月下美人の咲く夜に

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月下美人は、月の明るい夜にたった一晩だけ咲く花。
中佐野に住んでいた頃、母と同い年の女の人が住んでいた家の前の大きな鉢に月下美人があり、2度その花が咲いたのを見たことがある。
「東芝さん。この花知ってる?。これが月下美人やで」
月の明るい夜だった。
「一晩だけ咲く花。この花が咲いているのを見れるのはめずらしいから、今日はいい日やったんと違うかな」
やさしく語る人だった。
亡くなったY先生の同級生のお母さんだった人だ。
男気のある面白いY先生は、同級生の家によく遊びに行っていたようで、
「若いときはホントに別嬪さんやった」と真顔で語ったことがある。
京都生まれで京都育ちの女の人は、50年以上かつらぎ町に住んでも、京都弁で話していた。
戦争の時に発行禁止の本を隠して持っていたと語ったこともある。
京都は山本宣治さんを生み出した地であり、古い街なのに日本共産党の歴史と伝統のある地域だった。
発行禁止の本は、当時国禁の書と呼ばれていたもので、持っていること自体が許されない本だった。
月下美人の花のように真っ直ぐに立ち、着物姿がよく似合った人だった。
いま、家人のいなくなったその家は、ひっそりと建っている。
家の前をとおるたびに、月下美人のことが思い出される。
「月下美人の咲く夜に ぼくら友達になれたんだね」
イルカの声も聞こえてくる。


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Posted by 東芝 弘明