今日は暖かかったですね
今日は暖かかったですね。
秋晴れのいい天気。こういう日は気分がいい。
事務所の前に植えてある木もすっかり紅葉し、落ち葉が散り始めてる。
娘は、水曜日と振り替えで学校がお昼までだった。
昼ご飯を食べて、ボイラーに灯油を入れていると、裏の勝手口が開いて娘が出てきた。
娘の視線が、不燃物のコンテナに落ちた。
「えー、なんでコップが捨てられてんの?」
ト音記号が書かれた大きなマグカップの取っ手が折れて、コンテナの中に転がっている。
「ピアノの先生にもらった物なんやで、これ」
娘は、半分泣きながら大きな声を出した。
「なんで、壊れてんの」
この声につられておばあちゃんが顔を出した。
「私が手滑らせて落としたんよ。ごめんよ」
娘が手に持ったマグカップは、取っ手がきれいに折れていた。
「おんなじもんがほしい」
「また買ったらいいやん」
娘の機嫌は、なかなか直りそうにない。
おばあちゃんが終いに怒り出してしまった。
「そんなこと言うんやったら、おばあちゃんもう何にもしたらへん」
娘にはかなりきついひと言だ。
「同じのんがほしい」
何度もこの言葉を繰り返す。
「そんなに大切なんやったら、2階の自分の部屋に持って行っときや。そやないと捨てられてしまうで」
娘は半べそをかきながら2階に上っていった。
ぼくも、灯油をいれてから2階に行った。
「おばあちゃん、悪気があって壊したん違うんやから、謝り」
娘の耳にささやくと、少し口をとんがらせた。
1階の台所で、後片付けをしていたおばあちゃんの背中に娘はひと言、「ごめんなさい」と言った。
「ごめんな」
おばあちゃんも娘に言葉を返した。
家を出ようとすると、
「友だちのとこまで送って」
と言って、娘が玄関先に飛び出してきた。
さっきまで半べそをかいていたのに、機嫌がすっかり直っていた。
秋の日差しは、柔らかく暖かかった。








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