官から民へ。この流れは本当にいいのだろうか。

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今日から6月議会が始まった。
初日は、提案説明。
かつらぎ町は、非常にていねいに議案の提案説明をおこなう。
しかし、本日は、議案が少なかったので3時30分には終了した。
今回の一般質問は、学校給食と民間委託、広域のごみ処理施設の民間委託という2つのテーマで質問をおこなうことにした。
自治体の民間委託は、自治体の民営化というような様相を呈してきている。
保育所、幼稚園、学校給食、ごみ処理施設、公民館、文化会館、図書館、病院などなど、こういう部門を民間に委託したり、民営化したり独立行政法人化したりして20年、30年が経過すると自治体は、住民の意識動向や住民の生活実態をリアルに把握することが、かなり困難になる。
介護保険が導入されたときも、自治体による福祉行政から、民間による介護保険サービスに移行することによって、圧倒的多数の自治体では、自治体自身によるサービスの提供がなくなった。
住民のさまざまな生活実態を把握できなくなってもいい。地方自治体は、コーディネートの役割を担えばいい。これが民営化とセットで打ち出されている考え方だが、具体的なノウハウを失った地方自治体は、住民に奉仕する機関ではなくなり、皮膚感覚を失った官僚的な機関になるだろう。人間にたとえるのなら、民営化は、手も足も自治体から手放してしまうようなもの。指先の住民に直接サービスを提供している機関を失うと、脳になかなか指令が届かなくなるということではないだろうか。
住民が納めた税金で、経済効率最優先ではない住民サービスを提供する。こういうシステムをもっているからこそ、1人の住民に対し、ケースによっては、その人の権利を擁護するために全力を尽くすということができるようになる。
先週、生活相談として、生活保護の申請をしたがっている方の相談に2時間以上時間を割いていただいた。
弁護士やお医者さんによる診察は、まさにTime is Money。接見してもらうのにクライアントは料金を支払う。営利を目的としていない病院であっても、診察には、サービスについてのコストがかかる。
地方自治体の存在というのは、もともと経済効率最優先で動いている機関ではない。公務員は全体の奉仕者という憲法に規定されている原則に基づいて運営されている、基本的には住民に奉仕する機関だ。さまざまなゆがみや遅れが地方自治体の中にはあるが、地方自治体のサービスは、いかにして住民の奉仕する機関として発展していくのかというところに努力の方向がある。
でも、小泉さん以降、この地方自治体に対して、官から民へという考え方が激しく流れ込み、非効率を排除し、高コスト体質を是正するという住民受けしそうな論理で、攻撃がしかけられている。
官から民へという流れは、民間に市場をつくって新たなもうけ口を用意するというものでしかない。民間にとって、官から民へというのは、新たなビジネスチャンスをつくるということだ。
福祉法人や医療法人、自治体のような法人は、営利を追求する機関ではない。民間であっても福祉法人や医療法人は、儲けを再投資しなければならない。
これに対し株式会社は、営利を追求する組織だ。株式会社で営利を追求しないのは、会社としてはゆがんでいると思う。営利を追求する機関として株式というシステムは、発展してきた。儲けをあげることは、企業にとっては至上命題になる。これ自身はまったく悪いことではない。
しかし、社会には、営利を追求していい部門と営利を追求するとゆがんでしまう部門がある。新自由主義は、今まで営利を追求しなかった組織まで、営利追求を求めるような改革を求めている。市場原理こそが、すべての組織を最適化するというような論理だ。
でも、この論理は、大切なものを失ってしまう。たとえば、大阪府の改革は、営利を追求してはならない自治体のサービスの分野(たとえば教育)にまで、効率主義をもちこみ、コスト削減を最優先している。私立高校への私学助成を削減したのはこの最たるものだった。
高校生は、私学に通っている学生も公立に通っている学生も、できるだけ機会の平等を保障する方向に発展させる必要がある。私学助成を削減することは、この方向への努力を断ち切ってしまう。
保育所の民営化、直接入所も同じような問題を将来抱えてしまう。民間委託や民営化は、自治体の経費削減だけにはとどまらない。このような改革は、国の経費削減と連動しているので、国の補助金の縮小と直接入所がセットで実行されていくのは目に見えている。
「カレーライスを食べるのであれば、500円払って下さい。貧乏人も金持ちも同じカレーには同じ料金を」
国の補助金縮小と直接入所は、保育料値上げという形で、機会の平等を打ち壊していく。これが受益を受ける人の負担(受益者負担)の正体だろう。
官から民へは、自治体の財政難を引き金に強まっている。国が予算を削るから自治体も民間委託や民営化を推進しなければならない。地方自治体は、こんな方向に向かっているが、この方向の徹底は、住民のサービスと命を削る悪魔のサイクルを実現してしまう。
ぼくたちの子どもに、安心できる公的なサービスを。官から民への動きに敏感になることが大事だと思う。自治体のあり方を考えることは、住民の未来の生活を考えることに少なからず絡まっている。


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Posted by 東芝 弘明