インタビューの極意 ラジオ版学問のススメ

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先週の日曜日、永江朗さんの「聞き上手は一日にしてならず」という文庫本を目にして、WAYで買ってきた。面白い本だった。10人の人へのインタビューからなるこの本は、インタビューの名人にインタビューしている本だった。インタビューアにインタビューする本はあんまりない。インタビューの極意みたいなものを聞き出そうとしている。
インタビューアの多くは、良く準備をし、メモをとり質問をまとめているけれど、いざ本番になるとそのメモを見ないで質問にのぞむという人が多いと言うことだった。質問する相手を好きになって、トコトン聞きたいという感覚が大切で、嫌々インタビューをすると、それは相手に伝わってしまうと言うことだった。
相手からどんな話を引き出してくるのか。
どのような質問を投げかければ、相手が心を開くのか。これは難しい。非常に感覚的なことでもある。しかし、こちらの人間の感性すべてが、何となく相手に伝わり、話に弾みがついたり弾みがつかなかったりするということだ。
この本を読んで、今回は小松成美さんの「ICHIRO on ICHIRO」という本を買った。この人のインタビューに興味を持ったのは、松井成美さんがイチローさんに向かって、語った次の言葉だ。
「イチローさんが持っている身体の感覚やボールに臨むときの心の感覚は、言葉にしてもらわないと、絶対に私たちにはわからない。どのような比喩を使っても、どのような語彙を用いてもいいからとにかく話していただけないでしょうか」
これに対し、イチローさんは、「どうしても知りたい?」と聞き、長い沈黙のあと、「じゃあ、このテーブルを動かしていいですか?」といい、実際にバッターボックスに立つ動作を再現して、「自分でも初めて言葉にするので、うまくできるかわからないですよ」と言った。
これが、「ICHIRO on ICHIRO」という本が生まれる出発になった。ここには、インタビューとは何かという醍醐味が集中的に現れている。こんな話を知ると「ICHIRO on ICHIRO」を買わずにはいられなかった。
本を読むと次の本が目の前に現れてくる。そういうことが多い。今回もそういうことになった。
志賀直哉の文章を解析した本を読んで、志賀直哉の本を買ってしまったことと同じだ。
ところで。
ぼくは、毎週、ポッドキャストの「ラジオ版学問のススメ」を聞いている。大学教授や作家の方々に蒲田健さんがインタビューをおこなって、さまざまな話題に話を弾ませるのだが、インタビューをおこなっている蒲田健さんをすごい人だなと思っている。最近発売になった本を中心テーマにして話が進んでいくんだけれど、蒲田健さんは、これらの人々の本をかなり読み込んで、インタビューに臨んでいる。
ときには、関係するビデオも見ていたりする。毎週のことだから、この努力にはすごいものがある。最近は、パート1、パート2という上下2回のインタビューが多いけれど、なかにはパート4まであったりして、かなりの長時間、インタビューをしている。しかも編集がない。ラジオ番組なのでぶっつけ本番みたいなところが多い。というか、Liveなので編集ができない。途中で切ったりするとおかしくなってしまう。
おもしろい話を続ける精神力、相手が話しに夢中になるような質問、この力はすごい。
ときどき、インタビューをしている相手から、「今のはいい質問ですね」とか、「そこなんですよ。問題は」など、話のつぼを押すような質問が蒲田さんから出る。
聞いていると話が弾んでいくのがよく分かる。
取っつきにくい人、気むずかしい人などもいるのに、人選はどうしているんだろうとか、思ってしまう。
一度、蒲田健さんを「ラジオ版学問のススメ」のゲストに呼んで、「学問のススメ」のインタビューアとしての努力を聞いてみるという企画を組んでほしい。蒲田健さんの努力は、きっと聞くに値する奥深いものがある。
この番組を聞くようになってから、ぼくは、確実に自分の視野が広まった。この番組の話に触発されて買った本も多い。
ぼくも議員なので取材をすることが多い。相手から何を聞き出すのか。初めて会った相手からさまざまな話を引き出すのだが、話を聞くというのは奥が深い。質問によって相手との話が深まり新しいものが見えてくる。一生懸命努力している世界で生きている人の話は、聞いていて面白い。そういう点でもインタビューには、興味が尽きない。
最近は、わが娘へのインタビューにも関心がある。子どもの話に分け入っていくのは面白い。わが娘も話に乗ってくるといろいろな話が飛び出してくる。話への接近は、具体的な問いかけから始まる。
子どもに抽象的な質問は禁物。「学校って面白い?」って聞いても、「ふつう」とか「まあまあ」とか、「おもしろいよ」としか返ってこない。授業で体育があったのなら、「今日の体育で何をしたの?」と聞く。「鉄棒」「逆上がりとか?」「ううん、前回り、私できんで」「みんなもできるの?」「できやん子もあるよ」こんな風に会話がつづく。そうすると子どものリアルな世界に入っていける。
「この話知ってる?」と問われて、あいまいに「知ってるよ」といってしまうことがある。知ったかぶり。これはよくない。知らないことは知らないので、教えてもらうことが大事。その際、「何もわからないので教えて」というのもよくない。そんな態度だと相手は話してくれない。知らない世界の話が出ても、その世界を理解しようとし、具体的に話の内容に分け入って、話の中心点に肉薄していかないと相手は、話を途中でやめてしまう。一知半解は戒めなければならない。
とにかく、もっともっと人の話を聞くことに精魂を傾けたい。そう感じている。
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Posted by 東芝 弘明