鈴木元さんへのインタビュー

雑感

文藝春秋6月号の鈴木元さんのインタビュー「志位和夫は習近平以下だ」を読みました。このインタビュー記事について書いておきます。

おかしいなと思うのは、どうして鈴木元さんの言い分を長々と載せているのかということです。そうするのであれば、鈴木さんから名前の出てきた日本共産党の幹部に対しても、「鈴木元さんはこういって言いますが、党本部はこれらの論点に対して、どういう見解をお持ちなのか」ということを取材して、編集者が真意を見極める必要があると思います。そういうことをしないで、鈴木さんの言い分をそのまま載せるのは一体どうなのかと思います。

この問題は、日本共産党に大きな影響を与えているだけに、またこういう記事を載せることによって、日本共産党への打撃になるのは目に見えているので、編集者は、丁寧に双方に取材して、自己判断する努力が必要だと思います。それが国政に議席をもつ政党に対する編集者としての責任ではないでしょうか。

鈴木さんの言説は、この人が書いた本と同じなので、本人のインタビューをそのまま載せるのではなく、取材前にそれが正しいかどうか、日本共産党に対する取材を行うことも可能です。編集者がどうしてそういうことをどうしてしないのか。不思議です。

日本共産党の役員選挙の仕組みは、党大会における代議員選挙です。これは、日本社会で広く一般的に行われている組織による選挙方法です。組合の選挙も同じやり方をとっているところは多いし、地域の自治会の組織運営も日本共産党の選挙と同じ方法をとっているところはたくさんあります。むしろ、代表者を自治体の首長と同じように、構成員の選挙によって直接選んでいる例の方が少ないと思います。

立憲民主党のように、党首選挙によって、従来の党の方針が大きく変わり、野党共闘をやめるような傾向が強まることの方が、党と国民にとっては不都合だと思います。

鈴木さんは、あたかも党の役員人事が非民主的であるかのように描いているだけです。日本共産党の幹部が実権を握り、自分たちの都合のいい政策や路線を採用しており、それが党の発展の阻害要因になっているかのように書き、その根拠として、党の役員選挙が独裁を生んでいるかのようにしたいようです。

鈴木さんには、この間の野党共闘の意味と綱領路線の位置付けに対する不理解があります。日本共産党は、野党共闘を進め、日米安保条約の是非を問わず、自衛隊の廃止も共通認識にならず、政治的な日程に上っていない段階で、統一戦線とそれに基づく政府をつくろうとしていたのです。当然、日本共産党の根本命題である日米安保と自衛隊論の問題をどうするのかといういことが、政権をつくる上で課題になりました。

志位さんは、この命題に対して、日米安保の廃棄や自衛隊の解消が共通の課題にならない段階について、政権についたときにどういう態度を取るのかという点を具体化したのであって、それは、理論的には、70年代や80年代、90年代であっても同じような具体化が求められる問題なのだと思います。

61年綱領でも、安保条約廃棄にに至らない段階での一致した統一戦線に基づく政府という問題は、理論的に明確に書かれていました。今と違うのは、そういうことが具体的な日程にのぼらなかっただけです。日米安保と自衛隊が存在したもとでの統一戦線の政府について、踏み込んで具体化したのは、それが政治的な日程にのぼったからです。

2000年に自衛隊の活用について党大会で明らかにしていたが、この政策は不評だったのでお蔵入りしていたと鈴木さんも松竹さんも書いていますが、あのときの決定が政治的な日程にのぼってこなかったから、光が当たっていなかっただけです。野党共闘で踏み込んで明らかにした見解は、統一戦線という路線をとる日本共産党の揺るがない方針だということです。
党の根本的な路線との間で矛盾があるのは、政権として一致できる要求に違いがあるからです。この食い違いと対応の違いは、党の綱領路線を理解すれば、自明の命題として明らかになる課題です。

日本共産党が推進した野党共闘は、全く立場の違う政党が、一致点で共闘する可能性を豊かに体現しました。その中から党がつかんだのは、政治的な立場の違いをお互いに尊重しつつ、一致点で協力するという新たらしい関係でした。この運動を通じて、相手をリスペクトすること、人間の尊厳を大切にすることが確認され、これがジェンダー平等や日本共産党の未来社会論にも変化を生み出しました。この運動による成果は大きかったと思います。日本共産党自身もこの運動を通じて、柔軟性が増したと思っています。

党の採用した路線への異議を、出版という形で持ち出したので、党の内部の問題を党外に持ち出すことになりました。しかも鈴木さんは、党幹部を名指しで攻撃し、それが選挙を含む役員による独裁によって路線の混乱が起こっているように書いたのは、まさに日本共産党と党幹部に対する攻撃でした。
日本社会の中には、日本共産党が政治的に躍進することを徹底的に嫌う傾向が強くあります。日本共産党は、この傾向は、階級と階級に分裂している階級社会の経済的な利害の対立に根源があると考えています。こういう状況下で、党の綱領路線と党幹部を名指しで批判すれば、日本共産党の躍進を阻みたい勢力に最大限、利用されるのは明らかです。実際、そうなっています。日本共産党を批判すれば収入が入るという共産党批判ビジネスが、存在しています。一地方の党幹部でない党員が、本を出したからと言って、大きく取り上げられ、拡声されていく事態がこれを体現しています。

なかなか、国民が必死で真実を訴えても、光が当たらないことは多々あります。入管法の問題でウィシュマさんの事件があったのに、国会ではウィシュマさんの死を冒涜するような議論が行われ、改悪になってしまう法案が通ろうとしている現実を見ると、メディアの問題の取り上げ方、拡声の仕方に疑問を感じます。

鈴木元さんという方が取っている態度には、悲しいものがあります。


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雑感

Posted by 東芝 弘明