子どもの権利条約の22年間

雑感

男の子女の子

一般質問が終了した。子どもの権利条約を日本が批准してから22年。批准した国でこの条約を大切に扱ってきた国とそうでない国の差が大きいと感じた。日本の場合、子どもに対しては、未熟な人間として取り扱うという考え方が非常に根強い。教員の方々にもこういう考え方をしている人は多い。この考え方を改めるように子どもの権利条約は規定している。
子どもには大人と対等の権利があり、対等平等に扱う必要があるだけではなくて、子どもの意見表明権を徹底的に保障するということを、子どもの権利条約は求めている。
質問ではデンマークの例を次のように紹介した。
「デンマークの国民学校の評議会には、低学年代表1人、高学年代表1人が参加しています。保護者5人、教員2人の計9人の会議です。校長先生はオブザーバーとして参加します。学校行事、事業の時間配分、学校の財政、教育方針、教職員の雇用、校長の選出が話し合われ、そこでの決定が尊重されます。保護者が過半数のこの評議会の判断で教員が解雇されることもあります。
国民学校は10年間、高校は3年間です。国民学校は満5歳から、最初の年は0年生と呼ばれ、学校生活に慣れるための期間に当てられています。国民学校は、日本の小学校と中学校を合わせたものです。日本流にいえば、低学年代表というのは小学生の代表、高学年代表というのは中学生代表ということです。
これ以外に国民学校にも高校にも全国組織があり、国に意見が届く仕組みがあり、子どもの代表の意見によって、法律が制定された例もあります。」

日本には、デンマークのような仕組みは存在していない。しかし、国連の子どもの権利委員会による日本に対する勧告を読めば、デンマークのような仕組みを日本でもつくることを求めているのが分かる。

国連子どもの権利委員会の日本に対する第3回勧告(2010年6月11日)は意見表明権について次のように述べている。

子どもの意見の尊重
43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、正式な規則では年齢制限が高く定められていること、児童相談所を含む児童福祉サービスが子どもの意見をほとんど重視していないこと、学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。
44. 条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。

今回は、子どもの権利委員会の勧告も引用しながら質問したが、教育長は、子どもの権利条約は、日本においては、憲法や教育基本法とほぼ同じような規定になっているので、法律を変える必要がないという日本の文部科学省の「公式見解」を踏まえて答弁した。しかし、それは、残念ながら子どもの権利委員会の勧告を全く視野に入れない日本の教育界の認識そのものだった。

安倍内閣流の教育改革は、学校における全ての決定権を校長にあるよう規定している。保護者、教員、生徒には物事を決める決定権がないという仕組みだ。これは、子どもの権利条約が求めているものとは随分違う。国レベルでいえば、子どもの権利条約が求める観点で、この間行われた国家主義的な教育改革を是正することが必要だろう。法を変える必要はないという文部科学省の見解こそが、いわば最大の問題であることは間違いない。
「日本の教育は書いていないところが大切です。日本の教師は賢いから対応は豊かですよ」
取材の中でこういう言葉に出会った。
校長に決定権があっても、それをふりかざして学校運営をする人もいれば、合議制を大切にして学校を運営している人もいる。学校現場や地方教育委員会の柔軟性に期待したい。

子どもの権利委員会の勧告には次のような一節がある。

広報、研修および意識啓発
23.委員会は、子どもとともにおよび子どものために活動している専門家ならびに一般公衆の間で条約に関する意識を促進するために締約国が行なってきた努力には留意するものの、これらの努力が十分ではないこと、または条約の原則および規定を普及するための計画が実行に移されていないことを依然として懸念する。とりわけ、子どもおよびその親に対して情報をより効果的に普及することが緊急に必要である。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家の研修が不十分であることも懸念する。
24. 委員会は、締約国に対し、子どもおよび親の間で条約に関する情報の普及を拡大するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに活動しているすべての者(教職員、裁判官、弁護士、法執行官、メディア従事者、公務員およびあらゆるレベルの政府職員を含む)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させるよう促す。

何から始めるべきなのか。
まずは、子どもの権利条約そのもを伝えるための計画が重要だろう。「とりわけ、子どもおよびその親に対して情報をより効果的に普及することが緊急に必要である。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家の研修が不十分であることも懸念する。」
この指摘を重視するならば、かつらぎ町の教育委員会も変化を起こさなければならない。


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Posted by 東芝 弘明