地域内再投資力を高めよう

雑感

笠田にある十五社の樟
笠田にある十五社の樟

昨日の続き。
ぼくが考えている妄想その2。

東京などの都市とかつらぎ町のような田舎を比べるときに、都会で成り立つビジネスが、田舎に来ると成り立たないというものがある。
東京などには、駐車場のないお店がたくさんあり、駐車場のない方が当たり前というところも多い。人の移動手段が公共交通で、交通機関と交通機関をつなぐものは徒歩というのが当たり前の都市と、車なしには移動が難しいところは、大いに違う。お店も駐車場のあるなしが商売に直接関わってくる。
人口が多いということは、それだけでさまざまな需要があるということであり、お店も商売も、店主の発想によって成り立つことも多い。ある土曜日の朝のテレビ番組で、3人ほどの女性がアニバーサリー・プランナーという会社を起業して、家族や恋人などの記念日をプランニングするという話を紹介していた。誕生日や結婚記念日やプロポーズを演出したりするという仕事が、次第に軌道に乗って会社が成り立っていた。
苦労話も紹介されていたが、このような商売が、かつらぎ町のような田舎で成り立つのかというと、かなり難しい。こういうアニバーサリー・プランナーに仕事を依頼して、そのために2万円や3万円を使うという気持ちになる人が、どれだけ層として存在するのか、商売はここにかかっている。人口1335万人の東京では、仕事が途切れることなく存在するかも知れないが、和歌山県内100万県民、かつらぎ町1万8000人となってくるとなかなか需要を満たすことが難しくなってくる。
県内全域でサービスを展開するのは、まず難しい。移動に5時間ないし6時間もかかったりするようなところにサービスを展開するのは、現実的ではない。エリアをせばめ、30分から1時間程度の県域でサービスを実施するということになると、人口は少なすぎる。

東京は日本の文化の中心なので、出版社やテレビ、ラジオ、映画、音楽などの関係を見ても、さまざまな人が働き、さまざまな職種が存在する。舞台を作る小道具というだけでも、さまざまな会社があるだろう。衣装という分野もすごいと思われる。東京にあって、田舎にないものはものすごく多い。

田舎にあるのは、都会にない自然と農林水産業だろう。生産現場が田舎にはある。しかし、販売先は都市部であったりする。田舎は今、人口減少の中で第三次産業から壊れ始めている。第一次産業が壊れつつあるので、これに伴って先行する形で第三次産業が失われつつある。買い物する店がなくなる、ガソリンスタンドが消える、農協の販売所が集約され、身近にあった選果場が統廃合されている。自転車屋がなくなり、居酒屋がなくなり、喫茶店がなくなる。最近深刻になり始めているのは、スーパーマーケットの撤退だ。合併した旧町にあった唯一のチェーン店が撤退した例もある。

櫛の歯が1つずつ欠けるように、生活するのに不可欠の民間による機能が失われて行くと、住民生活は深刻な困難に直面する。かつらぎ町のような田舎で起こりつつあるのは、人口減少による空き家の増加、過疎化、少子化、高齢化、第三次産業及び第一次産業の衰退である。この流れは止まらない。負のスパイラルという言葉があるように、衰退が衰退を呼び起こして行く。
東京などわずか一握りの都市への人口集中と農山村の人口減少。これほどまでに、地域がかかえる問題の様相が違ってくると、東京で打ち出される都市中心の諸施策や諸制度は、地方に当てはまらなくなってくる。均一な国土の発展は見る影もなく、広がっているのは、すさまじい地域間格差だろう。
東京に住んでいる人が、「日本は人口が多すぎる。6000万人ぐらいまで戻ったとしても、明治維新の時より遙かに大きい(明治維新の頃の人口推計は3400万人台)。」というようなことを語ったりするが、現在のような地域間格差を見ないで、人口減少を語ることは間違っている。
中山間地の地方自治体で起こっている人口減少は、産業の衰退の結果として起こっている。それは、人間が暮らしていくための、街の機能が失われつつあるなかでの人口減少と少子化、高齢化なのであって、この崩壊現象をくい止めないと地域は未来を展望できないという性質のものに他ならない。
私たちは、日本経済の成り立ちと地域経済の成り立ち、産業の仕組みを知り、どうすれば地域経済を立て直すことができるのか、ということを見抜く力をもたなければならない。それは、地域経済衰退の原因、日本の産業構造、地域内循環による地域活性化の見通しという3つの点で明確な立て直しを図ることを意味する。

地方自治体は、地域内再投資力を高めるという点では、決定的な役割を担っている。この自覚のもとで地域経済を立て直すために、政策としてまず始めるべきは、中小企業・地域経済振興条例と公契約条例の制定、住宅リフォーム制度の実施だろう。新しい努力のためには、共通の認識が必要になる。地域経済を再生するためには、地域における再投資力を高める必要がある。まずはこの認識を確立しなければならない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明