日本経済の不都合な真実

雑感

金子勝さんの本を読み始めた。『平成経済 衰退の本質』という題名は、現在のぼくの認識と一致している。日本経済は、先進国の中で特異なほど著しく衰退する傾向を示している。この本は「日本はもはや先進国とは言えない」という衝撃的な書き方で始まっている。世界の資本主義は、10年周期といっていいぐらいの周期でバブル崩壊(恐慌)を引き起こしてきた。この中で日本は、経済の破綻に対して誰も責任を取らず、問題点も明らかにしないで、大量の国債を発行し、国の債務を増大させながら、経済に対してカンフル剤を打ち続けて、大企業の利益をかろうじて維持してきたといっていい。

日本とイタリアだけがGDPがほとんど発展しなくなった国になり、国際的な相対的地位を低下させてきた。大量の国債を発行してようやく日本のGDPは横ばいの状態となっている。アベノミクスの破綻の先に待っているのは、日本全体の経済破綻ではないかと思うような事態に直面している。16ページと17ページのグラフを見ていただきたいので、画像を掲載しておこう。

誰かこのグラフを見て反論していただきたい。「日本は素晴らしい」、「日本の経済は好調」だと。
金子さんの本の中では、日本のメーカーの衰退ぶりや不祥事が列記され、日本企業が世界のトップクラスを走っていた時代と比べると、もう日本の企業で世界と肩を並べているのは車しかなく、しかも日本の自動車メーカーは電気自動車へのシフトという点では出遅れてしまっていると指摘している。
電気関係のメーカーの衰退ぶりは、論を待たないだろう。パソコンの業界しかり。パソコンの黎明期から使い始めていたぼくが知っているのは、日本のパソコン業界の恐ろしいまでの衰退だ。NECの98のまえの88パソコンを買って、松、桐(このソフトは健在だ)、一太郎(JustSystemsはがんばっているよね)、スーパー春望だとか、Z’s word(ジーズワード) JGだとか、日本の国産ソフトには、活気があった。妻が新しいノートパソコンを買ったので、「一太郎はいいよ」と言い、パソコンと一緒に購入したら、「お父さん、今はwordやで、誰も一太郎なんて使ってないで」と娘がくってかかってきた。wordの出来映えと比べると一太郎はいいと思うのだが、妻が使っているときに少しさわってみると、なんともはやインターフェイスが古くさい。それでもwordよりはいいと思う。
ぼくがすごくお世話になっていたZ’s word JGを作っていたツァイトという会社は、1997年に倒産している。直接の原因は、Windows95に乗り遅れ、新しく出したソフトが売れず経営が悪化したのだという。

日本の国産ソフトで検索してもほとんど出てこない。日本人なのに外国のソフトばかりを使っている状況にある。生き残っているのは、会計処理のソフトと年賀状ソフトぐらい。年賀状を書かなくなったらこの分野は一体どうなるのか。という状況だ。
ハード面でも日本のメーカーのパソコンを買う理由は、かなり小さくなっている。98でなければ。富士通のパソコンでないとというような時代があった。役場のパソコンにもDellが多い。わが家はMacとDell2台だ。ものづくりは、惨憺たる現状にあるのかも知れない。

スマートスピーカーの世界は、全部といっていいほど外国製品だ。日本は、極端な人口減少の時代に入り、市場が縮小していくので外国から見ても投資のし甲斐のない国になりつつある。このまま行ったらオリンピックと大阪万博が最後の打ち上げ花火になってしまうかも知れない。

金子さんの警告を引用しておこう。

 政府も今頃になって「AIによる第四次産業革命」を言い始めたが、そもそもアメリカにはマイクロソフト、グーグル、アマゾンをはじめ、並みいるIT企業が存在するが、日本のIT企業の衰退は著しい。どのようにそれを根本的に立て直すかという戦略抜きに、「AIによる第四次産業革命」と口先で言っても、かけ声だけに終わるだろう。
実際、大手自動車会社の自動運転の多くはアメリカで開発されている。小規模な再生可能エネルギー(再エネ)を調節する送配電のためのグリッドシステムや省エネのための建物管理などこそIoT(物と物をつなぐ情報通信技術)の「戦場」であるが、原発推進の政策立場のために決定的に遅れ始めている。まるで自ら進んで、日本の産業を衰退させようとしているかのようだ。
 イノベーションが激しく起きている時代は、OS(オペレーティング・システム)が変わると、一気に製品やサービスのあり方が転換して、古い製品が駆逐されてしまうシンギュラリティ(技術的特異点)が起こる。ウォークマンからipodへの転換、固定電話から携帯電話、てスマートフォンヘの転換、原発や火力発電から再エネヘの転換など、枚挙に暇がない。従来型の下請けのサプライチェーンという仕組みだけでは決定的にスビード感に欠けており、公正なルールの下に若手研究者に広く機会を与え、企業横断的.研究機関横断的なオープン・プラットフォームを形成して、遅れを取り戻す産業戦略が必要になっている。
 このように金融緩和はツケを先送りするだけでなく、ゾンビ企業を救済し続けるだけで、”麻酔漬け“となっている間に新しい産業構造への転換を遅らせていく。さらに、もはやマイナス金利で金利が異常に低く、銀行は貸付金利息収入が大きく落ち込む状況で、リスクをとって新しい産業や技術に貸し付けることができなくなっている。やがて、つぎの金融危機が訪れた時に、異次元金融緩和はもう効かなくなるだろう。そして問題が発現した時、日本の産業衰退が深刻化していることが一気に露呈する。その時、貿易黒字が消え、外国人投資家が日本国債を持つようになり、国債の格付けが落ちただけで深刻な経済危機に陥ってしまう状況になる。(P24ー25)

日本は、韓国や中国を批判して、それに便乗した右翼的な言説で溜飲を下げるのではなく、日本が直面している不都合な真実を直視して、日本経済と日本社会の立て直しを行う必要がある。そのためにはアベノミクスをやめて、賃金を引き上げ、年金を減らないものにして、教育の自己負担をなくし、借金とならない奨学金の仕組みをつくって政治と経済の転換を図る必要がある。財源は、大企業と富裕層への応分の負担によって確保する。ここから改革が始まる。こういう方向に舵を切らないと日本の再生はない。

安倍さんを擁護していたら、安倍さんと一緒に沈んでいく。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

雑感

Posted by 東芝 弘明