書く技術

雑感

メモ1

夢枕獏さんが、ポッドキャストの『学問のススメ』に登場し、自分の作品と対談話をしていたので、興味を持っていたら、『赤旗日曜版』の最後のページにある「ひと」欄に登場した。「ひと」欄では、『秘伝「書く」技術』という本について語っていた。
この記事を読みながら、手元にあったiPhoneのAmazon検索ソフトでこの本を検索して注文した。書評を読んでいるその場から本が注文できて、3日か4日後に本が届く、というようなことを繰り返していたら、本が積み上がってしまう。
こういう注文の仕方には、ブレーキをかけているのだが、ときどきこのブレーキがアクセルに変わってしまう。

『秘伝「書く」技術』は、ものすごく読みやすい本になっている。夢枕獏さんの場合、次から次に湧き起こってくるアイデアを書き記すためにカードが活用されている。カードは、思いつきに対するメモだけれど、メモを並べていけば、ストーリーが生まれてくるのだという。これは、非常にいい方法だと思う。iPhoneでこれを実行するために重宝するのは、メモソフトだろう。
ただし、紙の方が使い勝手がいい。並べられる。手に取れる。iPhoneのメモは、Macに瞬時に反映されるのでプリントアウトすると、獏さんのようにメモとして活用できる。
資料を集める。資料を読み込む。現場にいって取材する。これが獏さんの小説の書き方だ。ぼくが、一般質問のときに資料を集める方法と酷似している。
獏さんは小説を書くときには、詳細な一日単位の年表を作るのだという。歴史小説の場合、ウソ(フィクション)をつくために、徹底的に史実にこだわるのだという。史実にこだわって、年表を埋めていくと空白な日や月や年が出てくるのだという。歴史上の人物を描く場合、埋まらない空白の年月日が出てくると、その部分は、ウソ(フィクション=架空の話)を想像で書いてもいいことになるのだという。江戸時代、たとえば獏さんが描いた人物の一人、平賀源内がその時期に京都に住んでいれば、空白の年月日があったとしても、行動には制限が出てくる。史実は、作家にとって手枷足枷になるのだけれど、それが、作品にリアリティーを生み出す力になる。

徹底的に論理的に考えに考え抜いて、作品世界を構築して行く。論理的な破たんは作らない。徹底的に空白を埋める。失われた環は必ずつじつまを合わせる。そういう形で作品世界が構築されていく。こういう方法論を分かりやすい文章で書いている。創作の現場の種明かしの持っている力はすごい。
人間は、物語をつくる力を持っているということも書いてあった。ストーリーテーラーというのは、おそらく天賦の才でもあるのだろうけれど、徹底的に考え抜き、空白を埋める努力によって生み出されてくるものだということが、読んでいるとよく分かる。
5年、10年、20年、小説を書きながら色々な興味に基づいてテーマを深めていくと、カオスの中からアイデアが生まれてくるという考え方がすごい。
書きたい作品のコアになるテーマが大量にあって、それが次第に形になっていく様が、この本の中には詰まっている。

作家が10人いれば、10人通りの作品世界の構築の仕方があるだろう。獏さんの方法は、一つの方法論だけれど、読んでいるとものすごく触発される。力のある本というのは、こういう本のことをいうのだろう。
「天才とは、努力しうる才能だ」
この言葉を思い出した。努力とは、抽象的な精神論ではない。具体的な生々しい作業だ。面白い。

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雑感

Posted by 東芝 弘明