道場破りと焼きめし

出来事

議員団会議のあと、議員仲間と食事に行く。たわいもない話が出ることもあれば、議会の話になることも、家族の話になることもある。
「どこに行く?」
「ラーメンが食べたい。今日は火曜日だから笑福亭」
毎回、同じことを話す少し体格のいい議員が発言する。
いつもは、この「ラーメンが食べたい」という意見をスルーし、彼だけ残して違うお店に行くのだけれど、灰色の曇り空と肌寒さもあってか、「よしラーメンにしよう」ということになった。
笑福亭は結構混んでいた。
ドアを開けて店の右手にある赤い丸テーブルに座ることにした。女性議員とぼくとラーメン通の男性議員の3人は、焼きめしとラーメンセットを注文した。
「ぼくは、いつも道場破りのように焼きめしを食べるんです。でもここの焼きめしが美味しいです」
かつらぎ町に来たら「ラーメン」としか言わない議員が、笑福亭の焼きめしを絶賛した。
彼にとっては、知らない店に入って焼きめしを食べるのは「道場破り」に匹敵するらしい。
彼の中華料理に対するこだわりは、趣味であるカメラに対するこだわりと共通している。カメラのことを語り始めると、光の具合の話などになり、熱がこもってくる。ラーメンとカメラがどこで結びついてるのかはよく分からないが、彼の頭の中では麺からむようにうまくつながっている。

議員の仕事は、複雑な社会制度という入り組んだ大きな山に、奇声を発して馬一頭にまたがって、剣をふりかざして立ち向かっていくドン・キホーテに似ている(ドン・キホーテが立ち向かったのは風車だった)。複雑な社会制度の入り組んだ大きな山に分け入って行く勇気を持たないと、小さな議員の剣などは、カイーンという音とともに弾かれてしまう。楽をして、理解しないまま立ち向かうと複雑な山は、登ることさえ許さない。
でもねえ、入り組んだ社会制度に分け入って、問題を紐解いていく自由が議員にはある。複雑に見えても、努力する議員には、広く門戸が開かれている。問題を紐解くことに喜びを見いだしたら、どんどん山を登る道が見えてくる。知的好奇心を武器に山に登ることができる議員は幸せ者だと言える。

「焼きめし」に挑戦するように、地方自治体という複雑な大山にも「道場破り」をしよう、そんなことを思いながらラーメンと焼きめしを食べた。笑福亭の焼きめしには、炊き込まれいい味の付いたサイコロ型の小さいタケノコが入っている。これが美味しい。「道場破り」が負けるはずの味が付いている。

笑福亭はもうすぐオープンする京奈和のかつらぎ西インターの下りパーキングエリアにお店を出すことになっている。
「かつらぎ町に来たら帰りに寄ることができますよね」
「道場破り」の議員は、目を細めてそう言った。彼のまわりには白い天使がいっぱい飛び跳ねていた。


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出来事

Posted by 東芝 弘明