令和2年度一般会計決算に対する反対討論

雑感,かつらぎ町議会

10月29日は令和2年度の決算認定の議会となった。一般会計決算に対する反対討論を載せておく。記録性も重視したものになっている。今までの反対討論の中で最長のものになった。

令和2年度一般会計決算に対する反対討論

日本共産党町議団を代表して、令和2年度一般会計決算に対する反対討論を行います。

日本共産党町議団は、当初予算に新型コロナウイルス感染症対策の予算が入っていないことを反対の理由の一つに掲げました。それは、地方自治体にとって何よりも大切なのは、自治体の自主的な判断と行動にあるからです。

当初予算後、本町は、補正予算で国の交付金を主軸にコロナ対策予算を組みました。具体的な施策をどう講じるかという点で、知恵を絞る努力に地方自治体としての独自性が現れました。

感染症対策は、地域で感染をどう押さえ込むかという点に基本があります。しかし、県が基本的な情報の開示を行わないなか、市町村で何ができるのか混迷しました。国と県の対策に協力しながら、町独自の対策をどう講じるか。これは今後も問われ続けます。このような状況下で、コロナ対策の総合相談窓口を設置したことは、評価されるべきだと思います。

まずは賛成する点についてのべます。

決算委員会の総括質疑における町長の答弁は圧巻だったと思います。町長は決算委員会の総括質疑において、決算委員の問いに対し、事実を率直に明らかにしました。今回の町長の取った態度によって、本町における行政の無謬論──いつの時期、どの段階をとっても行政の判断と施策は正しいという姿勢は一掃されました。町職員全体にも、町長と同じように事実を率直に語る、説明責任を果たすということを求めます。今後も、この姿勢が貫かれるならば、事業の根本的な見直しによって問題点が洗い出され、再検討が行われます。このことを通じて、本町が発展の軌道に乗ることを期待します。

町長答弁で明らかになった点、率直な答弁をめぐって評価すべき点を具体的に述べます。

一つ目は西部公園の建設です。

令和2年度は、西部公園の計画の見直しが始まった年度となったことが町長の答弁で明らかになりました。決算審査は、町長答弁で明らかになった事実を町民に示すべきでした。

前町長の下でクラブハウスの規模を拡大を打ち出したのは平成30年度です。平成30年3月の議員による一般質問でクラブハウスの問題について、地元への説明がなされていないことが明らかになりました。質問以後行われた地元への説明は困難を極めました。結局同意を得て設計を変更するのにほぼ1年かかっています。

令和元年度、町当局は、クラブハウスの工事請負契約の議案を6月会議に提出しました。しかし、この予算を実行すると、フットサルコートやバーベキューの施設建設の予算が不足することが明らかになりつつありました。しかし、町当局は、この事実を直視せず、事業の見通しももたないまま、1市2町と町議会に事態を報告しませんでした。ここには極めて行き当たりばったりの行政姿勢がありました。

議会は、令和元年度の予算段階で西部公園の質疑を行いましたが、工事請負契約の締結議案に対しては、誰も質疑を行わず全員賛成で可決しています。

まず問われるのは、町当局による説明責任です。クラブハウスの規模が拡大される段階で事業の見通しをもたず、この点を説明しなかった責任は重大です。

同時に議会の責任も問われます。クラブハウスの建設内容について、地元同意がなかった問題を重視し、半年以上にわたる地元との調整、設計の変更などの事実関係を調査していれば、大規模になったクラブハウスをめぐる問題の本質を把握でき、対応できたと思われます。事の本質を見抜けず、質疑を行わなかったので、議員としてのチェック機能を発揮できなかったことは、私にとって痛恨の極みでした。

2つ目は公の施設や普通財産の管理をめぐる問題です。

総括質疑における町長の答弁で、本町の施設の内、公の施設でないとしている笠田西部の道の駅、あんぽ柿加工処理施設、西部の各集会所など在り方を根本的に見直すという態度表明がありました。あんぽ柿加工処理施設の管理運営形態は、委託事業としても問題があるということでした。これらの問題でも、ときどきの議員のチェック機能が問われたと思います。

3つ目は職員の適正化計画についてです。

総括質疑では、令和2年度に適正化計画が見直され、これ以上職員を減員しないことが報告され、この中で今後専門職も採用する姿勢も示されました。これも極めて大事な変化だったと思います。

令和2年度決算は、経常収支比率が96.7%となってやや改善し、財政調整基金を取り崩すことなく基金を1億9171万円積み上げ、残高は8億3437万4000円となりました。前町長の下で施設建設が数多く行われ、歳出に占める公債費が大きな負担となりました。これに対し、現町長は、公共工事の抑制を図りながら、人口減少をくい止め、若者が定住しやすい町をつくることが、財政を安定させる力にもなるし、まちづくりとして重要だという考え方を示しました。この考え方は、本町が目指すべきまちづくりの哲学になりうるものとして、エールを贈りたいと思います。

その他、危機管理課の設置、防災行政無線の整備、こども園と幼稚園の給食費の無料化、小児インフルエンザの予防接種の中学生までの拡充、町道の維持改修費の倍増などは、賛成すべき事業でした。

決算審査に関わって、議員として明らかにすべきだった点を述べます。

令和2年度、笠田中の圃場整備は、年度の途中で方針の大きな転換が行われました。この事業は、前町長が観光農園を作りたいなどという思惑をもって、圃場整備を利用して事業を進めようとしたものです。本来、圃場整備は、地権者のために土砂を埋め立て農地を造成するものであり、町の役割は、国と地権者の間の橋渡しだけです。

この事業が動き出したのは平成26年です。しかし地権者による会が結成されたのは令和元年8月でした。正常な圃場整備ならば、平成26年より以前の計画段階で地権者の会が組織されるべきでした。地権者の会を作らせず、圃場整備の場所に町の事業計画を描いたり、中間管理機構を活用して園内道や水路を建設できるとして、地権者に個々説得を行うなど、町が推進したのは、圃場整備の原則をことごとく踏みにじるものでした。

令和元年8月10日に結成された地権者の代表者会は、中間管理機構による県営事業を立ち上げる直前の令和2年6月11日、前(現の誤り)町長に「一体的な土地の活用案」を要望しました。この事実は、町の推進した事業が、地権者の意向を踏まえたものでなかったことを明白にしました。この要望書を引き継いだ現町長は、方針転換を図りました。令和2年度の決算委員会は、圃場整備の事実経過も踏まえ、この事業の全容を明らかにすべきでした。

次に反対の理由です。

反対の討論の理由の一つは、国が求めているデジタル化に対して前のめりで協力しようとしていることです。町長は、マイナンバーカードの推進を強め、手放しでデジタル化を推進しました。しかし、令和2年度の3月、国会に提出されたデジタル法案は、国民の個人情報に関わる情報を儲けの対象とし、個人情報保護条例を機能不全にして、市町村の情報を政府のクラウド下で一元管理しようとしています。財界がデータを活用してビジネスに生かすことが、国のデジタル化推進の中心に坐っていることを直視すべきです。これを直視しないと、住民の基本的人権と住民の個人情報を守ることはできません。

国と地方自治体は対等平等です。しかし対等平等になるためには、国政で何が行われているのかを地方自治体は見極めなければなりません。この自主的な視点なしに行政をすすめるのは危険です。

令和元年10月には、消費税が10%に増税されました。しかし、消費税増税に対する長町の見解は極めて不十分なものでした。消費税は、社会保障のために導入されたものではなく、直間比率の見直しを貫くもので、消費税増税と法人税減税をセットで実行したものです。消費税の財源は法人税の減収の穴埋めになり、庶民増税を30年繰り返してきた日本は、GDPの発展しない国になり、国民の所得が下がり続ける国になって、地域が疲弊しました。国の事業や施策の本質を事実によって把握しないと、住民の暮らしは守れません。この点でも自治体としての自主的な判断が問われます。

地方税回収機構への事務移管は、実績からすると資産のない事案が多く、移管の在り方が問われるものでした。そもそも地方税回収機構は、時限的に設置されたもので各市町村に徴税のノウハウを培うところに一つの目的がありました。この点では、すでに目的は達成されています。前町長が行っていたように、地方税回収機構に事務移管せず、住民との関係性を深める中で税の徴収を引き上げる方針に立ち返ることを求めます。

もう1点、3月末には人事が行われました。年功序列をあらためたことは、見守りたいと思いますが、降格だと思われる人事も行われました。適材適所だとは言いますが、本当にこの人事が職員のもっている力を引き出すものなのかどうか。その全てに同意することはできません。

以上をもって、反対討論を終わります。


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Posted by 東芝 弘明