かつらぎ町は実質単年度収支で3年連続赤字となった
決算委員会が開かれた。最初の質疑は会計課から始まった。
かつらぎ町の財政は、全国の自治体とは全く違う傾向の中にある。全国の自治体の圧倒的多数は、合併後10数年が経つ中で会計的には安定し、基金が多く残っている状況になっている。この状況に対して、国は地方自治体には財源が余っているから交付税については削減するというような動きがある。しかし、かつらぎ町は、全国のこのような傾向に反して、財政が悪化し、基金の取り崩しが続いている。これは断じて自然現象ではない。
いったいどうして、他の自治体と全く違う傾向の中にあるのか。この原因を明らかにするのは、自治体の責任だし同時に住民の代表である議員の責任である。原因を鮮明にしないと教訓は明確にならない。同じような財政運営を引き起こさないためには何が必要なのか。
会計課長の報告は、財政が厳しい現状を、ポイントを押さえて行うものだった。現状報告としてはよく分かるものだった。しかし、一体どうしてかつらぎ町は、全国の傾向とは全く違う状況になっているのか。その主体的な原因がどこにあったのかという分析も解明もなされないものだった。この点を明らかにしていく作業は、自治体の政策判断が正しかったのかどうかに迫るものになる。
ぼくは質疑を財政悪化の原因はどこにあるのか、何を原因にしてこういう結果が生まれているのかという点に絞って問いただした。幸いかつらぎ町は、財政の傾向分析を表やグラフで明らかにして多角的に示してくれている。普通会計については、当然だが実質単年度収支が示され、3年連続赤字になったことが資料で確認できるようになっていた。会計課長は一般会計の実質単年度収支も明らかにして、口頭でその数値を示した。こちらも3年連続赤字だった。
町長選挙の際、新人候補と現職候補の間で本町の会計が赤字なのか黒字なのか見解が分かれた。新人候補は本町の会計を赤字だと主張し、現職は赤字というのは正しくないと反論した。しかし、実質単年度収支が3年連続赤字だという点からいえば、会計は赤字と端的に表現しても差し支えないだろう。おそらく現職町長は、完全に赤字ではないと反論したかったのではないだろうか。完全に赤字かどうかなどという事態、つまり財政が破綻して歳入が足らなくなり会計に不足が生じるような事態は起こっていない。新人候補もそんな事態であるとは言っておらず、基金の取り崩しによって会計を組まなければならない事態を示して、財政は赤字だと言ったに過ぎない。
このような指摘に対して、現職候補の陣営が目くじらを立てるのは、まったく間違っていると思われる。3年連続で実質単年度収支が赤字になる事態というのは、会計課長曰く「初めての経験」だということだ。この事実を赤字と表現して何が悪いのかということだろう。
質疑をしても、一体何を原因として財政が厳しい状況に陥っているのか、鮮明にならなかった。全国の自治体の平均も、類似団体も、合併後10年が経過したと思われる平成27年度の指標よりも、実質公債費比率が下がっている。経常収支比率は、平成27年以降上がる傾向にあるが、本町のように100％を超えるような自治体はほとんどない。つまり、本町以外の圧倒的多数の自治体は、合併後10年間、合算算定（10年間は、合併した自治体の合計である交付税を額として維持するというもの）の期間に、公共投資を抑制して基金を積み立て、10年後1本算定（合併した自治体を一つの自治体としてみて、交付税を計算する——これを実施すると交付税は確実に減少する）に向かって財政が破綻しないように合併を着地させることを行ってきた。しかし、本町は、こういう財政運営を行ってこなかった可能性が極めて強い。
物事には原因があって結果がある。自分たちが行っている事業に対して、客観的な観点から経緯を踏まえて、過去の経緯から現在に至る状況に対して分析しないと、自分たちの行っている事業を把握することはできない。問われているのは、事実の積み重ねによって事態を分析することであり、細かい事実の積み重ねとともに、全体を大きく捉えて原因がどこにあったのかを把握しなおすことが問われている。こういう作業を行うために資料は存在している。
一体どうして、こういう事態に陥っているのか。原因はどこにあったのか。
ぼくは、井本町政のもとで公共投資を行いすぎた結果、今の財政状況が生じたのだと思っている。そうであるならば、今後の財政運営では、公共投資の総額を抑制して、財政の健全化を図るべきだと思っている。原因が明らかになればその原因を踏まえて対策を講じる必要がある。しかし、角度を変えて聞いても原因がどこにあったのかという話は出てこなかった。
自ら積極的に原因を明らかにできないで、抜本的な対策はないだろう。
