民主主義を強めてコロナ危機を乗り切ろう

雑感

議会と自治体に載っていた岡田知弘さんの論文『「コロナショック」に立ち向かうために』を読んでいると韓国の経験が紹介され、韓国政府保健福祉部のキムガンリプ次官の言葉を引用していた。

「伝統的な感染症の対応策は封鎖と隔離を重要視し、それなりの効率性を持っていました、しかし、この対応策は閉鎖性、強制、硬直性という欠点を持っています。それにより、私たちは民主主義が制限され、市民の受動的な主体性に転落するという弊害を経験してきました」
この従来の対策に対して、キム氏の新しいモデルの核心は次にあるとして、
「開かれた民主主義社会によるダイナミックな対応策」「透明かつ迅速な情報公開」「情報技術(IT)の活用」「迅速かつ膨大な診断検査」を実施したというキム氏の見解を紹介し、岡田さんは、韓国は「優秀な医療技術・人材・機関」を「意思決定から運用にいたるあらゆる過程に参画させるようにした」と書いている。

民主主義の度合い、民度が問われているのを感じる。日本政府は、国民を信頼していないように見える。徹底的な情報公開と協力の要請という点で、日本の行政の態度は問題を抱えている。主権者である国民に対して、徹底的な説明責任を果たした上で、今行われている施策に対し、国民に納得してもらった上で協力を求めるという基本点でブレている。

議会の全員協議会でも質問が出ていたが、住民はまずかかりつけ医や医院や病院に電話で相談したらいいのか、それとも保健所に電話したらいいのかさえ明らかにならない。濃厚接触者が多数現れているような状況になると、保健所は、毎日自宅で待機している濃厚接触者に対して、健康状態の確認とフォローを行う。2週間の待機という状況のもとで自宅待機となった入り口と出口でPCR検査が行われ、これで陰性になったら感染していないということで、自宅待機が解かれる。

しかし、県は、こういう仕組みを県民にも市町村にも明らかにしていない。保健所のキャパから言えば、住民が保健所に相談するよりも、医院に相談して、医師の判断でPCR検査が行えるようにする方がいいと思われるが、こういう手続きの仕方は、明らかになっていない。

ケースによっては家族全員が濃厚接触者になってしまい、2週間自宅待機となるが、県が持っているこの情報を市町村に伝えてくれないと、市町村としての対応が始まらない。「新型インフルエンザ等対策行動計画」では、自宅待機となった人に対して食料などの物資を届けることになっているが、これができなくなる。

国民は、国や県がどのような対応を新型コロナに対して行っているのかを十分示していない。医院によっては、診察をためらうお医者さんもいると思うが、どの医院でスムーズに診察してくれるのか、という情報さえはっきりしない。

どのような形でPCR検査を増やそうとしているのかも見えない。今後、こういう形でPCR検査を広げていくのでご安心下さいというような情報が届かない。

ドイツは、韓国の経験を踏まえて学んだと言われている。メルケルさんの演説を読んだが、民主主義国家として国民に協力を要請し、民主主義を強めることによって、この危機を乗りこえようと訴えている。こういう考え方の基本が、日本と大きく違う。国民主権があって、この国民主権の力によって危機を乗り切ろうという展望を示す国と、情報の徹底的な公開もなさず、国民への管理と統制を強めて危機を乗り切ろうとしている国に分かれている。

民主的な仕組みを強化して、国民とともにコロナ危機を乗り切ろう。こういうメッセージと対応が求められている。


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雑感

Posted by 東芝 弘明