阿智村の視察を終えて

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阿智村の視察は、1時30分から始まった。
村長の岡庭一雄氏がほぼ1時間、住民との協働をどのように進めてきたのか、語ってくださり、そのあとふるさと整備課の方から報告があり、福祉事業についての報告があった。この報告の後、質疑がはじまった。
例のごとく、ぼくが最初に手を挙げた。
阿智村による住民との協働は、地域の自治会(町内会の連合体で自主的な組織、行政とは対等平等の関係であることを双方が確認)と行政とのコラボレーションによって成り立っている。(1)住民が協力し合っておこなう事業、(2)住民と行政が協力して取り組む事業、(3)行政がおこなう事業という観点で行うべき課題や事業を3つに分類して、住民自治によっておこなう事業については、自治会が振興計画を立てて推進することになっている。行政は、自治会の振興計画を促進するために自治会活動支援金を支出している。支援金は均等割と人口割りで交付され、その額は100万円〜200万円程度だという話だった。
自治会は7つあり、集落には担当職員が配置されている。自治会は、地域の要求をまとめ実現したり行政に要望したりする役割を担う。この組織とは別個に5人の任意で自主的な組織を作り、個別の要求について学習しつつ政策的な提言を行う「村づくり委員会」制度を作っている。この制度に基づき組織されているのは現在17あるという。地域の自治会活動では、カバーできない要求はあると思う。
自治会の要求や運動は、地域単位のものになるので、なかなか町民全体に関わるさまざまな課題を取り上げることはむつかしいし、地域間にまたがる要求をまとめることもむつかしいと思われる。
わずか5人でいいからグループを作り、政策提言していただきたいという発想には柔らかい感じを受ける。
また、この「村づくり委員会」制度とは別に「文化・イベント補助」制度がある。「村づくり委員会」と「文化・イベント補助」を分けているところにも知恵を感じた。
地方自治体の本旨は、住民自治と団体自治にある。阿智村の10年間の実践は、いかにして住民自治を活性化するかという試行錯誤の10年だったようだ。
住民自治の活性化を支えたのは、情報公開だ。行政は意思形成過程の情報をも積極的に住民に開示して、住民といっしょに政策を作り上げていく。
住民への情報開示と議員への情報開示はまったく同時ということは、住民への説明会に議員も参加して行政の説明を聞くというスタイルになるのだと思う。
住民自治が活発化してくると、間接民主主義を担う議会の役割も変わらざるをえなくなってくる。行政から報告をまず受けるのは議員であって、議員には自治体と住民の橋渡しを行っていた面がある。情報開示が行政側から積極的に行われると、従来の議員の役割は縮小していく。
では、議会が果たす役割とは何か。
質問では、このことも尋ねたが、議員による説明ではあまり具体的なことが分からなかった。
議会広報を見ると議会のあり方については、議論が行われ始めており、政策立案能力や条例の修正、提案能力を高めていくことが問われている感じだった。
この点について、話を聞きながら感じたことを少し書いてみる。
阿智村の姿は、かつらぎ町の現在の姿とは大きくかけ離れている。かつらぎ町で住民自治の活性化が図られ、協働のまちづくりが本格的に推進されていくと、議会の役割について新たな課題が出てくるに違いない。
以下に書くことは、全くの感想程度のものであり、机上の思考というものでしかないことを断っておきたい。したがって、以下の文章は、阿智村の議会に対する感想というのではなく、あくまでもかつらぎ町議会の未来の姿に対する、一つの考えというものだ。
机上の空論のような話だが、現時点で考えておくのにも何らかの意味があるように思う。
地域との連携を取りながらさまざまな活動をしてきた自分の経験からいえば、
(1)住民自治の活性化の中に議員も入り、住民自治が活性化するように議員自身が汗をかいて、住民が望む方向に対し知恵も力も発揮すること、
(2)住民が作っている政策立案にも関わりアドバイスをしたり、時には研究会も作ったりして、いっしょに活動すること、──この2点が大事だと思う。
まずは(1)について、もう少し展開してみよう。
議員は、議会の中で住民の代表として、住民の声を取り上げて活動する。しかし、日常生活においては、1人の住民として住民といっしょに汗をかく。これは、一住民として運動をにない、もしくは運動に参加しながら住民自治を活性化していくということ。そして、議会では、この経験の上に立って、住民自治がより一層活発になるように、住民の悩みを解決するための提案や運営の改善を提案したりする。つまり、住民と行政との協働が一層活発になるように議員として活動するということになる。
次は(2)について。
小グループで組織される政策提言の活動に議員も参加したり、これらのグループの意見を聞き、アドバイスをしたりして、活動を支えるということは、積極的に奨励されていいだろう。議員がもっている専門的な知識が役に立つので、議員が関わると政策が豊かになるという面もあるだろう。
議会での政策提案をどのような形で行うのか、議員の提案に対し首長はどういう態度を取るのか、そこらの具体的な姿は分かりにくい。
しかし、日々生起してくる具体的な問題は、未解明なものが多く、議員が果たさなければならないことも多いだろう。
結論的に書いてみよう。
議員は、団体自治の中で役割を担うだけではなく、住民生活においては、住民自治の担い手であるといういことだろう。つまり議員は、団体自治と住民自治の間を自由に行き来しながら、団体自治と住民自治の発展、協働に寄与するということではないだろうか。
住民自治の担い手であり団体自治の担い手でもあるという日常活動を行えば、議員の果たす役割も自ずから見えてくるような気がする。
阿智村の取り組みは、魅力に満ちたものだった。住民との協働、それは理念の基礎をつかめば、運動から出発し、運動によって理念を深めていくべきものだろう。
住民自治の活性化による地方自治の本旨の実現──これこそが住民との協働の核心部分ではないだろうか。
かつらぎ町もいざ、出発のとき。そう感じている。


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Posted by 東芝 弘明