茶碗蒸しの歌

雑感

ぼくはまだ16歳だった。秋が深まり始めた頃、7クラスあった笠田高校2年生の300数十名は、北九州方面に修学旅行に行った。どの港からフェリーに乗ったのかは全く覚えていない。観光バスで何処かの港について、一晩中瀬戸内海を西に航海して大分に朝到着するルートだった。サンフラワーのルートを調べてみると神戸から大分というのがあった。もしかしたら、乗り込んだのは神戸だったかもしれない。

別府の地獄めぐりや山口県に移動して秋芳洞に行ったり、長崎のグラバー邸やオランダ坂、熊本県の阿蘇山にも行った。

一番印象に残っているのは、長崎の原爆資料館だった。見ているうちに友だちと離れて1人になった。展示されている絵画とそこに書かれた文章を食い入るように見て読んでいた。奇声を上げながら走り回っている友だちに、そんなことしていないで読めよ、ここははしゃぎ回る所ではない。と言いたくなった。展示資料は、人々の叫びやうめき声さえも、展示しているかのようだった。

4泊5日ぐらいの日程だったような気がする。同じバスで移動しているうちに毎日顔を合わせる九州のバスガイドさんと親しくなった。車の中で『茶碗蒸しの歌』を教えてもらった。44年も経っているのに今でも歌える。

うんだもこーら、いーけなもんな
あたいがどんの、ちゃーわんなんだ
ひにひにさんどもあるもんせんば
きれいなもんぐわんさー
ちゃわんにひっちたむっちゃろかい
べごなどきゃーろくむっちゃろかい
まなーこ、げねこちゃ、ワッハッハ

昔から歌い継がれてきた歌なので地域によって、少しずつ違いがあるようだ。
いい天気だった。バスは、色づいた紅葉の中を走っていた。窓の外を見ながら好きな同級生の女の子のことを思っていた。高校生の胸の内は複雑だった。赤や黄色の色が澄み切っていて、空気はどこまで行っても透明だった。


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雑感

Posted by 東芝 弘明