読売新聞の記事に驚く

雑感

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読売新聞を開いて見ていると、元陸上幕僚長の火箱芳文氏のインタビュー記事が載っていた。
「自衛隊員は、自分たちが危険な任務に従事していることを自覚している。自らが盾になり、国家国民のリスクを下げることを目指している。集団的自衛権の限定容認だが、日米同盟をさらに強化するなど、きちんとした体制で戦争を挑まれる国でないようにする」
インタビュー記事の書き出しは、こういうものだった。
集団的自衛権が、他の国が攻撃を受けているところに参戦するものだということを知っているのに、こういうもののいい方をしている。集団的自衛権で日米同盟を強化するということの中には、アメリカが行っている海外での戦争に自衛隊が参加することなのに、それを、「戦争を挑まれる国でないようにする」と言い、防衛でもするかのように述べている。
さらに、「私が入隊した1970年代はもっぱらソ連の侵攻に備えていた。ソ連崩壊で冷戦下の秩序が崩壊し国境を超えたテロの時代になった。米国は『世界の警察官』ではなくなり、中国や北朝鮮が軍拡に動いている。今の日本の安保環境は、冷戦下よりも厳しいと感じる」
と語っている。冷戦時代を知らない人が読んだら「そうか、厳しいんだ」と思う人もいるだろう。
ベトナム戦争は、冷戦時代の戦争だった。この戦争には、ベトナム共和国、アメリカ合衆国、大韓民国、中華民国、オーストラリア、フィリピン、タイ、ニュージーランド、クメール共和国、ラオス王国、ベトナム民主共和国、南ベトナム解放民族戦線、民主カンプチア、パテート・ラーオ、ソビエト連邦、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国など17勢力(国でないものもある)が戦争に参加している。冷戦時代というのは、アメリカとソ連を中心に2つの軍事ブロックに分かれた戦争だったので、極めて深刻な戦争になった。あの時代は、たえず全面的な核戦争に至る危険があった。
火箱氏は、陸上幕僚長だったので、こういうことは百も承知だと思われるが、現在の方が深刻だと言い切っている。

そもそも論で言えば、テロとの戦いは、戦争ではなく警察力によって犯人を捕まえるところに本当の方法と姿がある。テロとの戦い=戦争というテーマの立て方が、ものすごくおかしい。

なぜ、氏の認識は、こうなんだろうと疑問に思って、経歴を見るとなるほどと思う記述がそこにあった。
氏は、自衛隊を11年に退官した後、1年開けて三菱重工の顧問に就任している。三菱重工というのは、日本最大の兵器製造企業であり、昨年の「防衛装備品」(武器・弾薬)の受注金額だけで2632億円にのぼり、全体の17%を占めている。火箱氏は、三菱重工の莫大な利益につながる戦争法を推進しているということになる。
氏は、「自衛隊が合憲か違憲かなんて神学論争をしている暇はないはずだ」とも語っているが、現在の国会の論議は、自衛隊の合憲か違憲かを議論していない。法案が違憲なのか合憲なのかが問われており、違憲である場合、政府は国会に法案を提出できないし、可決したとしても無効になるということだ。法案の正当性が真正面から問われていることに、氏の言及は一切ない。わざと論点をずらしているのか、それともずれているのか。この文章だけでは判然としない。

読売新聞は、日本最大の新聞社なので、国会の焦点がどこにあるかは知っているだろう。法案の存立要件が問われているときに、三菱重工の顧問であり、元陸上幕僚長に自由に語らせ、情勢が変化したのは重要だとして、危機感を煽るのは、まったくいただけない。
この記事を読んで、「読売新聞は死んだ」と思ってしまった。どうして平和の問題が真正面から問われている時に、武器商人の側に立つ人にインタビューをするのか。

読売新聞は、批判的精神を失って政府の言い分をたれ流す。今日の記事は、心底驚いた。


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雑感

Posted by 東芝 弘明