空家対策の準備は面白かった

議員の活動

一般質問の準備は、もちろん問題意識を持って、何を質問するかを定めて行うのだけれど、調査していくと必ず新しい視点や発見が積み重なっていき、当初の問題意識とは違った視点が出てきます。今回は、空家対策の質問がそういうものになりました。かつらぎ町の空家対策を調べ始めると、自分の思惑を超えて、到達点がかなり低いことが見えてきました。

それで和歌山県に電話を入れて、資料を作っていただき、和歌山市に電話を入れました。和歌山市に電話を入れ、話をしていると、かつらぎ町で行う住宅の撤去は、「略式代執行ですね」という話が出てきました。「うん?、略式代執行?、」ということになって、戸惑っていると、海南市がそれを行ったという話を教えてくれたので、海南市に電話しました。

海南市は165万円ぐらいの費用で住宅の撤去を行っていましたが、特定空家を指定し、相続が放棄されて持ち主がない危険な住宅を撤去したということでした。助言・指導を行い勧告を行った時点で略式代執行をしたということでしたが、この手続きをすれば撤去費の4割、国費が付いたということでした。かつらぎ町は、こういうことが全くできていません。

そういう状況が見えてきた上での一般質問となりました。最初準備していたときの問題意識とは全く違った内容を持った質問になりました。いつも感じていることですが、問題意識を持つ重要性と、調査の中でその問題意識が変化していく面白さです。自分の問題意識にこだわって、事実を裁断しながら質問を組み立てるのは間違っています。こんな風に質問を作ると深みも幅もない質問になってしまいます。そうではなくて、自分の問題意識の外にある事実をどんどん取り込んで、問題意識そのもを変えていく中で、質問を組み立てる必要があると思っています。それは、できるだけ多面的な事実を把握して、物事を見ることだと思っています。連関と連鎖の中で物事を把握することが、物事の本質に迫る道であり、こういう道を歩むことが質問を豊かにする道だと思っています。

自分の問題意識を事実にもとづいて変化させることに喜びを感じるためには、少し訓練が必要です。多くの人は、問題意識を変化させるのに時間がかかります。新しい事実に基づいて問題意識を変化させるためには、事実に基づいて物事を考えるという姿勢が必要です。「事実をありのままに見る」ためには、実際に事実に基づいて考え方を変える訓練をしないとそうなりません。新しい発見や事実を目の前にして、それを面白いと思うのか、それとも自分の問題意識と合わないので、混乱したり、戸惑ったりして、受け入れられなかったりすると、問題意識を変化させることはできません。
現実は、人間の認識よりはるかに豊かであり、自分の認識には限界がある。新しい事実に出会ったら認識は変化させなければならないということを理解しているのか、理解していないのか。こういう考え方によって違いが出るのかも知れません。

「議員として政策を作るのは難しい」という話がありました。そんな感じは自分の中にはありません。調べていけば政策は自ずから見えてきます。現実の中に発展すべき方向性があり、その方向性を事実に基づいて打ち出していけば、それが政策になります。現実からかけ離れた理想が頭に思い浮かぶこともあるでしょう。こうあるべきだというものが。しかし、発展のプロセスが見えてこないような「提案」は、生きた力を持ちません。自分の自治体で、何をどうすれば変化を起こせるというものを打ち出さないと政策にはなりません。現実の中に思索を発展させることのできる芽があり、その芽をどう伸ばすのか。ここに政策の力点があるのだと思います。発展の芽が現実の中にあるという考え方は、唯物論が説く本質とは何かということです。

人間には概念があり、理想の姿というのは、問題のある課題を調べていけば、頭の中に浮かんできます。このようにして浮かんでくる理想の姿は、現実を深く反映したものでもありますが、しかし、それだけでは現実を動かす力にはなりません。そういう風にして浮かんでくる理想の姿は、「問題意識」の域を出ないものだと思います。そこからさらに現実を調べて、現実の中にある発展の芽を見つけ出して、「何から始めるべきか」を具体的に明らかにしてはじめて、政策になると思っています。

そういう世界に生きていける議員の仕事には、知的な喜びがあると思います。質問の準備のたびに新しい世界が見えてくるのは、面白いことだと感じています。


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Posted by 東芝 弘明