2023年5月3日、新聞は死んだのか?

雑感

日本の状況について、「メディアの自由と多元主義の原則を支持している」としたものの、政治的圧力やジェンダー不平等などにより、「ジャーナリストは政府に説明責任を負わせるという役割を十分に発揮できていない」と批判した。

Yahoo!ニュース5月3日

上の引用は、日本の報道の自由ランキング68位という結果を受けて配信された日本に対する評価。昨年よりもランキングは71位から3つ上がる結果となった。これは国境なき記者団が発表したもの。「政治的圧力やジェンダー平等などにより『ジャーナリストは政府に説明責任を負わせるという役割を十分に発揮できていない』」ということを検証する必要があるだろう。
ネットで検索すると朝日新聞デジタルやテレビ朝日、Yahooがこの記事を配信しているが、読売新聞や産経新聞、毎日新聞、日本経済新聞にはこの関係の報道がないが、地方新聞はこの記事を配信している。大手メディアが、この発表記事を報道しないのはある種の後ろめたさがあるのではないかと感じた。

検索しても2023年5月4日の発表が、いつからいつまでの期間を対象に調査したのかは確認できなかった。しかし、集計にかなりの時間を必要とするので、もしかしたら今年の分は入っていないかもしれない。もしそうであるならば、今年の発表はこれですんだが、昨年12月16日の安保3文書の発表と、それ以後の国会の報道についてという点が、調査に大きく反映するとさらに順位が下がるのではないかとも思われる。

5月3日の朝日新聞と毎日新聞の記事をいくつか読んだが、敵基地攻撃能力についての国会論戦をほとんどまともに報道しなかったメディアの責任については、しらばっくれて、立憲民主党の国会質問を紹介しつつ、記事を編成していた。日本共産党の志位委員長が、真正面からこのと本質を追及していたことには全く触れていなかった。志位委員長の質問に触れていれば、敵基地攻撃能力が、日米安保条約との関係でアメリカの統合防空ミサイル防衛(IAMD)に自衛隊が組み込まれ、アメリカによる先制攻撃への自衛隊参加というおぞましい計画も暴露されることになったのにと思った。記事は、こういう計画には全く触れず、国会での議論は低調だったと書いていた。

ことの本質を書くという点で、大手の新聞やテレビは、完全に骨抜きにされ、事実を的確に伝えるという役割を放棄しつつある。軍事戦略が日米安保との関係で展開するのは明らかだ。最近の報道を見ると敵基地攻撃能力の報道も少ないが、この能力がアメリカとの関係で展開されるという視点は極めて弱い。安保条約に対するタブーがある。こんなものがジャーナリストと言えるのか。というのが2つの新聞を読んだ感想だった。

大本営発表は、メディアが政府の広報紙になることを意味する。政府にとって都合の悪いことは書かない。書くのはバランス感覚による忖度報道だ。
救いだったのは、朝日新聞に2つの全面広告が掲載されていたことだ。この広告に平和を願う国民の意思が表れている。2つの広告は団体名の違う組織の意見広告だったが、ここに示されている考え方は、日本共産党と同じものだった。
ぼくは、この広告を朝日新聞から抜き出して、保存したいと考えた。

第二次世界大戦の軍事上の教訓の一つは、島国である日本は、空襲による無差別攻撃によって敗北した国だったことにある。アメリカはサイパンを1944年6月に陥落してから、日本に対する無差別な空襲を開始した。この攻撃によって日本の主要都市は壊滅的な打撃を受けた。島国は空爆に弱い。この軍事作戦の最終段階で広島と長崎への原子爆弾投下があった。
戦争が近代化されたので無差別空爆は、国際法上許されなくなっている。したがって軍事拠点を中心とした攻撃ということになるが、それがエスカレートすれば核戦争にも繋がるし、ロシアのウクライナへの攻撃のように電源拠点である原子力発電所への攻撃もあり得る。

このような状況にある日本で、選択すべきなのは、軍事的にみても「戦争を徹底して避ける」ということになる。憲法9条を軸とする日本国憲法は、日本が戦後アジアの中で生きていくための詫び状でもあったし、国際公約でもあったが、軍事的にいえば、日本が生き延びていく上での最大の戦略でもあったということだ。
中国による台湾への軍事侵攻で台湾有事となったときに、アメリカが台湾を守って参戦すれば、日本は南西諸島の防衛を任務として動く。今大規模に配備しているミサイル基地は、防衛という名でアメリカの戦略に組み込まれ、台湾有事に日本が参戦する仕組みとなる。
中国とアメリカ、日本の参加する戦争は、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争を規模的に大きく超える可能性がある。台湾も戦場になり、中国も戦場になる可能性があるけれど、当然日本も戦場になる可能性がある。日本は、このことを想定して自衛隊の基地の司令部を地下に移し、核戦争を想定指摘地の強化を図っている。こういう現実を平和への重大な危機として具体的に報道しない日本のメディアは、事実に直接接することのできない国民に成り代わって、事実を伝える責任があるのに、それを放棄している。

これが日本のメディアの実態だ。岸田首相と一緒にメディアの幹部が会食をして、そこから生まれてくる報道に、国民の命が脅かされている。憲法記念日にこういうことを書かなければならない。恐ろしい。


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雑感

Posted by 東芝 弘明