グアム移転経費の日本負担に「密約」はない

政治

日曜日のドラマ「運命の人」を見ている。山崎豊子さんのドラマは面白い。
このドラマは、現実にあった「西山事件」を題材にしている。西山事件(←ここをクリック)については、ウキペディアに詳しい記述がある。
この事件は、「第3次佐藤内閣当時、米リチャード・ニクソン政権との沖縄返還協定に際し、公式発表では米国が支払うことになっていた地権者に対する土地原状回復費400万ドルを、実際には日本政府が肩代わりして米国に支払うという密約をしているとの情報をつかみ、毎日新聞社政治部の西山が社会党議員に漏洩した。」というものだった。

このドラマを見ながら感じたことがある。
米軍が日本の沖縄から撤退するときに、原状回復の費用を日本が肩代わりすることが、日米間の密約だった時代が1972年だった。
2011年の現在、アメリカは、沖縄の海兵隊の一部をグアムに移転しようとしている。日本は、アメリカが要求した海兵隊の移転経費を予算化している。ここに密約はなにも存在しない。

グアムへの移転経費を公然と出す日本は、おかしいと思うが、いかがだろうか。
なぜ、日本の国家予算からこういう経費を組むことができるのか。米軍がグアムに引っ越すときに、その移転経費を日本が肩代わりするというこの問題を漫才仕立てで書いてみよう。

「すみません、アパートをかわりたいので、引っ越しします」
「そうかい、残念だけど、しかたないね。で、なんで引っ越すの?」
「あっちの方が便利だからです」
「ああ、それじゃ、しかたないね」
「大家さん、今まで家賃をただにしてもらった上に、たくさんの生活費までいただいていたんですよね」
「あたりまえだよ。あんたは、鉄砲とか飛道具とかで、あっしたちを守ってくれていたんだからね」
「でも、どこに行って喧嘩してるかは話さなかったんだけど」
「そんなんは、いいよ。あんたを信頼してるから。お金がいるなら言ってよね。用意するから」
「なんか気前いいですね。そこが好きなんだなあ」
「いやいや、そんなこと言って。あっしは照れちゃうね」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますね」
「ええ、なんなりと」
「あのー、引っ越しの費用に600万円かかるんで半分出してもらえますかね」
「えっ、引っ越しの費用ですか?。いいですよ。でもね他の住人の手前があるんで、ちょっとまけてくれませんかね?」
「じゃあ、うちが310万円、大家さんが280万円でどう?」
「ええ、それで結構です。……あのー、たしても600万円にならないのはどういうことですかいな」
「うん、今後のこともあってね。追加の費用がいると思うんで、その時の分にとっておきたいと思って」
「なるほど。よく考えてますね。分かりました。ポンと出しますよ、ポンと」
「わっはっは」

グアム移転の経費負担は、こういう話だろう。これでは漫才にもならない。
関西なら、「お前はあほか」という話になって、大家が借家人の頭を張り倒すことになる。
現実の日米関係では、「ははあ、ぜひ、移転経費、出させていただきます」ということだろう。メディアが目くじらを立てないのは、「移転経費?、出すのは当然でしょう。新聞が紙面を割いて批判すべきことではありません」という感覚なのかも知れない。

税金の支出が出来ないはずなのに、70年代なら「密約」となるはずのこの問題が、予算に組まれアメリカに手渡されている。
対米従属関係が深まっているとしか思えないのと、メディアが完全にアメリカへの従属に麻痺しているとしか思えない。
このことを国会で批判しているのは、日本共産党だけだろう。

ネットを見ていると、核密約を暴露した不破さんに対し、何を今更核密約なのか、非核三原則自体がおかしいではないか、という観点からの批判があった。この批判は、「非核三原則はおかしい」という観点から核密約などと大騒ぎするのは時代錯誤だというものだ。
メディアは、核密約を不破さんが暴露したとき、ほとんどこの問題を扱わなかった。
昨日、メディア論を少し書いたが、日本の媒体(メディア)は、権力の側にはチャンネルを開いているが、反権力の側には、チャンネルを閉じているといえるだろう。

今日の記事の最後にグアムの移転経費について、赤旗に面白い記事があったので引用しておこう。

日本が支出の海兵隊グアム移転費  使われず利子3億円も 2012年1月24日(火)

在沖縄米海兵隊のグアム移転経費として日本政府が米国に支払っている資金のほとんどが使われず、約3億円の利子が発生していることが、防衛省が日本共産党の井上哲士参院議員に提出した米財務省の「勘定」(口座)から判明しました。

海兵隊移転を柱とするグアム増強計画が完全に行き詰まっていることが、会計面からも浮き彫りになりました。

2009年2月に合意されたグアム協定では、日本側は米側に「真水」(国の財政からの直接支出)分として28億ドルを支払い、米財務省はこれを受け取るための「小勘定」を日本の年度ごとに開設するとしています。

防衛省が提出した09年度、10年度分の「小勘定」記録によれば、09年度分の場合、日本側から3億3600万ドルが払い込まれ、このうち米側が使ったのは923万ドル。10年度にいたっては、支払金額4億9780万ドルが手つかずのままです。11年度分については計上しているものの、日本政府は現時点で米側に支払っていません。

一方、利子が09年度分で211万ドル、10年度分で170万ドル発生。合計利子381万ドルを現時点での為替レート(1ドル=77円)で計算すると約2億9340万円になります。このまま資金が使われなければ、利子はさらに増えます。

日米両政府は06年に、海兵隊員8000人と家族9000人を14年までにグアムに移転することで合意。しかし、米国は財政難のため、移転経費のうち米側負担分を11会計年度から大幅削減、12年度から全額削除しました。基地や部隊の配置をめぐって米軍内部での調整もついておらず、計画は凍結状態になっています。

グアム協定は、事業が終了した場合、提供した資金の残額と、発生した利子を日本側に返還することを定めています。計画の破たんが鮮明になっている以上、一刻も早くグアム移転経費の返還手続きを取るべきです。


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Posted by 東芝 弘明