iPhoneという名の悪魔

雑感,Mac

iPhone66

ちょっとたわ言めいたことを書いてみたい。

人間の歴史の中で技術によって生活が決定的に変化したものがある。
日本では、冷蔵庫、洗濯機、テレビがそのチャンピオンだろう。この3つは国民の生活を一変していった。社会でいえば、鉄道、車、飛行機のような移動手段の発達が上げられる。コミュニケーションツールとしては、電話、FAX、インターネット、携帯電話が思い浮かぶ。音楽と映像では、映画、レコードからCD、DVD、Blu-rayの流れ、その再生機がある。カメラも重要な役割を果たしている。
工業における機械化の歴史には、膨大なものがある。
事務系の仕事に革命をもたらしたのは、コンピューターだろう。コンピューターは、工業、商業、家庭生活等々全ての分野に浸透していき、全分野で革命的な変化を引きおこした。

38歳の時にWindowsからMacに切り替えた。あれからもう16年が経つ。MS-DOSとWindowsを使っていた期間が11年間だったから、Macを使っている時間の方が長くなった。
Appleという会社は、パーソナルコンピューターを世に放ち、マウスを作り、iPodとiPadを世に出してから、iPhoneという化け物を世の中に放ってしまった。
Appleにとって、iPhoneはiPadの延長線上に咲かせた花だったが、この形はコンピューターと電話の結合という新しい形を生み出すものになった。iPhoneが世に出たことによって、携帯電話は新しい形を与えられて進化した。iPhoneは、世の中を革新するという点で計り知れないものを毒と一緒に吐き出しつつある。
スマートフォンという言葉は、iPhoneが発売される前から存在したし、iPhoneに先行したさまざまな商品はあったようだが、スマートフォン=携帯電話だというものにしたのは、iPhoneだった。iPhoneによって新しい形を与えられたスマートフォンは、携帯電話の世界を塗り替えただけでなく、まさにコンピューターを生活レベルにまで一気に広げる役割を担うことになった。一人ひとりのもとにコンピューターが行き渡る上で、今後スマートフォンが担う位置には大きなものがあるだろう。

日本の人口は、1億2730万人。このうちインターネット利用人口は、79.5%、9652万人になった。このことについて、総務省の平成25年度版情報通信白書は次のように書いている。
「平成24年末のインターネット利用者数3は、平成23年末より42万人増加して9,652万人(前年比0.4%増)、人口普及率は79.5%(前年差0.4ポイント増)となった(図表4-3-1-2)。また、端末別インターネット利用状況をみると、「自宅のパソコン」が59.5%と最も多く、次いで「携帯電話」(42.8%)、「自宅以外のパソコン」(34.1%)となっており、スマートフォンは31.4%となっている」
おそらく、この比率は急速に変化して行き、スマートフォンの占める比重が高まるに違いない。ただ、高齢化の進展具合を考えると、80%近くなった普及率に大きな変化が起こるとは考えにくい。今後ぬり替わるのは、相対的な比率だろう。

スマートフォンの近未来を少し考えてみよう。
スマートフォンが、世界を蝕みつつ、変えようとしているものは、まだ全体像を私たちに見せているわけではない。この小さな携帯+パーソナルコンピューターは、ソフトの開発によって、おそらく今後も計り知れないほどの変化をさらにもたらしていく。今後、GPS機能を駆使したアプリの開発によって、スマートフォンは、便利な機能を無限に付け加えながら変化する。
地方自治体によるアンケートをスマートフォンで行い、集計はコンピューターで自動計算できるようにすることも可能になる。アプリ開発を行って、ダウンロードしてもらえれば、いろいろな形の調査が恒常的にできるようになる。問題は参加の仕方。アプリをダウンリードすれば100円もらえるというだけでも、一定の効果が期待できる。アンケート集計の費用を考えれば、1000円でも安いだろう。
地方自治体が、スマートフォンを駆使する時代になるためには、かなりの時間を必要とするだろうけれど、住民サービスの向上という点で、スマートフォンの可能性には豊かで面白いものが秘められている。
開発されるアプリによって、家庭の電気器具がスマートフォンでコントロールできる時代がやってきて、財布の役割を担うようになり、薬の処方も、自分の個人的データも、金銭管理も、いとも簡単に全部管理できるようになるかも知れない。
指紋認証が高度になり、他人には扱うことができなくなったスマートフォンということになれば、セキュリティ問題もクリアできるようになる。
データは、安全な場所であるクラウド上で管理される。最も肝心なことは、国家権力がこのクラウドにはどんなことがあってもアクセスできないし、してはならないという原則を確立することだろう。国連のような機関が、クラウドを管理し、国際法でこのクラウドを守るというようなシステムを考える時代が訪れるかも知れない。管理し運営する資金は簡単。全てのスマートフォン契約者が、毎月このクラウド管理に10円ほどを払えばいいのだ。それだけで膨大な資金が全世界から集まってくる。
この機関にのみ許されるものとして、国際基金を作ることも可能になる。難民救済や飢餓の根絶のための基金を集めるアプリを開発すれば、全世界から経費をかけずに資金を集めることが可能になる。

スマートフォンを持ち歩くことによって、人々は、いつでもどこでも、インターネットという計り知れない量のドラえもんのポケットをもつようになる。あいまいな会話に根拠が与えられ、画像による確認や場所の特定が容易にはかられる。
SNSは、見知らぬ人を結びつけるツールとなり、バーチャルで薄っぺらな人間関係を拡散していく。SNSを出発にして面会するという形での新しい本物の結びつきも広がっていく。それは、しかし、犯罪やら悪意とごちゃ混ぜになった形を伴うのだけれど。

若者は、物心ついたときからタブレットやパソコンやスマートフォンに触れてしまい、その純粋さと未熟さ、視野の狭さによって、犯罪に巻き込まれていく。
スマートフォンの恐ろしさを説いて回るだけではなくて、便利なカッターナイフの使い方というような観点で、スマートフォンとの付き合い方を教えなければならない時代が目の前に来ている。スマートフォンから遠ざけるのは得策ではない。小学校の時代から教育の中にコンピューターやスマートフォンという刃物のような危険性をもつ便利なこの道具をどう活用するのかを教え考えさせることが重要になる。
いつの時代でも、新しい便利なものは、人間を虜にしてきた。ラジオもテレビもパソコンもマンガも、親の世代から見ると好ましくない「依存」を生み出してきた。さまざまな「依存」は、形を変えて増幅されている。現在の「依存」の最たるものは、スマートフォンに違いない。電車に乗れば、それは一目瞭然だろう。圧倒的多数の人がスマートフォンの画面を見ている。その光景は中毒以外の何ものでもない。

Appleは、iPhoneという悪魔のような携帯端末を世に放ってしまった。このパーソナルなコンピューターがもたらす変化は、おそらく多くの人の考えを遙かに超えるものになる。20世紀の最大の発明は、冷蔵庫とテレビだったのかも知れないが、21世紀の最大の発明はiPhoneから始まった携帯端末になるかも知れない。
新しい道具は、いつも最初はとんでもない事態を引きおこす。
欲望という名の悪魔は、スマートフォンによるお金儲けに走りながら、人間を蝕んでいくに違いない。しかし、スマートフォン自体が悪いわけではない。
徹底的な利潤の追求という名の悪魔が、その欲望の本質だろう。利潤の追求が、人間社会を蝕んでいる。これが、スマートフォンの世界にも、反映している。
スマートフォンがスマートに使いこなされる時代は、なかなかやってこない。しかし、Appleが開けてしまったパンドラの箱の底にも、最後に残るものは希望だろう。
人類の叡智は、やがて利潤第一主義の弊害を克服する。そのときにスマートフォンは、道具としての新しい発展を切り拓く。
歴史を拓くのは、人間による社会の変革という名のたたかい。スマートフォンは、利潤第一主義に奉仕する道具になるとともに、利潤第一主義を克服するたたかいの道具にもなる。悪魔になるか、女神になるか。それは、たたかい如何にかかるが、女神になる方にこそ、人類の進歩がある。


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Posted by 東芝 弘明