相手を攻撃するのであれば正体を明かせ

雑感

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インターネット上の情報は、かなりネット右翼の人々が幅をきかしているようで、ネット情報だけ見ているとかなり歪んだ情報ばかりが目につくようになっている。ネットというのは、出所不明な文書が多い。ある記事が配信されて、それを見た人がその記事に基づいて感想を書き、ということを重ねて行く結果、いったい元の情報が何であり、何を根拠にそういうことが書かれているのかが分からなくなったりする。たとえば、少し前からエキサイトしていた高校生の相対的貧困を報じたNHKのNewsの場合もそれに当たる。
NHKの8月18日の「ニュース7」は、神奈川県の高校3年の女子生徒について報道し、彼女が経済的理由から専門学校進学を諦めたと県のイベントで語る場面や母と2人で冷房なしのアパートで暮らしていることを紹介した。このニュースに対する反発がネット上でかなり多く発生すると、メディア「ビジネスジャーナル」は8月25日にこの女子高校生に対する記事を書いた。記事は「女子高生の部屋にはエアコンらしきものがしっかりと映っている」と報じ「NHKのコメント」も載せた。この記事が配信されたことによって、女子高生に対する攻撃がエスカレートした。

しかし、この記事は、ねつ造だったことが発覚し、9月2日に「ビジネスジャーナル」を経営している株式会社サイゾーは、お詫びと訂正の記事を書いている。時間とともに記事が見えなくなるかも知れないので、全文を引用しておこう。

当サイトに掲載した8月25日付記事『NHK特集、「貧困の子」がネット上に高額購入品&札束の写真をアップ』における以下記述について、事実誤認であることが発覚しましたので、次のとおり訂正してお詫びします。
 まず、「取材の映像でも、少女の部屋はモノで溢れており、エアコンがないと言っているにもかかわらず女子高生の部屋にはエアコンらしきものがしっかりと映っている」と報じましたが、実際には、女子高生の部屋にはエアコンはなく、取材の映像にエアコンらしきものがしっかり写っているという事実も確認できませんでした。
 当該記事は外部の契約記者が執筆したものであり、NHKに取材をして回答を入手したと記述しておりましたが、実際には回答を入手しておらず、当編集部も確認を怠った責任があります。

 当該記事では、「今回の疑惑に対しNHKに問い合わせのメールをしてみたところ、「NHKとしては、厳正な取材をして、家計が苦しく生活が厳しいという現状であることは間違いないと、担当者から報告を受けています。ですので、ネット等に関しましては、取材の範囲ではありません。但しご意見は担当者に伝えます」との回答を得た」と報じましたが、実際には、弊社はNHKに取材しておらず、回答は架空のものでした。
 弊社は、今回の記事において、何ら根拠なく、「NHKがまたやらせ問題で揺れている」「貧困は社会が抱える大きな問題だが、だからといって報道でそれを捏造してしまえばたちまち矮小化されてしまう」などと報じることで、読者に対し、あたかもNHKが「やらせ」「捏造」を行ったかのような印象を与えたことにつき、取材が十分ではありませんでした。NHKに対し、深くおわびいたします。
 また、今回の記事の掲載により、女子高校生やご家族、並びに読者の皆様に多大なるご迷惑をお掛けいたしました点についても深くおわびすると共に、他に同様の事案がないか調査し、厳正な処分を行うとともに再発防止に取り組みます。
■本件に関する当社の処分について
 当社は、報道に携わる者として今回の問題を真摯に受け止め、今般、代表取締役揖斐憲の役員報酬の減額(2016年9月より3カ月間にわたり50%の減額)を含め、就業規則に基づき、編集長及び担当編集員に対し、厳正なる減給処分を実施致しました。もちろん、関係者の処分をもって今回の問題が解決されるわけではございません。記事によりご迷惑をお掛けいたしましたNHK、報道対象者の方やご家族にあらためて深くおわび申し上げるともに、引き続き、誠意を尽くして対応してまいります。また、再発防止に努め、読者の皆さまの信頼回復にまい進する所存です。
2016年9月2日
株式会社サイゾー

「ビジネスジャーナル」の行為は許しがたい。再発防止といっているが、どういう姿勢で記事を書くのかという根本が問われている。
歴史問題の修正についても同じようなことが起こっている。日本の侵略戦争というのは、歴史的に確定した事実であって、疑問の余地はない。しかし、ネット上では、まことしやかに日本の侵略は濡れ衣というような議論が存在している。侵略を認めたくなかろうが、事実は事実なのでこの表現は避けられないというのが、日本社会の到達点だろう。歴代首相がそう言わざるを得ない現実があったと言うことさえ、認めないですんでいるのは、ネットならではではないだろうか。

書籍の世界では、著作者が明らかになることによって、自ずから責任が生じる。論争がなされているホットなテーマに対して本が書かれると、必ず反論する本が出てくる。しかし、ネットとなると正体を明らかにしていない人が、明らかにしている人よりも多いかも知れない中で、いとも簡単に批判や中傷が行われている。人格攻撃と悪罵のオンパレードという状況は、明らかに現実世界の批判のあり方を越えている。現実世界で、人格を持っている生身の人間を明らかに否定するような人格攻撃は、当然ながら名誉毀損という問題を発生させる。人格を攻撃した人は、その責任を問われざるをえない。しかし、ネット上で正体を隠している人々の中には、相手の人格を簡単に否定し、攻撃する人がいる。正体を隠す行為を全て否定はしない。正体を隠すのであれば、自分の身を安全に置いての文章になるのだから、相手への人格攻撃は現に慎むべきだろう。自分だけ安全地帯にいて、相手に機関銃を乱射するのは、卑怯きわまりない行為ではないだろうか。
「相手を誹謗中傷するのであれば、正体を明かし、批判された相手がきちんと反論できるように責任をもつべき」
ぼくはそう感じる。

書籍の世界で歴史修正主義を大胆に実行しようとしても、それはなかなか難しい。おのずから限界がある。歴史研究の中で決着がつくことも多い。たとえとんでもない内容の本が成立したとしても、社会的評価は低いだろう。
しかし、ネットは言った者勝ちのような感じがある。このような状況を改めるためには、一生懸命に事実を踏まえて、ネット上に記事を書くことが大切になる。もちろん、自身の正体を明らかにして。

ネットを通じて世論を操作するのはたやすいのかも知れない。右翼的な潮流が広がっているので、ネット上に、ある意図をもってかなりの量の情報を流せば、世論に火をつけることができるかも知れない。そういう社会実験的なことをしているグループがあるかも知れないという妄想まで湧いてくる。


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雑感NHK

Posted by 東芝 弘明