本市の調査。2回目の質問になるので、町当局との間で共通認識ができていた。
「導入を検討したい」
「来年度から実施していただきたい」
持時間を1分ほど残して質問は終わった。

一般質問の出だしはオーソドックスに、途中から原稿という地上を離れて離陸する。
質問を支えているのは、準備した資料。用意した質問原稿。これがないまま、質問に入ったら質問は綺麗に組み立たない。

でもねえ。
相手に質問をしながら考えてもらうという質問がいいのかも知れない。ぼくのように自分の流れに相手を巻き込んで、答弁をひねり出すようにしても、よくないのかも。その質問が終わったら、ぼくの質問は、相手の記憶から消えるのかも知れない。相手に自由に答弁していただいて、相手が意欲をもって事業に取り組むようにする方が、効果があるのかも知れない。


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Posted by 東芝 弘明