国家が国民を監視する国へ

雑感

Facebookに以下の文書を書き込んだ。

「特定秘密保護法が、徹底的な猛威を振るうためには、自民党の憲法改正草案の成立が必要になる。先にこの弾圧法が成立したら、憲法改正に国民を誘導しやすくなる。アメリカに従う戦争準備が、全てのテコになる。」

「秘密保護法が可決成立しても、国民の日常は変わりません。法律を施行する弾圧体制が強化され、監視のために増員がはかられ、法を執行する現場に研修が行われて、逮捕という事件が発生します。国家の変化を見ない人は、どこまでも流されます。国家の変化は、日常生活の中に上から押し付けられるのです。」

「7年後。東京オリンピック。汚染が進む東京で、放射能の数値を測定することが、特定秘密の対象になった。何せ、汚染水は完全にブロックされているので、この事実に反する情報は、全て秘密なんですから。新宿でガイガーカウンターによって数値を計測した女性が逮捕された。

これが未来の現実になる。」

「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。」

「本当の愛国者は、国を愛するがゆえに、国民を愛するがゆえに政府に異を唱える。愛するがゆえに、政権交代を求める。愛するがゆえに、空気のように自由と民主主義を求める。」

この中でいちばん訴えたいことの一つは、「秘密保護法が可決成立しても、国民の日常は変わりません。法律を施行する弾圧体制が強化され、監視のために増員がはかられ、法を執行する現場に研修が行われて、逮捕という事件が発生します。国家の変化を見ない人は、どこまでも流されます。国家の変化は、日常生活の中に上から押し付けられるのです。」ということになる。

小学校、中学校、高校で社会科の授業を意識深く学ばなかった人も多いと思う。
日常生活を忙しく過ごしていると、身のまわりのことに対して精一杯で、なかなか社会の動きを構造的、立体的に捉えられない人が多いと思われる。自分の目や耳、口、皮膚感覚で人間は物事を判断し、行動を起こし、生活している。この中に国のことや自治体のことは、普通、なかなか視野に入らない。色々な人の生活している姿を見ていると、国や県、自治体に全く関わりなく社会生活をおくっている人の方が、圧倒的に多いと思う。
もちろん、人間は社会的な動物だから、会社に勤めたり、自営業を営んだり、商売を行ったりして生きている。家庭生活と一定の範囲の社会生活でその人の生活は完結しているので、政治や経済や社会のことに関わりなく家と会社や仕事場、買い物や病院、介護施設というような範囲だけで十二分に生活は成り立っている。
国の動きや自治体の動きは、多くの国民にとっては、非常に遠い存在になる。

ではなぜ、小学校や中学校、高校で人間の生きる力に必要なものだとして、国の仕組みや自治体の果たしている役割や歴について、学校の授業で学ぶのだろうか。
人間の日常の生活が、本当は、国家や自治体、企業や各種団体、個人の事業や農林水産業に取り囲まれて成り立っており、日常生活に直接かかわりのないように見える社会の諸機関によって、物事が決定し、時にはこの仕組みが個人の生活に決定的な影響を与えることがあるからだ。
日本のように高度に発達した資本主義国では、かなり細部にわたって法律的な仕組みが出来上がっており、それがかなり細部にわたって、国民生活をしばるルールとして成り立っている。

政治や経済的な仕組みをほとんど知らなくても、社会人として仕事をし、家庭生活をおくることはできるし、実際、多くの人々はそうやって生活している。しかし、このような生活は、極めて視野の狭い生き方になる。自分の生活感覚だけに従って、自由に生きたいのであれば、お金を持って無人島に行くか、山の中に引きこもるかだろう。しかし、それでも人間は病気になるので、死にたいのであれば別だが、生きたいのであれば、社会制度との関わりを持たざるを得ない。

昨日、特定秘密保護法が修正されて衆議院で可決された。この事実を全く知らない国民もものすごく多いだろう。知っていてもほとんど興味のない人も多いだろう。しかし、社会制度というのは、国会で法律が決まってから、具体化されていくものが多い。法案が衆参で可決されて成立しても、その次の日から事態が大きく変化することはまずない。多くの場合は、新しい法の下で体制が変更され、仕組みが作りかえられて具体化が始まる。今回の特定秘密保護法も、可決成立すれば、具体化の過程に入る。
その期間、国民の生活は何にも変化しない。おそらくこの問題に全く興味も関心もない人にとっては、これから先、何年も何も変わらない日常生活が続いていくことになる。自分の生活に関わってきて初めて、この法律の存在に気がつくということになる。もしくは、そういう事態に陥っても、政治や社会の仕組みに興味や関心がない人にとっては、逮捕・投獄されても、事態の意味が飲み込めないということが十分に起こる。

自分の日常生活の実感とは、全くかけ離れたこの社会の仕組みは、日常の生活に発生の根源があるわけではないので、普通に生活していても、事態が変化していることには気がつかない。そういう生き方をしていると、生活が、国家の力によって巻き込まれ、押し流されるようになる。自分自身の人生を主体的に生きるということにならず、時代に翻弄されることになる。
小学校から歴史や社会の基本を学ぶようになっているのは、国民主権が根底に座っているからだろう。国民は、主権を持った人間として、政治や社会の仕組みを学び、日本や世界の歴史を学び、日常生活の範囲では目に見えない複雑な社会構造を学んで、主体的に生きることのできる人間を育成しようとしている。これをすべてスルーしてきた人は、人生を俯瞰して見る目を失い、主体的に生きる力を失ってしまう。

特定秘密保護法は、日本の社会体制を根本的にひっくり返してしまう極めて危険な内容を持っている。
「そんなこと言われても実感がわかない」
という人は多いだろう。自分の実感から出発して、もしくは、自分の体験から出発して、実感を持って捉えられるかどうか何て、本当は関係がない。何の蓄積もない人にとって未知の分野は、詳しく話を聞いても、アウトラインさえなかなか見えないと思われる。実感というものは、自分の体験と自分の認識という狭い範囲で生まれてくる感情なのだから、実感、実感ということにこだわっていたら前に進めない。
小学校の時の勉強を思い出してほしい。数の概念にしても漢字にしても、新しく学ぶことになかなか実感が伴わなかった体験があるはずだ。しかし、長い時間をかけて、次第に数の概念や図形の概念、自然の法則、言語の仕組みなどが、体の中にしみ込んで実感を身につけてきたはずだ。

特定秘密法案の危険性を理解するためには、少なくとも日本という国の成り立ちへの基礎的な理解が必要になる。国会が果たしている役割に興味や関心がない人にとって、特定秘密法の恐ろしさを説明してもなかなか理解できないのは無理もない。
警察の存在を話せば少しは理解が進むかも知れない。
自動車免許を持っている人は、警察という存在が恐ろしいと感じたことがあるだろう。社会の仕組みという点でいえば、交通には守るべきルールがあり、このルールに違反して車を運転すれば、ケースによっては罪に問われ、違反によっては、逮捕・投獄されるということは知っているだろう。この恐い存在である警察の中に、治安警察がある。特定秘密保護法が施行されたら、治安警察の仕組みが強化される。特定秘密の範囲が拡大すれば、この秘密へのアクセスをはばむために、公安警察が国民に対して監視の目を強化することになる。

日本は、アメリカの要請によって戦争に参加しようとしている。戦争への参加と拡大は、日本国民への参加を促していく。近い将来、集団的自衛権にもとづく海外での軍事行動が解禁になれば、憲法改正の現実性が格段に高まってくる。
戦争をおこなう国になったら、軍事機密が当然のごとく拡大し国民生活がかなりの規模で巻き込まれる。アメリカには、戦争体験をした若者がたくさん存在し、機関銃などを乱射して人を殺した体験を持った人間を抱え込んでいる。戦場での異常な日常が、国民の生活に刺繍のように編み込まれる。
国家は、戦争での戦死者を英雄として評価するので、退役した軍人は、地域社会の中でも一定の役割を果たす。具体的な戦争に参加する国になれば、戦争は、日常生活の中に根をはるようになり、戦争反対という運動は、戦争を擁護し、支持している国民との対立として存在するようになる。戦争が生活の中に具体的に存在するようになれば、特定秘密は、国民の生活の中に入り込んでくるので、特定秘密が漏洩しないように監視を強化しなければならない。戦争をしていた日本が、警察権力の極端に強い国だったのは、必然的な仕組みだったということだろう。

実感がわかない人も、ぜひ、情報を集めて特定秘密保護法というものが何なのか、知る努力をしていただきたいと思う。国家は、国家の都合によって、国民生活に法的なルールをもって、押しつけてくる。生活実感なんてまるで関係がない。日常の生活に何の根拠もない問題であっても、国家は、国民に支配の仕組みを押しつける。特定秘密法は、まさに上から降りてくる国民弾圧の新しい仕組みだ。こんな危険な仕組みを強行採決した自民党と公明党、みんなの党は、国民を弾圧してもかまわないという政党として変貌を遂げている。

こんな政治を保守とは呼べない。歴史の反動を許してはならない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明