「余命」を読み始めた

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谷村志穂さんの「余命」を読み始めた。しっとりとしているのにさわやかさが溢れてくる文章だ。こういう小説に出会うといつまでも胸にしまっておきたい思いに駆られる。
今年の5月頃だったろうか。「しんぶん赤旗」の文化欄で「余命」について作者本人にインタビューがおこなわれていた。このインタビューを読んで、買ってみたいと思ったのが、この本と出会うきっかけになった。
この本を購入しようと思って、「インターネットの本屋さん」で注文したときは、在庫切れでうまくいかなかった。自分の町議会議員選挙が終わってから、もう一度注文すると、今度は数日後に手元に届いた。この本は、静かに売れているのかも知れない。
「本屋さん」で注文したときには、イメージが表示されなかったので、この本に対しては、なんだか灰色の印象があった。「イメージなし」というときに現れる画面が、ぼくにこういう印象を残したようだ。しかし、手元に届いた本は、少し柔らかそうなピンク色をしていた。表紙に描かれている滴(水滴)は、小説の主人公、滴を表しているのかも知れない。
本を読み始めると表紙のカバーの色が本の中の文章に溶けていくようなさわやかさがあった。
本の書き出しは、島の診療所での診察の場面から始まっている。
映像が浮かんでくるような文章が、ぼくを惹きつけていく。
日本語は、ときに美しい情景を鮮やかに浮かび上がらせる。作者の語り口が、情景描写に統一した感じを与えて、イメージをふくらませてくれる。
こういう文章に出会うと、小説形式の文章の中に浸っていたい思いがふくらんでくる。
ハードカバーの本を開き、読んだ途中に紐を挟んでおこうと思い、紐がしまわれている場所を探し当てようとした。しかし、紐がしまわれている場所がなかなか見あたらない。本を立てて上から見ると真ん中に紐があるのが分かる。だが、ねらいを定めて開いてもそれを探し当てることができなかった。何度か開いたり閉じたりして、ようやく紐のある部分を開き、読んだところまでもってくることができた。
こういうまどろっこしいことをしている間も何となく楽しかった。
この本は、読み進めるにしたがって、終わってほしくないという思いに駆られるかも知れない。

余命 余命
谷村 志穂 (2006/05/30)
新潮社
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Posted by 東芝 弘明