日本経済はとくに基盤の弱いものとなっており

日本共産党

今日はいきなり日本共産党綱領の引用からはじめたい。
「わが国は、高度に発達した資本主義国でありながら、国土や軍事などの重要な部分をアメリカに握られた事実上の従属国となっている。」(第2章第5節)「日本とアメリカとの関係は、対等・平等の同盟関係では決してない。日本の現状は、発達した資本主義諸国のあいだではもちろん、植民地支配が過去のものとなった今日の世界の国際関係のなかで、きわめて異常な国家的な対米従属の状態にある。アメリカの対日支配は、明らかに、アメリカの世界戦略とアメリカ独占資本主義の利益のために、日本の主権と独立を踏みにじる帝国主義的な性格のものである。」(第2章第5節)
この2つの文章は、日本の現状を端的に表している。この認識を踏まえて、日本共産党綱領は日本の政治・経済分析をおこなっている。
アメリカの帝国主義的な戦略の下で、日本は国家的な対米従属の状態に置かれている。それは軍事的・政治的・経済的・外交的な従属という関係にあるということだ。日本の大企業は、この日米関係を基本的には受け入れ、アメリカの支配に従いつつ、利益を共有しようという関係を続けてきた。それは、戦後69年経っても基本的には変わっていない。
この点について、綱領は次のように規定している。
「日本独占資本主義は、戦後の情勢のもとで、対米従属的な国家独占資本主義として発展し、国民総生産では、早い時期にすべてのヨーロッパ諸国を抜き、アメリカに次ぐ地位に到達するまでになった。その中心をなす少数の大企業は、大きな富をその手に集中して、巨大化と多国籍企業化の道を進むとともに、日本政府をその強い影響のもとに置き、国家機構の全体を自分たちの階級的利益の実現のために最大限に活用してきた。国内的には、大企業・財界が、アメリカの対日支配と結びついて、日本と国民を支配する中心勢力の地位を占めている。」

アメリカによる「国家的な対米従属の状態」「対米従属的な国家独占資本主義」───ここに日本の現状の基本がある。

「これらすべてによって、日本経済はとくに基盤の弱いものとなっており、二一世紀の世界資本主義の激動する情勢のもとで、日本独占資本主義の前途には、とりわけ激しい矛盾と危機が予想される。」(日本共産党綱領第2章第6節)
「これらのことによって」、の前には、日本の政治・経済の状態が、いくつかの角度から分析されている。それを書いたら長くなるので、割愛して、この文章に注目したい。
「日本経済はとくに基盤の弱いものとなっており、」

アメリカによる対日支配、従属と日本独占資本によるルールなき資本主義と呼ばれるような、国民の低賃金、無権利な状態によって、日本の場合は、農林水産業が衰退し、国民の賃金がここ10年間、下がり続けている。
日本には資源がないという言い方が当たり前のようになされる。しかし、この話は、工業的な視点から述べたものだ。日本に存在する豊かな資源は、実は農林水産業にある。豊かな森林、豊かな水、豊かな農産物、豊かな海産物。まわりを海に囲まれた国で、豊富な森林をもった温暖な雨量の多い国、日本。この国は、このような自然的条件によって、農林水産の分野にものすごく多くの資源をもっているということだろう。

なのに、農林水産業が壊滅的な打撃を受け、再生産が維持できないような事態に追い込まれている。農村の衰退は、農林水産業の衰退でもある。都市部の少子高齢化と農村の過疎化・少子高齢化とはかなり様相が違う。その違いは、保育所に対する待機児童問題などに端的に表れている。

日本の労働組合運動の弱さは、アメリカの全面占領下の時代に朝鮮戦争へのアメリカによる介入と歩調を合わせて、徹底的に弾圧された歴史にまで遡る。いわゆるレッド・パージ。労働組合から日本共産党員と日本共産党の支持者を徹底的に追放したことによって、たたかわない労働組合が形成され、この労働組合が社会党の影響下に置かれるという状況が、現在にもなお尾を引いている。これを基礎にして、1980年、社会党が公明党と合意し、日本共産党とは共闘しないとし、労働組合の分野では、労働組合をより一層たたかわない方向に再編する動きになった。そうやってできたのが連合だった。
労使協調主義という傾向は、今もまだ日本の労働組合の特徴をなしている。残業代未払い、派遣労働の拡大、低賃金、長時間労働、首切りの自由化などへの社会的な反撃の弱さは、このような変遷によって歴史的に形成されたものだ。

2000年代に入って、新自由主義的な改革が始まり、派遣労働の原則解禁とでも呼べるような動きになり、働き方そのものが破壊され、同時に社会保障制度そのものが破壊されていく中で、国民は、社会保障の負担増と賃金が上がらず下がっていくという状況に追い込まれた。
農林水産業の衰退と労働者の賃金減少。──これが「日本経済はとくに基盤の弱いものとなっており、」という状態を生み出している。
戦前は、8割以上を占めていた農民の圧倒的多数が、土地を持たない小作であり、この農村の貧困状態が日本の市場を極めて小さいものにしていたが、今日の日本経済は、アメリカの支配と大企業によるルールなき経済支配によって、戦前と同じように国内市場を極めて狭いものにしつつある。
経済の衰退が、少子・高齢化・過疎化に拍車をかけている。

アメリカの支配と大企業によるルールなき経済支配という「くびき」を解決しないと日本経済は、安定的に発展しないところまできている。アメリカの経済的利益の追求と日本の大企業の経済的利益の追求は、農林水産業の破壊と低賃金、過密労働、不安定雇用と深く結びついている。2つの勢力の利益の擁護は、国民の経済生活の破綻となってあらわれている。この「くびき」は「桎梏」である。「ジレンマ」と呼んでもいいだろう。
アメリカの利益と大企業の利益追求によって、国民生活は豊かにならなず、むしろ破壊されてしまう。
この状態を前向きに解決するためには、農林水産業を守り、労働者の賃金を引き上げるしかない。

戦前の極めて貧困な農村の状況は、農地改革によって大きく改善され、この変化によって国内市場が拡大され、それが高度経済成長の基礎になった。資本主義は、際限なく利潤を追求するところにその特徴がある。この利潤追求を自由に任せると(もしくは、国家によってそれをより一層促進すると)、結局は国民生活が破壊されてしまう。
日本は、現在、最悪の悪循環に陥っている。
この現状を打開するためには、国民が生活向上を求めて立ち上がる必要がある。国民の運動こそが、くびき、桎梏、ジレンマを打ち破る力になる。


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Posted by 東芝 弘明