雨降りの夜に

雑感

ファンヒーターの灯油を入れるために裏の勝手口を開けて外に出ると雨が降っていた。雨など降っているという感覚が全くなかったので、犬走りのコンクリートが濡れて雨が降り、雨音までしていたのは驚いた。
8か月ぶりの給油だ。自動で動く給油ポンプにスイッチを入れても動かなかったので電池を交換した。それでも全く動かない。仕方がないので、もう一つあった古い給油ポンプを使ってみた。こちらはまだ動いたのだけれど、ジャバラの部分が劣化して灯油がじゃじゃ漏れになってしまった。仕方がないのでジャバラ部分を切り離して、ものすごく短くして給油した。
「どうしたん」
「うん、給油ポンプが壊れていた」
タンクにたくさん灯油がかかってしまった。雑巾で拭いた後、部屋の中に持ち込んで、さらにタンクをファンヒーターに格納するときに丁寧にタンクを拭いた。

今日は夕方から9条の会の忘年会があった。お酒なしの忘年会にした。野球部の監督をしていたUさんの話を聞きながら居酒屋の料理を食べた。監督という仕事も面白そうだった。
自宅に帰ると、電気は点いているのに誰もおらず、カギがかかっていた。コーヒーを入れてこたつに入ったところで妻と娘が帰ってきた。
「銀杏の木のライトアップを見てきた。綺麗だった」
帰ってくるなり、妻がそう言った。

うたた寝をして目が醒めてから、青空文庫で宮本百合子の「歌声よ、おこれ」を読んだ。戦後すぐの状況を知らない人が、第2次世界大戦のころの日本のことを全く知らないのに、日本は正しい戦争をしたといって気勢を吐く人が増えてきている。戦争を肯定している人々の現代人の感情は、戦争が終わった頃の日本人の感情とは著しくずれている。その当時の文学者の人々のエッセイなどを読んでみて欲しいと思う。こういう時期の文章は、青空文庫にたくさん載っている。
ぼくが今日読んだ宮本百合子の評論などは、当時の時代の空気をリアルに反映していて、空気感が伝わってくる。いかに全ての文学者が軍国主義の中で自由に者が書けなかったのか、書けないことによって、作家自身も含めて自我がなかなか確立していなかったことが書かれている。宮本百合子の文章を読むと、戦争を肯定している人々の論調が、実際の日本の歴史とかけ離れたものであるかがよく分かる。
自由に文章が書けない時代。発表する全ての文章が官憲の検閲にさらされ、弾圧を受ける可能性のある時代。私信でさえ権力の手によって読まれてしまうという時代。それがいかに重苦しいものであったのか。戦後直後、自由を得た作家が書いた文章にそういう空気感が色濃く表れている。

岸井さんへの個人攻撃の全面広告について書いたぼくの文章に対して反論めいたコメントが集まってきている。岸井さんへのこういう批判の仕方が、言論弾圧につながっていくことを微塵たりとも感じないかのような反論がある。国民主権を持っている市井の人々が、安倍政権と歩調を合わせるようにして、政府批判を違法報道だとしていることに共感して、ぼくの論評に対し反論するのは、いったいなんだろうと思う。
言論弾圧が、政府を通じて始まっていることを感じないで、それに手を貸しているのは、恐ろしくもある。弾圧は、政府を応援している人にも及ぶと言うことを微塵とも感じないのは、どういうことだろうか。

日本国憲法を素直に読めば、憲法を守るべき義務を課しているのは、権力の側であり、国民には基本的人権を保障しているのがよく分かる。この憲法を無視して、戦争法を強行可決した行為は、日本国憲法が貫いていた権力監視の立憲主義を真正面から否定するものだった。このことを感じられないで、政府と一緒になって応援している人々もやがては、自身の言動も含めて弾圧や監視の対象になる。このことを自覚していない。
おそらくは、言論弾圧なんて起こらないという風に思っているのだろう。

多くの憲法学者、多くの弁護士、最高裁の元裁判官が、なぜ戦争法に対して憲法違反という言葉を使って反対したのか。その根底には立憲主義の否定があった。権力が憲法を守らないで勝手な解釈をして暴走するときに、さまざまな立場や見解の違いを超えて反対したのは、立憲主義の否定の先には、言論弾圧があるからだろう。戦争は確実に自由と民主主義を否定する。
構造改革が推進されたときに、インタビューを受けた失業者の若者が、テレビ画面の中で「もっと早く構造改革を進めて欲しい」と答えていた。ぼくはそれを見ながら自分の首を差し出して「絞めて下さい」と言っているイメージが鮮明に浮かんだ。それから10年以上経っただろうか。今や非正規雇用が40%を超えるようになった。国民の所得は下がり続けている。老人の苦しい生活は「下流老人」という言葉で表現されるようになった。
構造改革という新自由主義的な改革の先に現在の状況がある。ぼくが抱いたイメージは正しかったと言わざるをえない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明