行政財産についての質疑はてんこ盛りだった

雑感

明日が3月会議の最終日。3月会議の準備は、いつも半端じゃなく重い。結局徹底的に調べられたかが、出来不出来を決める。
物事は、具体的なので、たえず具体的に、リアルに状況を把握する努力をする。具体的な事実をどう理解するのかも、きわめて大事になる。目の前に事実が提示されていても、その事実を読み取るだけの力がなければ、物事の本質には迫れない。事実の中に分け入るためには、草刈り機も、枝打ちも、掃除機も必要になる。事実の中に分け入って行くと、見えなかった新たな事実に遭遇する。分け入れば分け入るほど、新しいものに出会うので、なかなか調べ尽くすというようなことにはならない。

今回の議会では、公有財産について、かなり深く調べて質疑を行った。少し骨っぽかったし、質疑の内容は食傷気味、てんこ盛りだった。
公有財産というのは、自治体が保有している財産のことだが、この財産は、行政財産と普通財産に分かれる。行政財産は、公用財産と公共用財産にさらに分けられる。この分類の根拠は、地方自治法だ。財産をこのように区分する理由は、明確に存在する。
財産について、規定しているのは民法になる。公有財産でも普通財産に分類される土地や建物は、民法上のルールが適用される。しかし、公用財産と公共用財産には、民法の規定が適用されない。適用できないように地方自治法で財産について規定している。

公用財産というのは、行政が仕事のために使っている施設や土地のことを意味する。分かりやすいのは市区町村の役所や役場がこの財産に当たる。この財産を普通の財産のように貸し出すとさまざまな問題が発生する。例えば、賃貸契約を結んでしまうと貸し付けた土地や建物に使用権や居住権のようなものが発生する。
こんなトラブルを避けるために、公用財産と公共用財産には、私権を設定できないよう規定している。つまり、この2つの財産については、賃貸契約を結んではならない。では、どのような関係なら結べるのか。結べる関係は、使用を申請した方々に使用許可を与えることができるというものだ。この使用許可は、行政の側に正当な理由があれば取り消すことができる。各条例には、取り消すことのできる規定を具体的に書いている。
使用許可である限り、私権は発生しないので、どんなに長く使おうが、居住権などは発生しない。また、使用許可の際、料金を徴収することができる。この料金は使用料と呼ばれる。ただし、使用料は、条例に根拠をおく必要がある。

人様にお金をいただくとき、自治体は、その根拠を明らかにしなければならない。そのために使用料や手数料の規定がある。もし条例に根拠をおかないまま、使用料だといって料金を徴収した場合、「徴収の根拠なし」だと訴え出られたら行政側は負けてしまう。
そうなる根拠は、次の法律による。

(分担金等に関する規制及び罰則)
第二百二十八条  分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。この場合において、手数料について全国的に統一して定めることが特に必要と認められるものとして政令で定める事務(以下本項において「標準事務」という。)について手数料を徴収する場合においては、当該標準事務に係る事務のうち政令で定めるものにつき、政令で定める金額の手数料を徴収することを標準として条例を定めなければならない。

この条例に規定のないお金をもらうことができるケースがある。それは、実費の徴収だ。分かりやすいのは、電話代、コピー代、電気代などだ。ただし、情報公開条例の場合などは、コピー代は手数料として制定されており、普通よりも高い場合もある。

公有財産も公共用財産も使用許可を与えることはできるが、本来の行政目的にそぐわない場合は、目的外使用ということになる。ただし、目的外使用についても規定があり、行政目的をさまたげない範囲においては、使用を許可できる。目的外使用というのは、一時的なケースが多い。また、行政財産に対し通常の場合は私権を設定できないが、例外的な規定として、私権を設定できるという規定もある。それらの規定をすべて書いている条文は次のとおり。

(行政財産の管理及び処分)
第二百三十八条の四  行政財産は、次項から第四項までに定めるものを除くほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。
2  行政財産は、次に掲げる場合には、その用途又は目的を妨げない限度において、貸し付け、又は私権を設定することができる。
一  当該普通地方公共団体以外の者が行政財産である土地の上に政令で定める堅固な建物その他の土地に定着する工作物であつて当該行政財産である土地の供用の目的を効果的に達成することに資すると認められるものを所有し、又は所有しようとする場合(当該普通地方公共団体と一棟の建物を区分して所有する場合を除く。)において、その者(当該行政財産を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付けるとき。
二  普通地方公共団体が国、他の地方公共団体又は政令で定める法人と行政財産である土地の上に一棟の建物を区分して所有するためその者に当該土地を貸し付ける場合
三  普通地方公共団体が行政財産である土地及びその隣接地の上に当該普通地方公共団体以外の者と一棟の建物を区分して所有するためその者(当該建物のうち行政財産である部分を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付ける場合
四  行政財産のうち庁舎その他の建物及びその附帯施設並びにこれらの敷地(以下この号において「庁舎等」という。)についてその床面積又は敷地に余裕がある場合として政令で定める場合において、当該普通地方公共団体以外の者(当該庁舎等を管理する普通地方公共団体が当該庁舎等の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該余裕がある部分を貸し付けるとき(前三号に掲げる場合に該当する場合を除く。)。
五  行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の経営する鉄道、道路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者のために当該土地に地上権を設定するとき。
六  行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の使用する電線路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者のために当該土地に地役権を設定するとき。
3  前項第二号に掲げる場合において、当該行政財産である土地の貸付けを受けた者が当該土地の上に所有する一棟の建物の一部(以下この項及び次項において「特定施設」という。)を当該普通地方公共団体以外の者に譲渡しようとするときは、当該特定施設を譲り受けようとする者(当該行政財産を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付けることができる。
4  前項の規定は、同項(この項において準用する場合を含む。)の規定により行政財産である土地の貸付けを受けた者が当該特定施設を譲渡しようとする場合について準用する。
5  前三項の場合においては、次条第四項及び第五項の規定を準用する。
6  第一項の規定に違反する行為は、これを無効とする。
7  行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8  前項の規定による許可を受けてする行政財産の使用については、借地借家法 (平成三年法律第九十号)の規定は、これを適用しない。
9  第七項の規定により行政財産の使用を許可した場合において、公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する行為があると認めるときは、普通地方公共団体の長又は委員会は、その許可を取り消すことができる。

行政財産については、原則は貸し付け不可、使用許可が基本。ただし、行政目的を損なわない場合、貸し付けも可、私権設定も可。一時的であれば目的外使用も可ということになる。たとえば、行政財産に余裕があれば、マクドナルドの店舗を賃貸契約で庁舎内に設置してもいいことになる。スターバックス付役場、すき家のある市役所もOKということだ。
公共用財産のうち、公の施設の場合、特定の団体や個人に長期使用させることを認める場合は、議会の3分の2の賛成が必要になる。公用財産の場合は首長の判断でいいことになっている。

こういう考え方を駆使し、学校の敷地内への教職員用の駐車場を設置するということを考えてみよう(あくまでもぼくの私見に過ぎない)。
結論からいえば唯一の正解はない。

まずは、学校の敷地に余裕がある場合について
1 貸し付けもOK。この場合は個人の教職員との賃貸契約が必要になる。異動になった場合は契約解除の手続が必要になる。ちょっとめんどくさい。
2 私権を設定したくない場合は、使用許可を与えるということで使用料を設定することもできる。この場合は、条例の制定が必要になる。ただし、個人との賃貸契約は必要なくなるので、職員が異動した場合でも契約の解除などは必要なくなる。
3 使用許可を与えるが使用料は制定しないで教職員に協力金を求める。この場合協力金は教育委員会と教職員の紳士協定のようなものになるだろう。会計処理は雑入。性格は寄附金だと思われる。

学校の敷地に駐車場の余裕がない場合について
強引に駐車場を設置すると学校という公の施設であり教育財産である施設の目的外使用になると思われる。深刻なのは子どもの安全上の妨げになるようなケースだ。この場合は、目的外使用を認めるべきではない。駐車場は敷地外に求めざるをえない。
分かりやすい例は、運動場。広いからといって、恒常的に駐車場として使用することは許されない。
目的外使用に当たるが、子どもの安全や教育活動の妨げにはならない場合。この場合は敷地に余裕がある場合と同じようなことができると思われる。ただし、目的外使用という問題点はついて回る。

今回は、このテーマを巡って、さまざまな質疑を行った。最終段階で答弁に変化が起こり、懸案事項については時間をかけて見直すことが表明された。この変化を注意して見守りたい。


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雑感

Posted by 東芝 弘明