いい本に出会った

雑感

書店で見つけた本がある。
その本は、橋本市のツモリ書店の新書版のコーナーにあった。背表紙を眺めていると、心に引っかかる本がある。
『「実践」小説教室』(根本昌夫著)。この本もそういうものの一つだった。
純文学から娯楽小説までその違いはよく分からなかった。この本は、この問題について非常に鮮明に書いている。
「小説は、物語と哲学が融合したもの」という定義があり、純文学は哲学性の高い小説であり、娯楽小説は、物語性の強い小説だと書いていた。こんなに見事に簡潔に書かれていることに驚いた。
中間小説という言葉の意味も分かった。これは、純文学と娯楽小説の中間にある小説という意味らしい。

根本さんは、「海燕」と「野生時代」の編集長だった。
小説の内容と文体の関係についても明らかにしていた。書く内容と文体との関係は切っても切れない。内容を離れた文体論はない。正しい日本語と小説の文章とは違うとも書かれている。
書くことについても、現実をありのままに書くことはできないと書き、そこには必ず取捨選択が生じるという意味のことを書いていた。
「あなたが表現したい現物を、ほんの感触でもいいから捕まえて書くよう努めることです。あなたが操る言葉とあなたの内面的真実の距離を、文脈の中でどうにかこうにか近づけていくのです。
それが小説を書くという営みであって、それをやりおおせたときに初めて、納得できる作品が生まれるのです」

表現したい物、出来事を文章で表現するのは極めて難しい。言葉には、しかし、言葉がもつリズムや美しさがある。現実を言葉で表現しようとすると、言葉のもつ力によって、思っていることとは違うものが生まれてくる。それは、表現したい物や出来事に近づくこともあれば、離れることもある。言葉がもつ力や美しさによって、新しい表現方法を獲得して、始め思っていたものとは違うアプローチの仕方で真実に接近することもある。ここに魅力がある。

こういう本との出会いは楽しい。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

雑感

Posted by 東芝 弘明