日本経済、8つの悪循環

経済

big city life by Wolfgang Staudt

日本経済が、なぜ諸外国と比較しても落ち込んでいるのか。という問いに対して答えている論文を読んだ(工藤昌宏・東京工科大学教授「日本経済はなぜ停滞し続けているのか」ー雑誌経済2012年2月号)。
日本経済の停滞は、バブル経済の崩壊から始まっているという指摘だったので、20年間経済の低迷が続き、次第にGDPの低下傾向が露わになってきているということになる。

以下、ぼくなりにまとめてみよう。
悪循環が生まれている。悪循環のしくみについて、論文では次のように書かれている。

  1. バブル経済の崩壊による国内市場の縮小と国内企業の競争激化。経済停滞かでの競争が企業破たん及び人員削減、賃金切り下げなどの激しいリストラをもたらした。企業破たんとリストラは、大量の失業者と低賃金を生み出し、国内市場の縮小、さらなるリストラを加速させた。
  2. このような国内市場の停滞を背景に、企業は輸出に活路を求めた。競争に勝つためには価格面での競争力の強化が必要になり、リストラが進められた。リストラは、90年代半ば以降、成果主義の導入、非正規労働者への切り替えなどという形で進められた。
  3. このような悪循環を背景に、大企業は海外現地生産に舵を切るようになり、国内工場の統廃合、設備投資の抑制、雇用抑制という形でのリストラが加速され、内需もさらに停滞した。内需の停滞がさらなる海外での現地生産を促した。
  4. 海外見地生産は、地方の工場の統廃合を通じて地域経済を一気に衰退させ、日本経済の停滞を助長した。
  5. 以上のような悪循環が、税収の減少をもたらし、政府の巨額な無駄遣いとあいまって、深刻な財政危機をもたらした。財政危機は、地方への支出削減、国民負担の増大圧力を高めた。
  6. 以上のような日本経済の停滞過程で作り出された経済格差は、個人消費を停滞させるという作用をもった。経済格差を軸にした悪循環が形成された。
  7. このような悪循環によってつくりだされた日本経済の停滞は、日本経済を崩壊に導きかねない状況を生み出している。輸出が一時的に拡大しても、企業の設備投資はあまり行われず、雇用も消費も拡大しない、もしくは設備投資が行われても雇用に直結しないという状況が生まれている。生産、投資、雇用、消費の拡大的好循環の連鎖が希薄化し、日本経済はますます沈み込んでいる。
  8. 消費部門の停滞が、そこに生産手段を提供する生産財生産部門を停滞させ、それとともに両者の関係が希薄化する。消費部門も生産財生産部門も海外市場に活路を求めることによって両者の関係が希薄化する。

90年代から以上のような悪循環が歴史的に形成されつつ、さらに重なり合いながら深刻かつ脱出困難な停滞に陥っている。
工藤氏は、このように悪循環をまとめている。リストラと輸出重視、海外現地生産へと比重が移ることによって、日本の市場が縮小してきているということだろう。
2000年以降の小泉改革から始まった本格的な構造改革は、労働法を改悪して非正規雇用を拡大させるとともに、社会保障の分野と税における分野の負担増と制度の後退を行ってきた。その結果、格差と貧困が目に見えて拡大し、いまや非正規雇用は全労働者の40%近くになっている。
体をこわして働けなくなった人は、生活苦の中で医療費の負担に苦しめられている。精神的に不安定になっている人が多い。

日本経済が、なぜ深刻な悪循環に陥っているのかという問いについて、さらに深くとらえていきたいと思っている。日本資本主義が抱え込んでいる深刻な矛盾をとらえ直すことは、自民党や民主党が選択しようとしている消費税増税と大企業減税という政策への「理解」を深めることにつながると考えている。

なぜ、日本政府や自民党及びマスメディアは、経済がより一層破たんするしかない選択をしようとしているのか。───ぼくは、どうしても理解できないでいる。まずは、政権党などが消費税増税に突き進まねばならないと思っていることを肯定的に理解しつつ、批判的にとらえるという作業をおこないたいと考えている。そのために、まず日本経済が抱え込んでいる矛盾を深くとらえる努力をしたいと思っている。
この作業によって、そこから導き出される展望がより一層輪郭深く理解できるだろうという見通しをもっている。このような再構築を行うことによって、日本共産党が打ち出している改革の方向をより深く理解できると考えている。


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Posted by 東芝 弘明