「傷の深い人への手当は厚く」

雑感

かつらぎ町は、企業や個人商店の実態を調査して、飲食業と宿泊業に対し昨年の収入額の2%分の補助金を出しつつ、その額の倍になる商品券の販売を行う事業を組み立てた。補助金の上限は60万円で下限は10万円となっている。商品券は1冊2500円(500円×10枚)、これで5000円の飲食ができる。最大60万円の給付が行われる事業者は、120万円の商品券販売ができるようになる。この商品券は、そのお店でのみ使用できる。対象の事業者は130ほどになる。商品券が使用できる期間は、今年の8月上旬から来年の1月31日まで。事業名は「プレミアム付飲食・宿泊応援事業」だ。

今回の事業の仕組みは、基本的には、飲食業と宿泊業の事業者からの申請とその確認、商品券の印刷代と現金の振り込み、商品券の配布という事務で終了する。現金の給付は、さきに100%商品券が売れたと仮定して、商品券の総額の半分、つまりプレミアム分の精算を最初に行うという形だ。商品券販売の実績による精算は行われない。この仕組みによって、事務費が最小限に抑えられる。

最小限の事務費で商品券の販売が行われるという今回の事業には、集団の知恵が生きている。
議会が終わった後日、ぼくは、担当している課に行って質問した。
「だれがこの制度の提案を行ったんですか」
「あれは、みんなの議論の中から出てきたものです」
課長はそう答えた。
「職員の提案と集団による討議の中から政策が生まれている」
役場のトップはそう語っていたが、課長の答えはそれを具体的に明らかにしてくれるものだった。

議会では、この事業に対して「公平でない」という質疑があった。その話を聞きながら、さだまさしさんのことを思い出していた。
さださんは、自身が書いた本で、傷の深い人への手当は厚く、傷の浅い人への手当は軽く。これが福祉の心ではないかと書いていた。
不公平なのが問題なのか。
傷の深いところを確認して、手立てを講じるという福祉の心がかつらぎ町の役場に生きているのではないのか。

ぼくはそういうことを考えていた。これからもさまざまな形の給付は必要だと思っている。新型コロナについては、十分なことはなかなかできない。その中でどういう施策を講じるべきなのか。このことが問われている。

学生に対する支援、フリーランスに対する支援、病院や医院に対する支援というように、個別具体的な分野における支援が必要になっている。本町の農業にどのような影響が出るのかはまだよく分からない。第二波が大規模に起こったら、さらにさまざまな支援が必要になるだろう。

他の自治体では、「事業所には持続化給付金があるので、それで大丈夫だと思います」というような議会答弁があった。そういう事業所もあるだろうけれど、持続化給付金が「焼け石に水」というところも多い。それをいとも簡単に「大丈夫だ」という感覚は実態とずれている。そんな答弁がいとも簡単に出てくるのは恥ずかしいことではないだろうか。
かつらぎ町からは、現在、そのような答弁は出てこない。それだけでも実態調査をした意味は大きい。


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雑感

Posted by 東芝 弘明