話を聞いて泣いたり笑ったり 2006年6月9日(金)

出来事

対話して歩いているといろいろな話に出会う。
医療費の負担におののいている人が増えている。
みんな、さまざまな思いを胸に秘めて生きている。
幸福にも、家ごとにさまざまな顔があるように、
不幸にも、家ごとに違った顔がある。
社会保障が、切り崩されているもとで、
健康が破壊されると、仕事を失い、職場を去らなければならなくなる。
するとたちまち医療費の負担を心配しなければならない。
8年間、宅配の仕事に就き、朝5時半に家を出て、深夜に帰宅するという生活をしている夫婦の方がいた。
何度家を訪ねても会えなかった奥さんに、街灯の下で8年ぶりぐらいにバッタリ会った。
「旦那さんは元気ですか」
「ガンの疑いがある。月曜日に紹介状を持って入院することになっている」
奥さんは、眉をしかめながらジッと一点を見つめてそう言った。
宅配の仕事に転職して8年。夫婦で流通の末端を担って走り通してきた方々だった。
まったく土地勘のない場所に1時間半もかけて行き、地図を頼りに始めた仕事だという。
最近は、ガソリン代の高騰によって、収入を経費が上回るようになってしまったという。
旦那さんの体調が変化したのは、4月だったらしい。
お医者さんは、2人を目の前において、「ガンの疑いがある」と言った。
働いて、働いて、働きぬいて、その先に待っていたのは病気だった。
現在の仕事に転職した理由は、それまでやっていた繊維関係の仕事では、ご飯が食べられなくなったからだ。
社会保障が、命を救うのではなく、高額の負担を求め、蓄えてきたお金を食いつぶさせて命を危うくする。
構造改革は、まさに人殺しの改革だ。
この夫婦の話に出会う前に、離婚して母子家庭になった女の人が、息子と2人で10年がんばってきて、仕事で生き生きし、息子も結婚して幸せになってきつつある話を聞かせていただいた。何だか幸せを分けてもらえたような、うれしい話だった。
月が雲に隠れて見えない夜だったけれど、街灯の明かりがさわやかに見え、胸に温かさが広がっていた。
その時にバッタリ会ったのが、宅配便の仕事をしている奥さんだったのだ。
国政に対しては、こみ上げてくる怒りがある。
国民の苦しみの根源に政治が立ちはだかりつつある。
「非効率な中小企業は、市場から退場していただく」
竹中氏は就任したての頃、こんな風に話をしていた。
この人の理論のもとで、医療費の「改革」が進められている。
アメリカ型の医療が先進であるかのように宣伝して、自由診療を保険診療にもちこみ、混合診療を広げようとしている。しかし、この道は、医療費の負担を増大させるだけでなく、国全体の公費負担を増加させる可能性すらある。アメリカの医療制度は、公費負担の重さでも日本をはるかに凌駕している。なぜ、医療制度が破綻している国の真似をしなければならないのだろうか。
医療費の負担増は、国民の苦しみをすでに増大させている。
住民のなかには、悲鳴がある。
しかし、この悲鳴をマスコミはほとんど取り上げない。
取り上げるのは、オペラを有名人の方と観覧して短いコメントを発して人気を維持しようとしているライオンヘアーの御仁の動きだ。
マスメディアは、フォーカスしてスキャンする対象を間違えている。
歪んだ鏡に映る日本人の肖像画。
歪んだ鏡に映る日本の社会。


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出来事

Posted by 東芝 弘明